あらすじ
私は風呂無しアパートに住む、高校の倫理教師。サチコが、突然アパートに押しかけてきた日から、私は堕ちはじめた。入浴料二千五百円、サービス料一万二千円の店で働く痩せたソープ嬢。手首には無数のためらい傷。2人の奇妙な共同生活の中で、セックスと暴力だけが加速していく。その果てにあるのは? 人間存在の深奥を見据えて深い感動をよぶ傑作小説。「笑い、怒り、おぞましさ……これほど感情を翻弄された小説は久しぶりです」と山田詠美氏激賞の、戦慄の芥川賞受賞作!
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Posted by ブクログ
第129回芥川賞受賞作。
いやあ〜かなりグロテスク。芥川賞や文学というものの懐の深さを再確認。ほんと強烈。生半可な気持ちで読んだら後悔するかもしれない。
選考委員の石原慎太郎が『多くの国民がデフレとはいえなんとなく満ち足りた錯覚の内にある時代に、逆に妙なリアリティがあり、読む者を辟易させながら引きずっていく重い力がある』と評したように、本当に重く重く引きずり込まれた。
あらすじ。
物語の主人公は、高校で倫理を教える25歳の平凡な教師中岡慎一。アパートで独り暮らしをする慎一の前に、半年前に知り合った23歳のソープ嬢サチコが現れる。サチコは慎一のアパートに入り浸り、昼間は遊び歩き、夜は情交と酒盛りの日々を送る。
サチコの夫は刑務所に服役中で、ふたりの子どもは施設に預けたままだが、詳しい事情は明らかでない。慎一はサチコを伴い車で四国に旅立つが、幼稚な言葉を使い、見境なくはしゃぎまわり体を売るサチコへの欲情と嫌悪が入り交じった複雑な感情は、慎一の中で次第に暴力・殺人願望へと変容していく。慎一は、自身の中に潜在する破壊への思いを、カマキリに寄生するハリガネムシの姿に重ね合わせる。
感想。
面白い、との一言ではすますことのできない強烈な読書体験。特に主人公がサチコの傷を縫うシーンと、最後の工事現場でのシーンは一生忘れられない描写だった。自分の中にハリガネムシのように寄生していた暴力性をあくまで客観的に理解し、それでも止めることができない主人公は積極的に堕落しているようにも感じられた。自ら人の道を外れてしまった自分がどのような状況になり、どんな感情を抱くのか試したいという人間の怖さが見えた。自分やばいな、と思っても、普通は実行できない。
Posted by ブクログ
濃厚な描写 文章の推進力。
素晴らしい。これぞ文学。
でも2度と触れたくない。
すでにリアル本棚からは処分しました。
強烈です。芥川賞受賞作品。
Posted by ブクログ
平成15年上半期芥川賞受賞作。カマキリに寄生してたハリガネムシと自分に潜む欲望を重ねた作品ていうかもうグロくてウゲーの連続だった。
教職の主人公と底辺女の話。主人公が自分のSに目覚めるんだけど、これって他人事じゃないというか誰でも少し潜んでる願望だと思うからなおさらウゲー見たくねぇだった。覚醒させないで。
底辺女のインパクトもすごかった。シャブ中のソープ嬢で子持ちで旦那がムショに入ってて「だじょー」とかいう変な喋り方とかウサギ面とかリアルに浮かんで怖かった。
Posted by ブクログ
倫理の高校教師が風俗店で働く女性と出会い、色々あって堕ちに堕ちていく、お話。エロ!暴力!グロ!胸糞悪い!がずっと続く。
特に救いがあるわけでもなく、顔をしかめてしまう描写もあるんだけど一気に読んじゃう。堕ちる勢いがすごい。うわぁ……うわぁ……ってなりながら読みました。
Posted by ブクログ
こういう事がしてみたかったのだと、この時初めて気付いた。人間の肉体を思い通りに切り刻みたいという欲望を、ハリガネムシのように体の中に飼っていたらしい。(97)
高校教諭の慎一は、ソープ嬢のサチコと親密な仲になる。サチコは不完全な生き物に見えてもそれが完成体で、恐らくどんなに酷い事をされても「平気だったにゃ」と笑う。
ハリガネムシのように寄生している自分の欲望を、この不完全で完全な生き物にぶつけたいと思う。この欲望が暴れるたび死にたくなる自分も確かにいるが、「私」は生に抗えずにいた。
個人的な話だが、この作品は私が私小説風の純文学にどっぷりと浸かるようになったきっかけであり衝撃であった。高校生当時の私にはとても刺激的で脳内を掻き回されたのをよく憶えている。
そして私もそこで生きたいと思ったのだ、そこがどんな闇を孕もうと。