【感想・ネタバレ】子どもの文化人類学のレビュー

あらすじ

極北の雪原に生きる狩猟民ヘヤー・インディアンたちは子育てを「あそび」として性別、血縁に関係なく楽しむ。ジャカルタの裏町に住むイスラム教徒は、子どもの喧嘩を「本人同士のビジネス」と言って止めない。本書は、環境や習慣が異なる社会における親子、子どものありかたをいきいきと描き出した文化人類学的エッセイである。どのような社会に生まれても子どもは幅広い可能性を内包しながら成長していくことが、みずからのフィールドワーク経験をもとにつづられる。鮮彩なエピソードの数々が胸を打つ名著。

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Posted by ブクログ

ネタバレ

著者が、極北に暮らすヘヤー・インディアン(「ヘヤー」は野うさぎの意とのこと)やイスラムのジャカルタ・アスリ、オラン・ジャワ、それからイスラエルのキブツの人びとなどの、とくに子供が「どういうアプローチで(おとな目指して)社会と関わっていくか」(だとわたしは感じた)を、実際見聞きして書いた本。成長の仕方がひとつではないことを実際の経験に基づいた文章から示されたことにより、ヒューマニズム否定派でありながら「人間」という枠を越えられないでいたわたしも、これぞ(例えばものを教え教わって覚える)」という鋳型に嵌められうる「人間」は元来居なかったのだと気づくことができた。現代人は効率重視的で楽をしたがり、またなにかと斜に構えたがって「教わる」中でさえ失敗したくないように見えるし、わたしは「人間の身体にあることがイヤ」なので、ついほかの生きものと対比して考えてしまうけれど、実際は、「人間」も、それぞれの環境に即したわざを獲得するちからを持ち合わせているのかもしれない。また、「守護霊との対話に導かれる」かれらがとてもうらやましい。それは、厳しいものかもしれないが、自然と隣り合って暮らしていなければ、滅多に会えないものだから。
それはそれとして、女の子を閉じ込めて勉強もさせず、男の子の知恵と勢力がやたら強まる教育はなんというか……つらい(ヘヤー・インディアンの社会ではない)。

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2024年11月18日

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