【感想・ネタバレ】のらくろ一代記 田河水泡自叙伝のレビュー

あらすじ

漫画ブーム元祖のユーモア人生――一世を風靡した「のらくろ」誕生の秘話、「蛸の八ちゃん」など続々と新キャラクターを生み出し、サザエさんの長谷川町子女史が弟子志願、明治・大正・昭和を生きた漫画界の「大御所」の自叙伝。

●本名・高見澤はローマ字で「TAKAMIZAWA」だが、「タカミズ・アワ」と分けて、そのあて字を「田河水泡」にして、「タカミズ・アワ」と読ませてペンネームにするつもりであった。しかし誰もそうは読んでくれずに、みな「タガワスイホウ」と読んでしまうのであきらめて、自分もそういう読み方にしてしまったのである。――(本書より)

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Posted by ブクログ

田河水泡(1899-1989)、本名は高見澤仲太郎。姓のTakamiz-awaに漢字をあてて「田河水 泡」というペンネームにしたが、だれもそう読んではくれなかったらしい。奥さんの高見澤潤子(1904-2004)は、評論家小林秀雄の妹。脚本やエッセイを書き、アガサ・クリスティやフレドリック・ブラウンの翻訳もある。
水泡は晩年にこの自叙伝にとりかかり、24歳のところまで書いて絶筆。あとは奥さんが引き継いだ。分量で言うと半々。奥さんの書いた後半のほうが、文章にユーモアがあるのが可笑しい。というのは、田河水泡はユーモアの漫画家、落語の台本も書いた人だったから。
1歳の時の母の死と18歳の時の父の死によって、絵の道が展けてくる。人生、なにが転機になるかわからない。愛弟子・長谷川町子の話も出てくる。水泡といえば「のらくろ」だが、ワタクシ的には「蛸の八ちゃん」のほうが好み。その八ちゃんの話もある。そしてもっとも驚いたこと、デビュー単行本『漫画の罐詰』がなんと10万部の売れ行きだった!
漫画がところどころに添えられている。写真もある。

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2025年05月09日

Posted by ブクログ

 BSで『マー姉ちゃん』が再放送されているので、長谷川町子について書かれた部分だけ読むつもりが、全て読み返してしまう。
 田河水泡による自叙伝は関東大震災のところまで。「夜遅く君のような長髪で歩いていては、自警団に怪しまれて危険だから、今夜は警察で保護する」とあり、千田是也が暴徒に殺されかけたという故事を思わせる。
 戦前の大ヒット漫画『のらくろ』のバックステージが、作者その人から語られないのは惜しい。しかし、文章は奥様(高見澤潤子)の方が読みやすい。
「のらくろの黒つぶしのところを塗ったり(中略)電話の取りつぎといった仕事は私がやった」。ベタという用語は手塚治虫の編集者が思いついたらしい。それを「黒つぶし」と呼んでいるのは歴史的に見て面白い。

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2021年12月17日

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