Posted by ブクログ
2012年04月04日
「語感」についての研究
黒川伊保子さんの本はやはり面白い!
本書のタイトルである『怪獣の名はなぜガギグゲゴなのか』は、主題ではない。「語感」の解説の中で引き出された一例でしかない。
『ことばを発する際に、口の中で起こる空気の流れ、舌の動きといった物理現象が、意味以上に意識の質に影響を与えている』...続きを読むという視点で、特に日本語に焦点を当て、分析を行っている。他の書と重複することが多いけども、この書は、特に『サブリミナル・インプレッション(=ことばの音から潜在能に浮かぶイメージ)』と『音のクオリア(質感)』について言及し解説されている。
ちなみに、『陰陽師』の「この世で一番短い呪(しゅ)とは・・・名だよ」という台詞を紹介しておられるが・・・、やっぱりそうだと思った!好きなんだろうな。
黒川伊保子さんが一貫して言っていることは、この「呪」についての物理的な解釈の一つだと思う。
黒川伊保子さんには、ぜひとも野口三千三へとブチ当たった著作を出してほしいと思うこのごろ・・・。
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【目次】
序 章 ブランドをつくるマントラ
日立のマントラ
商品名の音
音のサブリミナル
第1章 ことばの音
おっぱいの音
母を呼ぶ音
MとPの快感
音と人間の生理
気持ち良いことばは語り継がれる
この世の始まりの魔法
文字でも聴覚野が刺激される
名前は呪である
ことばの本質
文字のイメージ
第2章 サブリミナル・インプレッションの力
ものの音と脳
音の共鳴体としての身体
脳に響く音
「ことばの音」の定義
「右脳で聴く」ということ
潜在脳のイメージ
サブリミナル・インプレッションとクオリア
「マニフェスト」の甘さ
第3章 鍵は擬音・擬態語
言語学から脳へ
脳科学から言語へ
感性工学から言語へ
マーケティング論の視点
九千年のタイムトラベル/インド・ヨーロッパ祖語からの発見
「培」「倍」「by」
肉体の悦び/発音の生理構造からの発見
粘りのある「バビブベボ」
カラカラとサラサラ
すべりのいい「S」
かたい「K」
とろみのある「T」
なぜキツネはズルイのか
第4章 音のクオリア
日本語の音と文字
濁音の見事さ
母音語の奇跡
辛口のキレを持つ「K」
Cの存在理由
確かな手ごたえの「T」
光と風のモニュメント「S」
未来への光「H」
ベッドルームの音「N」
満ち足りた女の「M」
哲学の響き「R」
男たちを興奮させる濁音
吐き出すブレイクスルー系
母音は世界観を作る
アイウエオのサブリミナル・インプレッション
エントロピー増大関数としての「Y」「W」
第5章 ブランドマントラになった商品名たち
未来に向かって走るブランド
トマトジュースが甘い理由
少女たちの救世主
男の子が走り出す音
牛丼と豚丼
化粧品ブランドの棲み分けマップ
終 章 日本人は言葉の天才
世界が二つの言語に分かれた日
溶け合うことば、威嚇し合うことば
日本語は母音語
日本人の絶対語感
おわりに
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