あらすじ
日本語において「おのずから」と「みずから」は、ともに「自(ずか)ら」とあらわす。成ることと為すこと、物と自己、自然と自由を意味するが、截然と分けられず、両者には交差・共和・相克する「あわい」がある。そこに見られる日本人の基本的発想とは何であり、それはまたどのような思想文化を育んできたのか。本書は、思想・宗教・文学・芸能の諸領域を広く深く行き来しながら、日本人の自然と自己との相関的認識、超越と倫理との関わり、そして無常観と死生観を根源から問いなおす。倫理学者・日本思想史家である著者の代表作。
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Posted by ブクログ
「おのずから」と「みずから」、そしてその「あわい」に日本の思想と文化の根本特性が現れている、とする著者の代表作。
個人的には、豊かな説得力を持っていると感じるが、著者の思索そのものは、ここで論じられている西田幾多郎、九鬼周造、清沢満之などの深みに遠く及ばない。
とはいえ、その着眼点の秀逸さと、適切な引用は、読むものを飽きさせない。
私は西田幾多郎と九鬼周造の原典を読む機会を与えてくれたことに感謝している。
西田は「日本文化の問題」から、
「私は日本文化の特色と云ふのは、主体から環境へと云ふ方向に於て何処までも自己自身を否定して物となる、物となって見、物となって行ふと云ふにあるのではないかと思ふ。己を空うして物を見る、自己が物の中に没する、無心とか自然法爾とか云ふことが、我々日本人の強い憧憬の境地であると思ふ。」
九鬼は、日本の思想文化の大事な要素として「自然」「意気」「諦念」の三つをあげている。「自然」という「おのずから」と、「意気」という「みずから」、そして「諦念」という「あきらめ」とが、われわれの発想の基本性格としてあるという。(「日本的性格」)
後者の原典は、これから読むところだが、この二人の思想家の日本文化論はさすがに本質を抉り出していると感じさせられる。