あらすじ
読み書き障害でも読みやすいフォントが生まれるまでのノンフィクション!
UDデジタル教科書体の完成から3年が経った頃、私は仕事の関係で、障害のある子どもの教育や就労を支援している会社を訪れました。
そこでは発達障害、学習障害、ダウン症といったさまざまな困難を抱える子どもたちを支援する学習教室を運営していたのですが、あるベテランの女性スタッフの方が、こんな話をしてくれました。
「うちの教室に、ディスレクシアの小学生の男の子がいるんです。その子は普通の本や教科書では文字がうまく読めなくて、『どうせおれには無理だから』って、いつも途中で読むのを諦めていたんです」
「それで、あるときUDデジタル教科書体のことを知って、試しに教材のフォントを変えてみたんです。そしたら教材を見た瞬間、その子が『これなら読める! おれ、バカじゃなかったんだ!』って。暗かった顔がぱあっと明るくなって、その顔を見たとき、私、思わず涙がこみあげてきてしまって。その場にいたスタッフ皆、今まで男の子が悔しい思いをしてきたのを知っていたから。みんなで男の子の周りに集まって、泣いてしまいました」
(「はじめに」より抜粋)
感情タグBEST3
このページにはネタバレを含むレビューが表示されています
Posted by ブクログ
・UDデジタル教科書体の開発は素晴らしい仕事だと思った。
・意識したことがなかったが山、しんにょうなどの明朝体は手書きの形とは異なっている。こういう違いにより文字を読むのが困難な人がいる。
・書体の開発がこんなに大変なことだと初めて知った。今まで何気なく見ていた文字の裏側には大変な努力、工夫、職人のプライドが詰まっているのだと知った。
・学生時代に書体デザイナーという仕事を知っていたら目指していたかもしれない。それくらい熱いお仕事だと思った。
Posted by ブクログ
本に書かれている文字が読めない、という障害があることは知っていました。
内容を理解できないのではなく、文字を認識するのが難しいというディスレクシアという障害。
それが、文字のフォントを変えたら読めるようになった人がいるというニュースを見て、興味を持ちました。
以前、構成員の半数以上が60代~70代の組織で事務局の仕事をしていた時に、会議の資料はメイリオというフォントで作るように言われました。
明朝体は横線が細いので、老眼が進むと読みにくい(または読めない)というのがその理由。
UDデジタル教科書体は、年齢や障害や国籍などを問わず、誰もが読みやすい文字というコンセプトで作られています。
それは単に線を太くするとか、文字を大きくするということではなく、文字単体として見やすいうえに文章としてみたときに読みやすくなければなりません。
教科書で使われる文字は、書き順、はね、はらいなどもわかりやすく表現されていなければなりません。
画数の多い文字も少ない文字も。
何千もある文字の統一規格を考え、何度も試行錯誤を繰り返して作られたフォントは、会社から開発の中止を言われたこともありました。
それでも著者をはじめとするフォントデザイナーや、教育関係者や障碍者に対するボランティアの人たちの支えがあり、教科書は紙に限らなくてよいという法整備もされ、満を持して世の中にリリースされたのでした。
私は日常的に本をよく読むのですが、縦書きの本はやはり明朝体のほうが馴染むと思っています。
でも、今は国語以外の教科書も横書きですし、公文書も会議の資料もほぼ横書きですから、横書きで読みやすいフォントはもっと作られていいと思います。
教科書体といわれるだけあって、書き順を勉強するのにはとても分かりやすいフォントでした。
横線から書き始めるときは横線の書き始め部分が少し飛び出し、縦線から書き始めるときは縦線が飛び出しているというルールを知っていたら、自然に書き順が覚えられるようになります。
メイリオとUDデジタル教科書体を比べてみたのですが、メイリオは行間が広いのですね。
UDデジタル教科書体の方が、文字の塊として目に飛び込んでくるような気がしました。
ただ、私にとっては、それは些細な差なので、今はどちらでもいいのですが、将来のことを考えると、選択肢は多い方がいいと思いました。
以前仕事で渋谷に行ったとき、フォントの展示会に遭遇したので、一回り見たことがあります。
今ならもっと熱心に見るのになあ。
Posted by ブクログ
小学校で特別支援教育に関わっている私にとって、ど真ん中の内容。
子どもと学習するときに、ディスレクシアの視点を頭に置いておきたい。
それから、どんなフォントにもデザインした人がいるんだと感じられて、まだまだすごくて知らない世界があるんだなぁと思った。
こんな風にフォントを開発した人がいるという事実だけで、心があたたかくなる。
・専門家による調査では、日本語話者の5〜8%がディスレクシアであるという報告がなされています。これが正しければ、1クラス(35人)のうち2〜3人の子どもは、読み書きに何かしらの困難を感じていることになります。
・そして普段の会話や理解力には問題がないだけに、ディスレクシアの子どもは「(やればできるのに)勉強のやる気がない子」「漢字が苦手な子」「読書が嫌いな子」といったレッテルを貼られがちです。
・障害は、人ではなく、社会にある。
・それぞれの人にとって見やすかったり、好ましかったりする書体を、それぞれが選択できることこそがユニバーサルデザインの本質です。
・ディスレクシアの子は、授業態度と回答に”違和感”があることが多い。例えば、授業は真面目に聞いていて発表もよくするのにプリントは空欄が多い。あるいは、口頭で質問すれば答えられるのにテストの点数が低い。こうした部分にできるだけ 目を向けて、多角的な評価軸を持って判断してもらいたいと思います。
Posted by ブクログ
◾️ページ数 p237
◾️あらすじ
*ディスクレシア
文字を素早く正しく読むのが困難な障害
*ロビーション
ぼやけたり一部が欠けて見えたりする障害
書体デザイナーが教科書の読めない子ども達のために教科書体の開発をする物語。
↓↓↓
これからお話するのは、UDデジタル教科書体が誕生し、社会に広がっていくまでの軌跡の物語です。
「うちの教室にディスクレシアの小学生の男の子がいるんです。この子は上手く読めなくて「どうせおれには無理だから」っていつも途中で読むのを諦めていたんです。
ある時UDデジタル教科書体のことを知って教材のフォントを変えてみたんです。そしたら教材を見た瞬間その子が「これなら読める!おれバカじゃなかったんだ!」って。暗かった顔がぱあっと明るくなってその顔を見た時思わず涙がこみあげてきてしまって、スタッフみんなで男の子の周りに集まって泣いてしまいました」
男の子の話をきいたとき、私の心にさまざまな感情がどっとあふれ出てきて、思わず涙がこぼれそうになりました。障害は人ではなく社会にある。
どうか、ロビーションやディスクレシアの子どもたちが置かれている書体環境や困りごとにもっと目を向けてほしい。
社会には男の子と同じように文字が読めずに苦しんでいる子どもがまだまだたくさんいます。
思わぬきっかけからアイデアが生まれ、試行錯誤し、何度も形を変え、世に放たれ、一人の男の子に届けられたUDデジタル教科書体。
そんな奇跡的な出会いが一人でも多くの子どもたちに訪れることを願いながらこの物語のお話を始めたいと思います。
◾️この本を読んで抱いた感情
感動、けっこう大変そう
◾️感想
技術職だからもちろん色々大変で、フォントを作るにあたって色々な試行錯誤の上で世の中に出てきているんだろうとは思うけど、フォントにこんなにも情熱が注がれてたんだと改めて実感させられた。
文字が読めない障害(ディスクレシア)があることは知っていたけれど教科書が読めない子供がいる事を改めて知って、そういう子供たちが読める文字がUDデジタル教科書体だという事にすごく感動した。
このフォントがそういう子供たちの役に立つ字体だと言うことを世の中にもっと広まるといいなと思った。