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Posted by ブクログ 2022年11月21日
1.著者;野坂氏(2015年没)は、作家・作詞家・歌手・政治家。実母の死別後に養子に出され、2人の妹も養子となる。野坂氏は神戸で罹災し、養父母を失い、浮浪児生活を送った。上の妹を病気で、下の妹を栄養失調で亡くす。「エロ事師たち」で作家デビュー。「火垂るの墓」等で直木賞、「同心円」で吉川英治文学賞など...続きを読むを受賞。他に「おもちゃのチャチャチャ」で日本レコード大賞、参議院議員に当選する等、マルチ人間。
2.本書;浮浪児兄妹の餓死までを描いた短編小説。「主人公の清太(14歳)は、病弱な母の死後、妹(節子)と遠縁の未亡人宅に引取られます。実子との食事差別。清太はそれが嫌で、二人は川辺の防空壕で生活。満足な食事が出来ず、妹が栄養失調で死に、清太も同様に死ぬ」という、野坂氏の原体験小説。著者は「妹への贖罪のつもりで書いた」と言います。「(妹)が泣けば、深夜におぶって表を歩き、あせもとシラミで妹の肌はまだらに色取られ、海で水浴させた。(妹)の無残な骨と皮の死様を悔む気持ちが強い」と回想。本書は他に5編収録。「戦争がなければ」と、涙せずには読めない力作。
3.個別感想(印象に残った記述を3点に絞り込み、感想を付記);
(1)『火垂るの墓』より、「死んだ清太が持っていたドロップ缶の蓋がとれ、白い粉がこぼれ、小さい骨の欠片が三つ転げ、草に宿っていた蛍が驚いて二、三十慌しく点滅しながら飛び交い、やがて静まる。白い骨は清太の妹、節子、・・防空壕の中で死に、死病は急性腸炎とされたが、実は四歳にして足腰立たぬまま、眠るように身罷ったので、兄と同じ栄養失調症による衰弱死」
●感想⇒本書を再読し、度々涙します。その訳は私事にあります。物心つかない幼少の頃、疫痢(伝染病)にかかりました。医師から余命一週間と宣と言われていたのに、姉は隙を見て入室し、高熱で苦しむ私の顔を冷たいタオルで拭いたそうです。姉に病気が転移し、その後亡くなり、私は元気になったそうです。成人した頃に、祖母がその事を話してくれ「お前は姉の分まで健康に生きなければいけないよ」と言われました。幼少だったので、姉の顔を思い出せません。悲しい気持ちが込みあげます。「火垂るの墓」を読むと、戦争がもたらした悲劇とは言え、他人事とは思えない感動に包まれ、人間愛の貴さを再認識します。
(2)『火垂るの墓』より、「“せめてあんた(清太)、(節子)を泣かせんようにしたらどないやの、うるそうて寝られへん”ピシャリと襖を閉め、その権幕に益々泣きじゃくる節子を連れ、夜道に出ると、相変わらずの蛍で、いっそ節子さえおらなんだら、一瞬考えるが、すぐ背中で寝付くその姿、気のせいか目方もグンと軽くなり、額や腕、蚊に食われ放題、ひっかけば必ず膿む」
●感想⇒友人に苦労人がいます。彼は夜間高校から大学に進み、弁護士になりました。聞けば、高校時代は弁護士事務所で書生として働き、住み込み生活を送ったそうです。「食事をするにも、トイレに行くにも、遠慮の連続で、身が細る苦労だった」と述懐していました。その体験から、今では弱者に寄添う弁護を軸とした活動をしています。某大学での講義や、本を出版したりの活躍です。若き日の厳しい体験があったからこそ、世間の片隅に追いやられがちな人々の弁護に精を出しているようです。頭が下がります。これからも社会的弱者の後ろ盾として、行動してほしいと願います。
(3)『ラ・クンパルシータ(タンゴの名曲)』より、「百姓の子弟の多い同級生は、卵焼きタラコ塩昆布梅干し、懐かしい昼弁当を当り前のようにひろげ、高志のみは無くて、学校の購買部で売る一皿十円の芋パンを買うそぶり、だがその金もなく、ひたすらにじみ上がる唾を飲み込み」
●感想⇒「ラ・クンパルシータ」は少年院に収容された戦争孤児の話。戦争で家族や家を失い、生きる為に盗みを働き、犯罪者になる者が多かったようです。私事です。私の家は裕福とは言えず、よく麦飯を食べました(麦は今こそ健康食ですが、当時は貧乏人の代名詞)。小学生の頃、弁当に麦飯を持っていくと、同級生によくからかわれました。「お前んちの飯は色付きだなあ、白米は無いのか」と。「いつか見ていろ」との思いでした。一方で、貧しくとも祖母から数々の人生訓を学びました。「三度のご飯を頂ける事に感謝しなさい」「恩を忘れたら、犬畜生にも劣る」「三つ子の魂百まで」・・・、私の行動指針です。人間は、辛い事を経験し、克服する毎に成長出来ると信じています。
4.まとめ;本書は6つの短編構成。「火垂るの墓」は勿論、「焼土層(生活保護をうけず、少額の仕送りで生活し、プライドを守る義母)」にも心を動かされました。「野坂氏は、既成の権威や秩序が音をたてて崩れ落ちるのを、その目で見、その肌で感じた世代」と解説にあります。想像を絶する日々を生き抜いたのでしょう。戦争は人々に大きなダメージを与えるだけです。アインシュタインが戦争の起因について語っています。「知識人こそ、大衆操作による暗示にかかり、致命的な行動に走り易い」と。保身の為に、自身の哲学無き政治リーダーには閉口です。戦争回避の為に、庶民感覚でバランスの取れた世界観を持つ指導者を選択したいものです。所で、私は、多彩な顔を持った野坂氏が「火垂るの墓」書いたと思えませんでした。本書は氏の体験が滲み出おり、他人には書けない作品です。戦争がもたらす悲劇に心が痛みます。レビューに個人的な事を書き過ぎました。ご容赦を。(以上)
Posted by ブクログ 2021年11月22日
どれも、悲しかったり、怖かったりするのに、閃光が残るような、話でした。おもろいのに、強いこころが在るなど、なんだか一生忘れないような タマシイですかね。妙に現実的に、残りますね。特に、アメリカひじき が妙に好き。
Posted by ブクログ 2018年07月24日
たぶん誰もが知っている「火垂るの墓」が掲載されている
野坂昭如の書いた短編集がギュッと凝縮された本。
最初は改行とか句読点がすごく読み辛くて、これ全部読み切れるかな…と思ってたけど
なんだかんだで読めた、というより気付いたら慣れてた。
火垂るの墓も然ることながら「アメリカひじき」はコミカルかと思いき...続きを読むや
いや、まじで笑えんよ…って。
紅茶をひじきだと思ってってたという話。
あと「死児を育てる」が一番まーじで強烈過ぎるほどに強烈!!
餓えって本当に(餓えもそうだけど衣食住の全てが整ってないと)
正常じゃないというか、ここまでなるかって思うくらい
狂う感じがまじで恐ろしい。
興味本位で読んでみたけど、これは読んでよかった本
Posted by ブクログ 2017年08月14日
戦争の生々しさが濃い作品です。
火垂るの墓は著者の自伝らしく、守れなかった妹へのレクイエムだそうです。
何度もアニメで観ましたが、この本は壮絶な戦争体験記の恐らくそんな内容です。
蛆虫すら惜しいとか、盗みかっぱらいが蔓延し、当時の少年院の様子といい汚いだの何だの言う余裕がなくとにかく凄絶。
「ぜいた...続きを読むくは敵」「欲しがりません勝つまでは」を砂糖に置き換えてあったり、普段私達が聞いたり、テレビで観るよりも、この本を読んだほうが「語り継がれる」の意味が本物のような気がします。
Posted by ブクログ 2016年02月15日
第58回(昭和42年)直木賞受賞作。
有名な火垂るの墓を含む短編集。
独特の言い回しに直木賞というより、より純文学的な芥川賞に近しい気すらしてくる。
火垂るの墓はアニメで有名だが、それを見たことが無い自分はその先入観がなく、野坂昭如の実体験に基づくその思いを十二分に感じられたと思う。
誤解を恐...続きを読むれずに言えば、文章を読む限り、アニメ(文庫本の表紙がアニメの火垂るの墓)のようなエンタメにはなりえない。そもそもアニメみたいなふくよかな肉付きの良い絵になるわけがない。
著者の実体験に基づいているので、兎に角ディテールが圧倒的に凄いし、それが、根底にあるので、ひとつひとつの出来事に対する価値観として「何故それが正しいと言えるのか」という問いに対し、自信を持った回答ができない。
戦時中とはそういうことなのかもしれない。
死であり生であることなのかもしれない。
アニメでなく原作を読む事を勧めたい。
きっと心の深いところをぎゅっと掴まれた感じになると思う。
Posted by ブクログ 2015年09月06日
本書の表紙。「火垂るの墓」を読み終えて見返すと、どうしても感じ入ってしまいます。
しかし「感動」「感激」「感涙」などの推薦文句が苦手なひとには、ぜひ「火垂るの墓」以外の全編を読んでほしいです。作者の独特な筆致と感性には感じ入るかもしれません。
Posted by ブクログ 2012年03月08日
野坂昭如の代表作でもある「火垂るの墓」「アメリカひじき」
「火垂るの墓」はもはや宮崎駿の映画の方が親しまれていると思うけども、映画とはこと向きの異なった話となっている。映画「火垂るの墓」はあくまでも映画の「火垂るの墓」としてみた方がよいだろうと思う。
「火垂るの墓」は戦争や社会に対する反省や悔恨...続きを読むではなく、野坂昭如の自分自身の不甲斐なさに対するものなのだと言えると思う。そこが、映画と原作の大きく違うところだろう。(なので、いま発売されている文庫本のカバーイラストがアニメの一コマであることには少し違和感を感じてしまう)
「アメリカひじき」は、日本人の白人に対する媚び諂いの精神、どうしても抜出ることのできない精神的な鎖。それは過去の敗戦の記憶からの呪縛だろうか、劣等感のリアリティが日本人や社会としてではなく、敗戦後を生き抜いた一人の男を通して表現されている。
2作とも、文章は冗長のようで実は無駄のない独特の流れの中でストーリィが編まれている。
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【目次】
1.火垂るの墓
2.アメリカひじき
3.焼土層
4.死児を育てる
5.ラ・クンパルシータ
6.プアボーイ
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Posted by ブクログ 2011年12月27日
NHK TV Jブンガクの2009年6月に紹介がありました。
火垂るの墓ではなく、アメリカひじきの紹介でした。
「一時しのぎ」
は、
Anything is better than nothing.
とのこと。
ちなみに、「アメリカひじき」とは、アメリカの紅茶とのこと。
Posted by ブクログ 2013年02月27日
私は6つの短編集のうち、火垂るの墓、アメリカひじき、死児を育てるの3つを読んだ。
まず、火垂るの墓では、清太が死んでいく場面から始まり、戦時中への回想となるが、ひとりで最後は力もつき果てて死んでいく様子が本当に切ない…戦時中で、居候の2人にまで手が回らないのも分かるが、叔母さんの仕打ちもひどいし、ど...続きを読むうしようもなかったとはいえ、どうにか2人が家に留まっていれば生き延びられたのではないかと思う。
Posted by ブクログ 2023年12月09日
今まで、ジブリ版の絵本等で読んだりはしていたけれど、野坂昭如さんの小説で読むには初です。
「火垂るの墓」
昭和22年敗戦後、混乱の中。駅構内のトイレの近く、戦争孤児となり、浮浪児となってしまった少年が、亡くなる。
戦争で、家を親を失い、最後に親身に世話をしていた妹を亡くす。彼も駅構内で力尽きる。
...続きを読む駅員が、投げたドロップ缶から転げ落ちる妹の骨。
野坂さんの饒舌体と言われるらしい、言葉が次々とたたみかけてくるような文章が、映像とは又違った、苦しみと悲しみの連続に圧倒されました。
「アメリカひじき」
敗戦時、少年であった男が、22年後、日本観光に来るハワイのアメリカ人夫婦を自宅で接待する。
敗戦時と現在が交互に語られ、アメリカという大国に、国だけでなく人種としても劣っていたというコンプレックスから、逃げられない。
が、精一杯もてなそうと頑張るが、どうもアメリカ人の行動に同調しきれない。
「焼工層」
敗戦直後、貧困から養母の元を離れて実父の元に戻った少年。養母は、少年の未来と幸せを願うことが、人生の糧であった。
社会人として成長した少年は、養母の死の知らせを受け、彼女の最期の場所を訪れる。
そこは、貧しい間借り部屋のような一室。戦争で焼かれた家と夫が眠る側。
「死児を育てる」
自分の娘を殺してしまった女性。
彼女は、戦中、貧しさとひもじさに 抱えて面倒をみていた妹に手をあげていた。妹は、彼女が留守をしている間に亡くなる。その死は、彼女の故意であったのか。その深い傷は、娘が妹の死んだ歳になった時、再び罪を犯す。
戦争により、家、親、食、全て失った、少年少女達の絶望感に苦しくなります。
Posted by ブクログ 2021年12月29日
火垂るの墓はもちろん、最後の関連した二つの感化院の少年の話も面白かった。野坂さんは戦争の悲劇の真摯な語り手であり、同時にエログロの狂気の提供者でもある。
Posted by ブクログ 2021年01月30日
1968年出版,第58回直木賞受賞作。「焼け跡闇市派」の金字塔ともいえる作品である。
「火垂るの墓」:戦時を駆け抜けた者による,その過程で犠牲になった者たちへの鎮魂歌。作者の自伝要素もあるそうだ。曳光弾はほんのわずか向こう側でありながらも,生命の切迫すら感じされる文章。蛍は確かに印象的だ。削られた...続きを読む社会について一切の妥協なしに書いたもので,単なる反戦のプロパガンダではない。
「アメリカひじき」:戦後のアメリカ兵がうろつく街とそこで生きる人々をシニカルに書く。アメリカひじきとはブラックテー(紅茶)のこと,それに対する感覚はまさに戦後を象徴するものだろう。大阪弁に加えカタカナの英語を混ぜることで,更に文体が濁る。
その他短編「焼土層」「死児を育てる」「ラ・クンパルシータ」「プアボーイ」を収録。
Posted by ブクログ 2020年05月28日
「火垂るの墓」は、言わずと知れた戦争文学の傑作。
アニメにもなっているので、ご覧になった方も多いのではないでしょうか。
私も子供時分に、たしか学校の視聴覚室で視聴した記憶があります。
節子がドロップではなく、おはじきを舐めている場面を見ると、恐らく今でも人目をはばからずに泣くと思います。
ただ、原作...続きを読むには、おはじきを舐める場面は出てきません。
それよりも勝手に原作は長編と決めつけていましたが、短編なのですね。
それ以前に、なぜ、今、火垂るの墓? ですね。
実は、割と読書家である自分は長年、野坂昭如をスルーしていました。
40代のぼくには「悪目立ちするタレント」というイメージが強くて、敬遠していたのですね。
それがひょんなきっかけで、野坂の代表作の1つである「エロ事師たち」を昨年初めて読み、野坂の世界観にすっかり魅了されてしまったのです。
それで、野坂を世に送り出した「火垂るの墓」を読んでみようと手に取った次第。
本作は、文庫でわずか35ページの短編。
それでも重厚な戦争文学になっているのですから、野坂恐るべしです。
併録されている「アメリカひじき」もおもしろく読みました。
こちらも戦争文学の範疇に入るでしょう。
敗戦国の日本国民のアメリカ人に対する屈折した心情が、実によく描かれています。
小島信夫「アメリカン・スクール」も同じテーマを扱っており、私も好きな作品。
エンタメなら「アメリカひじき」、純文学なら「アメリカン・スクール」と、文学を志す人には両作は良いテキストになるのではないでしょうか。
Posted by ブクログ 2018年09月16日
悲しいお話です。とても有名なのでそれ以上語る気もしない感じが現状です。原作は短編です。故海音寺潮五郎氏は「結末の明治調の展開にはやや辟易」と言っていたようですが…。彼自身苛烈な戦争を体験したのに戦後や早落ち着いてくるとこんなものなのでしょうか。確かにこの物語の主人公のような悲惨な最後を遂げた子供はい...続きを読むたでしょうに…
Posted by ブクログ 2017年11月05日
この2編以外にもいくつか話が入っていたのだが、この2つに関して言うと、どちらも話の途中で「回想シーン」のようなものが入り、分かりづらかったのだがドラマチックになっていた。「ほたるの墓」は、映画そのままだった。「アメリカひじき」は・・・戦争を知る人たちは、今の日本をどう思っているんだろう、と思った。
Posted by ブクログ 2017年09月04日
6つの短編集。ただただ飢えと暮らしの惨めさがリアルで、読んで暗い気分になります。多分これは誇張ではなく、現実に戦後の日本の至るところで起きていたはずなのだ。それからもう?まだ?72年。
読点が少なく畳み掛けられるような文体が、あっという間の転落、流れるような時と行動の移り変わりに読者を連れていきます...続きを読む。
ほたるの墓はアニメで観てトラウマだったけど、それでもこの本の他の短編と比べて、空襲、戦後の食糧難、必死に生きる人々を兄弟愛で「綺麗に」書いていたと知った。
死児を育てる、ラ・クンパルシータの、家族の食べ物を盗み他人を蹴落としてもとにかく食べ物を口にしなければならない、口に入れたいと願ってしまう残酷さ。アメリカひじきの、戦後の日本の、卑屈さ惨めさ。
飢えというのは道徳を超えた、非道いものだという印象しか受けない。糠団子、黒くドロドロした雑炊なんて食べたことないけれども。
Posted by ブクログ 2018年01月20日
何かの本で、花村萬月が「どんな小説を読んでも泣くことはなかったが、これだけは泣きそうになった。いや、泣いてしまった」と書かれていた。私もこの作品は知っていた。アニメにもなっているのも知っていた。活字としてこの小説を実際に読んでみると読点(、)がほとんどなく、次々と言葉が数珠のように連なっていて、1文...続きを読むの長さも非常に長い。しかし、それが全く苦にならず、作品の世界が現在の自分の目の前に鮮明に広がって、作品の中の人物が生きて私に戦争の悲惨さを教えてくれた。
Posted by ブクログ 2016年01月25日
たたみかけるように言葉を並べて、しかもその情景がありありと目の前に浮かんでくる。独特の文体だ。
まあもちろん、戦争文学なんだから、これっぽっちも楽しくはないのだけど。
野坂昭如さんは、先日亡くなったそうだ。
父の母親や祖父が、「アメリカひじき」は正に戦後の日本の風景だったと話していたらしい。だから...続きを読む読んでみた。
生きるって、きれい事では片が付かない、グロテスクな行為だ。人権のじの字も無かった時代の話だ。今でも、人権は全ての人のものではない。
目次
火垂るの墓
アメリカひじき
焼土層
死児を育てる
ラ・クンパルシータ
プアボーイ
火垂るの墓で美化させすぎたから、清太を飢え死にさせて、「死児を育てる」を書いたんだろうな。
Posted by ブクログ 2015年12月30日
故人となったので読みました
火垂るの墓は映画にて初めて知ったのと号泣した思い出
まさかの短編で映画のように泣けなかった
死児を育てる、ラクンパルシータ、プアボーイの話しが良かった
Posted by ブクログ 2015年07月20日
ずっと前からこんな書き方なんすね、ということで展開詰め通しな一文ではありますがその情景目に浮かぶほど適切&リズミカルでして、それは本作のほとんどが第二次大戦後期を描写しており想像しやすいためかもしれませんが、火垂るの墓が体験に基づく作品でもあるということで視界に現れる実情と心情の結合にわずかのズレも...続きを読むないですね。「アメリカひじき」以降は戦後のトラウマがモチーフとなってまして、一部作り過ぎな感はりますが「死児を育てる」は伊藤潤二のホラーにありそうな物語。
Posted by ブクログ 2014年09月23日
この本は戦争を直接的には扱っていないものの、戦争小説と呼んで差支えない気がする。
幼児、児童、青少年が戦争によって翻弄され、傷つき、けなげに、したたかに生きていくさまが、不思議な筆致で描かれる。
Posted by ブクログ 2014年05月31日
日本の敗戦を感じる 火垂るの墓
黒い福音(ドラマ見た方も楽しめる 黒い福音)に続き、
日本は敗戦国なのだ、と感じさせる一冊。
黒い福音よりもはるかに、戦争色が強い作品集でした。
火垂るの墓は映画版を何度も見ていますが、まさにこの文章を
そのままアニメーションにしたものだ、と冒頭びっくりしました。
...続きを読む原作の野坂さんが試写を見て号泣されたというのがわかります。
短い短編ではありますが、映像化するには、これくらいの短さで
十分なんだな、と感じます。
藪の中だったり、萩尾望都さんの作品とかも、ごく短い短編で
深い物語が紡がれていますから。
そして、野坂さんの作品を読むのが初めてなのですが、句点が
極端に少ない、読点「、」でたたみかけるような文章。
どうしても語りたい、語らないといけないという強い意思を
感じるような文章です。
最初はうわっと思ったのですが、読み進めているうちにこの文章の
リズムに引き込まれている自分に気づきました。
実際の体験を元に、パラレルストーリーがいくつも分岐して、
様々な小説世界が作られている一冊です。
薄いけど、読みごたえは十分でありました。
Posted by ブクログ 2014年02月01日
火垂るの墓は「反戦文学」のような紹介をたまに見るが、結果としてはそうであっても、むしろ描かれているのは大人たちの身勝手さと無力感ではないだろうか。大人たちが、アメリカさんが来るのに(こんなところに浮浪児が寝転がっているのは)恥ずかしい、という場面なんかは象徴的である。大多数の大人にとって、戦争は自分...続きを読むたちも加担した人災ではなく、天災だった。
Posted by ブクログ 2013年12月26日
六篇の短編から印象強いものだけ感想に……
「火垂るの墓」
言わずもがな、な超有名映画の原作。
凝縮された内容ながら、中身はわずか30枚程度の短編。
独自の句読点の多い文章は慣れるまで少々読みにくいですが、
変わらず感涙する想いが詰めこまれています。
「焼土層」
この作品が一番素晴らしいと思いまし...続きを読むた。
養母との別れを寂寥込めて描かれていて、
焼土層というタイトルもやや唐突な印象を受けますが
同時に深い意味も感じられます。
「プアボーイ」
愛情故に入り乱れる卑俗な物語。
軽薄ながらも美しい。
男って母性につくづく弱いものです。
Posted by ブクログ 2012年12月05日
戯作調の文体だからこその、胸に訴えてくる感じがあった。涙や情けで飾らない淡白な心理描写がリアルで、どの話も心に残りました。
餓鬼に取りつかれてしまった高志くんが、なんだか読んでてすごくつらかった…。
あとがきで、清太くんのようにやさしくしたかったという思いを、野坂さんが持っていたと知り、涙が滲みまし...続きを読むた。清太くんはほんとうにやさしい…。あんなふうには、なかなか出来ないものだろうと思う。燃える火と、蛍の群れが、胸に焼き付くようです。
Posted by ブクログ 2012年06月20日
アニメ化もされた表題作「火垂るの墓」とそれと裏表の関係にある「死児を育てる」、一種の連作である「ラ・クンパルシータ」と「プアボーイ」に野坂昭如という作家の形が色濃く表れているように感じた。生きると言うことが漂わせる臭気がここにはある。
Posted by ブクログ 2012年01月20日
短編集になっています。
淡々と戦時下からその後の期間を舞台に話が書かれています。
可哀想だとか悲しいだとかよりも、
個人的にはエグいと思いました。
生々しくも感じられるほどに淡々とした語り口は、
物語を鮮明に脳に流し込んできます。
火垂るの墓はジブリ作品としても有名ですが、
その他の話もそれに劣らぬ...続きを読む秀作です。
個人的に、『死児を育てる』は本当に苦しかったです。
衝撃的とでもいうべきでしょうか…。
読みきるのに、
ある意味覚悟のいる一冊です。
戦争の中を生きる人々の姿を、
より身近に感じることができるかもしれません。
興味のある方は是非どうぞ。
Posted by ブクログ 2020年06月17日
平成2年ごろ、映画との比較で読んだ。
短編集で、表題の『火垂るの墓』はわずか30ページほど。なかなか文体にも癖があり、この作品があの映画になるのかと、現ジブリの作品の完成度に驚いた。
他の作品も、敗戦にまつわるものなのだけど、これは『火垂るの墓』の世界観とは少し異なるので、ある程度、気持ちをフラット...続きを読むにしておかないと、読めない人もいるかもしれない。
Posted by ブクログ 2016年11月27日
1文が3ページに渡るなど、句点を使わずひたすら文を続ける独特な書き方に初めは戸惑ったが、すぐに気にならなくなった。「火垂るの墓」悲しいなぁ。ドロップの缶から出てきた小さな骨。戦争は終わったのに、三宮の駅構内で死ななければいけなかった清太を思うと悲しすぎる。「死児を育てる」私が娘を殺したのは、ねずみに...続きを読むなるため。私はねずみのように殺されなければいけない。「ラ・クンパルシータ」異常に食欲のある高志は、母の衣類や掛け軸、置物など片っ端から売り払い食べ物を買いに行く。母が泣いても考えることは食べ物のことばかり。