あらすじ
カローラ、カマロ、セドリック等、売れる自動車にC音が多いのはなぜ? キツネがタヌキよりズルそうなのはなぜ? すべての鍵は、脳に潜在的に語りかける「音の力」にあった! 脳科学、物理学、言語学を縦横無尽に駆使して「ことばの音」のサブリミナル効果を明らかにする、まったく新しいことば理論。
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Posted by ブクログ
朝起きると・・・・・
あたしの頭が「らいおんみたく」なっている。
日本語のプロとして働くあたしだけれど、あえてここは「あたしの」「らいおんみたく」と言わなきゃならない。・・・いや、言わせて欲しい。
「ライオンみたいに」ではなく、「らいおんみたく」。
「ライオン」には写実的な・・・劇画調のイメージがある。「らいおん」にはアニメ・・・しかもまるっこい、一筆書きのようなかわいいライオンのイメージ。「みたいに・・」ではなく、「みたく」は舌ったらずなイメージ。・・・そう、ボサボサで汚らしい印象ではなく、ぽさぽさでぽわんとしてて、汚くない印象が欲しいだけ。
「ガメラ」が「カメラ」になったらどう?ましてや「かめら」になったら、怖くもなんともない。
多分手のひらに収まるだろうし、携帯ストラップにできちゃうかもしれない。
「ゴジラ」が「コジラ」になったら?丸い目をしているに違いない。「コシラ」や「こじら」になったらむしろ、あたしの方から謝りたくなる。
『怪獣の名はなぜガギグゲゴなのか』(黒川伊保子・著)では、「ガンダム」が「カンタム」じゃない理由がわかる。売れる車にC音から始まるものが何故に多いかわかる。キツネはたぬきよりずるがしこいんだって、日本人の誰もが思う理由が、音にも隠されていることがわかる。
Fから始まる単語がある。
「ファン」「ファンタスティック」「ファンタジー」・・・
発音する際に、息の音の一部を唇に当てて振るわせるFの音は、ふんわりした、拡散したイメージを持っている。〔不思議〕〔非現実的〕な印象。だから、「ファンタジー」で表現したいときに、それは「おとぎ話」に変えたくないけど、なんとなく「空想」「夢想」「幻想的作品」にはしてもいい気持ちになる。これは漢字が持つ力でもある。「空」は開放感いっぱいだし、「夢」も拡散しているし、「幻想的」なんてそのままイメージを継いでいる。ファンタジーには素敵な終りが用意されていて、まだ続きがあるかもしれない希望がある。でもおとぎ話は悲しかったり、皮肉に溢れている場合がある。それが音にも十分表現されているのだ。F音の魔法・・・と黒川さんが言う。
黒川伊保子さんには、あるイベントでお会いした。あまりに話しが面白かったのでそれから彼女の本を全て読破。それまで、外国由来のカタカナ語を自分たちが使っている理由について、深く考えたことがなかったけれど、適度な重みのある「手紙」とちょっとした「レター」は違う。「ラブレター」を送ったら喜ばれるだろうが、「愛の手紙」を送ったら相手が退くかもしれない。あたしがラジオで毎週伝えているのは「詩」であって、「ポエム」ではない気がする。
黒川さんは、理学部物理学科を卒業し、現在は言葉の感性の研究をしていらっしゃる。言葉を紡ぎだしているのは、ご存知、左脳。左脳にダメージを受けると、言語に障害を来す。現在では、脳のどの部分が言語処理をしているのか大方明らかになっている。
一方の右脳は、音楽や美術などの記号化できない要素に感応する「感性」を生み出しているわけで。その右脳で、「ことばの音が潜在脳に描くイメージ」も生み出されているのだという。・・五感のすべてを駆使して人が感じ取る「脳の秘め事」と彼女は呼ぶ。そういえば、以前TVで、事故で左脳全て摘出した女性が、話せるようになった事例を見たことがあったなあ・・・。彼女は、世界初の「音が潜在意識に働きかける」ことをチャートにしてしまった人。ああ・・・尊敬する黒川ひゃん・・。
「ねっとり」は「しっとり」より粘性があり、「うっとり」は「う」の音を、喉の奥から出すので籠もった感じになる。これを、ナレーションとして入れるときにはいろんなアレンジができるのだ。「うっとり」の「う」をを唇近くで高い音にすると、年の若い、かわいいイメージになる。声を低くして喉の奥だけ使うと、年齢が上がり・・・「り」の母音まで発音すると、年齢が下がる、下がる。さらにスピードダウンさせるとより大人になる。同時に息を吐く量を増やすと・・・「うっとり感」が増す(笑)。「念じる」は重く、「信じる」はスパっと言い切る感がある。「さらり」の「さ」は粉のような・・・「はらり」の「は」は衣擦れのような・・・「きらり」の「き」は閃光のような・・・印象が脳に染み付いているのだ。
『日本語はなぜ美しいのか』(同・著)にはもっと面白いことが書いてある。日本語の「オハヨウ」と「Good Morning」を例に。英国の朝はくぐもってる。物憂げで、日本人の朝とは違う。この言葉の組成「良い・朝」をみてみると、これは語感ではなく、意味から生まれた言葉だということがわかる。けれど、この鼻腔に響く物憂げな発音が、英国の朝に根付いてきたのには、それなりの理由があって・・・ゆっくりともやのかかった朝に始動する英国だからこその言葉だろうという。英国の赤ちゃんは、穏やかな、やさしい朝のイメージを持って育つのだろうとも。
一方、鮮烈な朝陽を受けて起きる日本人には、「おはよう」が根付いた。赤ちゃんは、お母さんから「朝よ!オハヨウ!」と元気に、そして爽やかに言われることで、音と一緒に、お母さんの明るい顔・爽やかな声のトーン・まぶしい光を一緒に感じとって・・・「朝」を知るのだそうだ。
音が赤ちゃんに与える影響力、そして長年かけて各国民族が生み出してきた言葉の不思議。その他、骨格がいかに音に、言葉に影響しているかも教えてくれる。
びっくりしたのは、日本語は、世界でも珍しく「母音を主体に音声認識をする」言葉ということだ。(他に確認されているのはハワイ語などのポリネシアン語のみ)
以前、外国人男性とは付き合えないのはなぜか考えたことがある。(人それぞれだから・・・あくまでも、あたしの場合は、ってことで)母音で伝える感情が無かったからだ。コミュニケーションに不足があるとは思わない。身振り手振りや表情で言葉を補えばなんとかなる。ただ、どうしても伝えたい情緒が伝わらなくて、むず痒い思いを何度かした。そして、その時、「ああ、日本人がいい」と思ったのを覚えてる。
あたしの過去の仕事で、番組開始当時は英語を使っていたのに、途中から使わなくなったことが2回ある。ラジオの生放送とカウントダウンのナレーション。
最初は「英語のところは英語でかっこよくお願いしま~す♪」と言われて頑張る。そのうち・・・「英語はなしで・・・」になるだろうなーと思いつつ・・・・
そして結局英語の部分はカタカナ読みになる。「すいません。英語の部分カタカナ読みでお願いしよっかなー」って言われる。なぜなら、英語と日本語を単語単位で混ぜこぜに読めないから。日本語は日本語で読みたいという強い欲求があり、同時に英語は英語で読みたいと思う。英単語に日本語の助詞をくっつけても、変な帰国子女になっちまう。(念のため、あたしはカリフォルニア英語を話し、ナレーションの文脈によって必要があれば、英国英語で目立つ、子音の強弱も母音のアレンジもして日本人に通じやすくしたりもするので、聞くに堪えない英語になっているわけではない・・・だろう)英語をそのままに発音すると、必ず日本語にリズムがついてくる。一方、日本語のように音の高さで表現し、リズムを一定にすると、音の強弱で表現する英語が変になる。だからFMラジオのDJのようには喋れない。
・・・おっと、忘れてた。あたしはFMラジオのDJだった・・・。
・・・でも、嫌なものはいや。
両方達成できるように、口蓋と唇、喉の振るわせ方、息の加減でどうにかできないものか。探求続けるしかないかな。
創世まもなく・・・といっても神の子たちは皆、数百歳は生きているから・・・数千年後、ノアとその家族、つがいの獣たち以外を滅ぼした神様。「もうしないから・・ちゃんとしてね♪」と何度も契約を確認してくれたのに、洪水が退いたらすぐに天にまで昇ろうとした人間たち。
「洪水にはしないって言ったけど、そんな塔建てるんだったら、みんなバラバラにしちゃうからっ!」と言われ、全世界に散り散りになった懲りない人間たち。でも、そんな人間の『言葉』にも、感動を残してくれたのは、やっぱり神様のなせる業だわ。
「あたし」からのおすすめ本・・・黒川伊保子さんの著書は、
『怪獣の名はなぜガギグゲゴなのか』(新潮新書)
『日本語はなぜ美しいのか』(集英社新書)
他に『シンデレラ・ブレイン』『しあわせ脳に育てよう』(講談社)、『感じることば』(筑摩書房)など
Posted by ブクログ
例えば「ひかり」を「光」そのもの意味ではなく「hi-ka-ri」というそれぞれの音のイメージから分析して「ひかり」はなぜ早そうなのかを分析している本。
これまであまり見られなかったアプローチだから、ところどころ分かりにくかったり独断的なところもあったし結末はあまり好きな感じじゃないけど(日本語を誇りに思うという意味でいいのかも)
男性がなぜ「ガンダム」や「シトロエン」などが好きなのか。
「資生堂」や「シャネル」のネーミングのイメージとか。
中高年の女性になぜ「ババア」と言ってはいけないかとか(笑
カゴメとサントリーの社名と商品の傾向とか。
など知ってる事例が多くあって面白かった。
分析表を一覧にして知ってるネーミング対比させたい。
音から分析しているので「a」や「T」などの発音構造が細かく書いてあるので、おもわず口にしてみたくなる。
電車の中で読むには要注意。