【感想・ネタバレ】海のアルメニア商人 アジア離散交易の歴史のレビュー

あらすじ

有史以来、アルメニアは次々と勃興する帝国のはざまで侵略を受け、「ディアスポラ(離散)」という運命に晒されてきた。
離散したアルメニア人たちは、近世のユーラシア大陸では「陸の巡回商人」として活躍していたが、近代になると「海の商人」に変貌し、インド・東南アジアを経て、香港や上海、日本にまで到来していたことが調査により明らかになった。
彼らは各地でどのようにコミュニティを築き、いかに生き抜いてきたのか――。
インド、マレーシアなどでの資料収集、墓碑調査、インタヴューをもとに、アルメニア商人たちの姿をアジア交易の視点から鮮やかに描き出す。

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Posted by ブクログ

日本マクドナルドの創業者・藤田田がその商才を称賛したほど、アルメニア人は商業の才に長けた民族として知られている。イランやイスラエルにコミュニティを築き、アメリカやフランスでも影響力を持つ彼らが、実は海洋ルートを通じてインドやシンガポール、さらには日本にまで進出していたことを知り、非常に驚かされた。

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2025年07月17日

Posted by ブクログ

1580年にユーラシアのジュルファ市がオスマントルコにより陥落、廃棄され、イスファハンに強制移住、1622年にホルムズがポルトガルからサファヴィー朝にうおって奪還されたのを機に本格的に交易路を海に移す。1688年にはイギリス東インド会社と手を結ぶが、英蘭西葡と現地との間で、家族単位でニッチ的な交易主体としてインド洋全域に広がり、開国後の日本にもその名を残している。
後半は具体的な家族や会社にフォーカスして具体的な動きを追う。
17世紀から20世紀まで、歴史の表舞台に出ないが、交易の重要な結節点として活躍するアルメニア人の存在。

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2024年06月23日

Posted by ブクログ

 一般書では珍しいアルメニアに関する本ということで、興味を持った。アルメニアというと、トルコによるジェノサイドであったり、ユダヤ人と並ぶ”商業の民”と呼ばれたことなどを想起するが、本書は、陸上交易を主として活躍していたアルメニア人が、「近代になると「海の商人」に変貌し、インド・東南アジアを経て東アジアにまで到来した史実」の歴史的背景と在り様を明らかにしようとしたものである。
 著者は、インド、シンガポール、マレーシアの各地を訪れ、かつてのアルメニア人コミュニティーの現場確認や種々の調査をしたものの史料や情報も十分にはなくから未だ不明な点も多いようだ。しかし、実は日本にもアルメニア人の足跡はあった。そのような意味で、本書はこれまでの調査により判明した報告書と言えるかもしれない。 

 歴史に関する本という意味では、第1章及び第2章がとても勉強になった。アルメニアがその地政学的環境から強国の争いのエリアであったことは知っていたが、近世において「ディアスポラ」(離散)の直接の契機となったのは、16世紀のオスマントルコとサファビー朝との戦いにより勝利したサファビー朝のアッバース一世によりイスファハンに強制移住させられたことであった。その数およそ25万から30万人。そのアルメニア人街は、故地に因んで新ジュルファと呼ばれた。その新ジュルファを拠点に、①アナトリア地方から地中海、西ヨーロッパに展開する西方ルート、②カスピ海からロシア、北ヨーロッパに向かう北方ルート、③イラン高原からアフガン高地を経てガンジス川流域に至る東方ルートにより商圏を広げていった。しかし、帝国間の覇権争いの激化、交易商品や運搬手段の変化等によりユーラシア内陸交易が衰退していった。ただ、東方ルートは他のルートに比べれば交易は活発であったし、また17世紀初頭にはインドや東南アジアとの間の海上交易も進出していた。
 この辺りの具体的な史実についてはほとんど知らないことばかりだったので、ここにメモとして残しておきたい。

 著者が本書で書きたかったことは、おそらく第4章以下だと思われる。
 第4章では、シンガポールのアルメニアン・コミュニティ、特にホヴァキム家の事例が紹介される。
 第5章及び第6章では、日本とも関わりが深いアジア海域におけるアルメニア海運として7章では、横浜居留地に店を構えたアプカー商会の事業と、関東大震災被災後の神戸における事業概要や交易品について紹介する。

 終章では簡単なまとめがされているが、興味深かったのは、アルメニア商人は「ニッチの民」という特性を持っているということ。他の大勢力に侵されず、対抗せず、併存する関係、共生の関係ではなかったかと著者は言う。激動の歴史に翻弄されながらも生き抜いてきた、その一端を垣間見たような気がする。

 全体としてあまりまとまりの良い書籍とは言えませんが、史料が十分にはない中での著者の調査には頭が下がりますし、小国の歴史や人の移動、あるいは交易、貿易などに関心があれば、興味深く読める箇所が幾つも見出せるだろうと思います。

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2024年01月21日

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