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読み書き障害でも読みやすいフォントが生まれるまでのノンフィクション!
UDデジタル教科書体の完成から3年が経った頃、私は仕事の関係で、障害のある子どもの教育や就労を支援している会社を訪れました。
そこでは発達障害、学習障害、ダウン症といったさまざまな困難を抱える子どもたちを支援する学習教室を運営していたのですが、あるベテランの女性スタッフの方が、こんな話をしてくれました。
「うちの教室に、ディスレクシアの小学生の男の子がいるんです。その子は普通の本や教科書では文字がうまく読めなくて、『どうせおれには無理だから』って、いつも途中で読むのを諦めていたんです」
「それで、あるときUDデジタル教科書体のことを知って、試しに教材のフォントを変えてみたんです。そしたら教材を見た瞬間、その子が『これなら読める! おれ、バカじゃなかったんだ!』って。暗かった顔がぱあっと明るくなって、その顔を見たとき、私、思わず涙がこみあげてきてしまって。その場にいたスタッフ皆、今まで男の子が悔しい思いをしてきたのを知っていたから。みんなで男の子の周りに集まって、泣いてしまいました」
(「はじめに」より抜粋)
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Posted by ブクログ
めちゃくちゃ面白かった……。最近読んだ本の中で一番よかった。わたしはもともとフォントというものが好きなので興味津々で読んだし、著者の方(高田さん)の半生も波瀾万丈ですごかった。実写映画化してもいいのではとすら思えた。
当たり前なんだけど、木という文字の右払いを直さなきゃいけなくなったら木偏がつく他の漢字だけじゃなく右払いがある漢字全部直さなきゃいけなくなると知って気が遠くなったし、そこまでこだわってフォントを作っているのを知ってますます興味が湧いた。日本語のフォントだけでなくアルファベットのフォントにも書かれていて、bとd、pとqを間違えないために、言われなければ気づかないような差異があると知って驚いた。
本文もUDデジタル教科書体が使われていて、個人的にはとても読みやすかった。
Posted by ブクログ
昔からフォントに興味があり、フォント開発に関わるノンフィクションということで純粋に面白そう、と思い購入
著者がフォント開発者になったキッカケから、文字を読んだり理解することが苦手な子供たちのためのフォントの開発過程のお話までが綴られていて、とても興味深い内容でした
日頃何となく目にしている文字、フォントは、想像以上に手間ひまかけてデザインされていることがわかり驚きの連続でした
また、フォント以外にも、子供が抱える文字認識に関わる障がいに関する内容も書かれていてとても勉強になりました
最後に特別章として、著者が文字認識が苦手な子供たちのために8年かけて開発された「UDデジタル教科書体」に関わる、より詳細なコンセプトや、Word、Excelなんかでフォント設定を変えたら行間が勝手にズレたりするメカニズムなんかも書かれていてとても興味深かったです
また、教育とフォントの関係の奥深さについても、その膨大な人と時間をかけて検討の積み重ねで形になっていることも知れました
普段、何気に目にしているフォントですが、もう少し意識して使ったり眺めたりしてみたいと思いました
Posted by ブクログ
発達障害に興味があり手に取った本。大変面白かった。
フォントを生み出すのに非常に多くの時間と手間がかかること。著者がタイプバンク社に入社し、ロービジョンの人達の苦労を知ったことからユニバーサルデザインフォントを作ろうと思い立ったこと。様々な専門家との出会い。タイプバンク社が経営難に陥り、モリサワの子会社となったこと。UDフォントの頓挫。
著者曰く、「いつもギリギリのところで誰かが助けてくれた」とのことだが、一時はモリサワを辞めようと思い詰めるほどに行き詰まっていたこと。
発達障害やロービジョン(弱視)の人達の見え方の例。ぼやけてたり、二重に見えたり、鏡像に見えたり、亀に例えた例も驚いた。
そして当然だが、フォントが変わるだけで「これなら読める!」と言った子がいたこと。エビデンス。
それからフォントのP付きやK付きのこと(YouTube保存済)。
とにかくフォントの世界にどっぷり浸かることができた一冊。
Posted by ブクログ
フォント1つに こんな情熱を持って動いてくれている方々がいるなんて。
うちの子は、文字もですが、教科書の白さが眩しく感じるらしく、教科書を読む際は 小学校低学年の間 魔法の下じきを使っていました。文字にも留意できていたら、もっとよかったかもしれません。
仕事で 指導する場合 その方が視覚優位なのか聴覚優位なのか 気にしたり。
視覚優位でも 文書なのか動画のようなもなか 文書でも 短文か 図や表みたいなのが良いか 気にしながら 後輩指導します。理解してほしいし、できるだけ エラーは減らしたいですしね。
フォントにも 配慮できるようにします!
学びになりました。
Posted by ブクログ
デザイナー必読。ユニバーサルデザインとは何かを、書体・フォントデザインの文脈から問い直す、UDデジタル教科書体を生み出したデザイナーの自伝的な一冊。
構想から完成まで8年を要し、その間に会社が吸収合併したり、担当を外されそうになったり塩漬けプロジェクトになったり、なんども頓挫しかけながらそれでも諦めずに完成にたどり着いた執念と、このフォントが社会にあるべきだという圧倒的な強い信念に打たれます。
そもそも知らなかった。UDの意味とか、教科書体の本来の役割が。読みやすいフォント、くらいに思ってた。
UDで、デジタルで、教科書体であることが、どんな意味を持ちそれを開発するのがどんなに困難を極めるか・・・。
まず「UD」は、ユニバーサルデザインの略なのだけれど、どんな人にも等しく機能するデザインが求められる。特に文字は単に読みやすさというレベルではないところにも課題がある。文字を読むことに困難を抱える人のことを「ディスクレシア」と呼ぶことがあるが、この性質を持った人はひとクラスに2,3人はいる(人口の約7%)と言われるほど実は身近な存在だ。
自分も、文字を読むのがすこぶる遅くて、音で聞くほうが楽なのだけどディスクレシアの性質がわずかにあるような気がしている。
性質と言っても様々で、文字がぼんやりかすんでしまう、文字の尖った部分に恐怖感がありストレスを感じる、文字を絵として認識してしまい、うまく読めない。などなど。例としてカタカナの「シ」がどうしてもスイカの絵に見えてしまうというのが出てくるのだけど、なるほどなと思った。いちいち別のモチーフが先に見えてしまったら文章を読むのは困難だろう。
そして、こうした文字を読むのに困難を抱える人達はどうしても学校教育の中で遅れていってしまう。勉強のできない子というレッテルを貼られてしまうのだけど、多くの場合、文字が読めないだけで基本的な知能に差はなかったりする。学習機会さえあれば(音声読み上げによる学習など)問題なく学んで成長していくことができるのだ。筆記よりもPCによるタイピングの方がうまくできるという子もいる。
そこで、彼らにとっても、誰にとっても、読みやすい書体を開発するためUDデジタル教科書体のプロジェクトは立ち上がった。実際に障害を持つ方々に見てもらい、読みやすさの確証(エビデンス)が得られるまで手直ししていく。明朝体の横線が細かったり、先が尖っている特徴をなくし、視認性を高めたり、少しでも大きく見せるために、文字の中の空間を広く取る工夫をすることで、既存の書体よりも明確に読みやすいという揺るぎない成果を獲得する。すごい。
次に「教科書体」ということなんだけど、これが思いのほか、難易度が高いものだった。まず教科書というだけあって、教育の現場で使われることを前提とした書体ということになる。子供に文字を教える時、書き順や筆の動きが説明できる形をしていなければならない。一般的に、汎用的な書体は実は文字の形状を省略したり、止めはね等の細かい部分が再現されていなかったりする。(いまあなたが見ている文字もきっとそうだ)小さなサイズでも潰れないようにするためだが、これは子供に文字を教える際には適さない。ちゃんとそういうことを検査する機関があり、はじかれてしまう。
UDとして読みやすく、さらに教育に適した形状を持ち、さらにデジタルという、スクリーン上のドットで表されても潰れないことを兼ね備えた奇跡の書体。それがUDデジタル教科書体なのである。そりゃ開発に8年もかかるわ。第一水準の漢字、2,965字もあるんだぞ。
そんな膨大な作業の上で書体デザインがほぼ完成に近づいた時、現場の教育者の集まりに見せに行くと、「木辺のはらい、我々はこう教えてない・・・」という一言をうけ、そこから木辺のある漢字全てを直すことになる。とか。気の遠くなるような手間をかけて、情熱をかけて、ついに完成するUDデジタル教科書体。なんかもうちょっと、泣けてきちゃって。こういう本では珍しいと思うんだけど。泣いちゃうやつこれ。
とある、障害を持つ子たちのいる教育・就労支援施設で、ディスクレシアの小学生が使う教科書をUDデジタル教科書体にかえてみたところ、一人の少年が「これなら読める、おれ、バカじゃなかったんだ」って言うんです。そこにいるスタッフみんなが胸を突かれて。泣いて喜び合うんですよ。
そうだよ!君は文字が読みにくいだけでバカじゃないんだ!ちょっと苦手なことがあるだけで、素晴らしい可能性を持った、価値ある人間なんだよ!って、言ってあげられること。それが、この書体が実現させたことだ。
なんて価値のある仕事なんだろう。それこそ、一生をかけて打ち込むのにふさわしい。筆者を中心に、開発に協力した研究者や、教育者や、障害を持った方たち、多くの人間が魂を込めた、素晴らしい仕事が、ついに完成する。
そういう物語としても読めるし、ユニバーサルデザインの勉強にもなる、とても良い本でした。
デザイナーだったら心臓撃ち抜かれるかもしれない。こういう仕事、ひとつでも残せたらいいよな。
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