あらすじ
第163回直木賞受賞作! 犬を愛するすべての人に捧げる感涙作
傷つき、悩み惑う人々に寄り添う一匹の犬は、なぜかいつも南の方角に顔を向けていた。
2011年秋、仙台。震災で職を失い、家族のため犯罪に手を染めた男。偶然拾った犬が男の守り神になった(男と犬)。壊れかけた夫婦は、その犬をそれぞれ別の名前で呼んでいた(夫婦と犬)。人と犬の種を超えた深い絆を描く感涙作。解説・北方謙三
「少女と犬」を文庫で初収録。
※この電子書籍は2020年5月に文藝春秋より刊行された単行本の文庫版を底本としています。
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Posted by ブクログ
途中は長いなと感じたけど、読者に媚びない書き方が私は好きだったし読みやすい、感情移入しやすかった。自然なカキカタなのに、ドキドキハラハラした。
人間の前面に出てしまう欲望。でも、誰もが持つ奥底にある優しさ。身勝手さ、愛情。
終わりも淡々と終わっていって当たり前のことだと言わんばかりの淡々ぶりだった。
犬は人より寿命が短いというけれど、決してそうは言い切れないなと感じさせられた。そして、運命ははなから決まっている、と。ただ、何かの縁で、後押しでそれは変わることができるのだということも言っているような気がした。
とにかく、動物、犬の力はすごい。
Posted by ブクログ
映画とは内容結構違っていた(小説が原作)
最後の解説にもあるけど、連載短編集っていうのは本当に納得できる。多聞の震災からの一生を追っているように見えるけど、各章の始まりは人間が何かをしていて、そこに多聞が現れるという構成。その構成がより人間の人生の中の多聞の部分だけを切り取っているように見えるのではないか。
Posted by ブクログ
連作短編集というのだろうか。先が気になって一気に読んだ。1編1編がとても胸に迫る。「老人と犬」で、多聞は死を嗅ぎつける、とあって、まさにそうなのかもしれない。最終章の「少年と犬」で多聞がなぜ西に向かっていたのかが明かされる。ラストは胸が締め付けられる。奇跡のようなできごとではあるが、物語に身を任せて読んだ。「不夜城」の馳星周とは全然違う作風だが、人間の描き方が真に迫る。もう一度、最初から読みたいと思う作品だった。思わず犬に会いたいとか感謝の念が湧き上がってくる。2年以上積ん読だったのだが、もっと早く手に取るべきだった。
Posted by ブクログ
東日本大震災で飼い主を失くし、一番会いたかった少年の元へ5年かけてたどり着く物語。
多聞は賢いだけでなく、思いやりをもった犬だなぁと。
様々な人に出会い、苦しんでいる人、悩んでいる人に寄り添って希望を与えて進んでいく。
犬が大好きで、言葉は話せなくても伝わるものはあると自分自身感じていて、共感できる場面がたくさんありました。
どのストーリーもグッとくるのですが、最後の章は涙が自然と込み上げてくる。見たこともないのに、映像が頭の中に流れてくる感覚。とても引き込まれました。
Posted by ブクログ
最初短編集かと思って後味の悪い終わり方にヒヤッとしたけど、連作短編集でちゃんと多聞のその後が出てきて安心した。
出てきた人が次々と亡くなっていく話が続く中で、少女と犬がハッピーエンドで良かった。
多聞は最後に身を挺して光を守らないといけないって知ってたから、旅の道連れの人たちのことも慈しんでたけど助けることができなかったんじゃないかなぁと。助けられないならその人生を良きものにしようと、限られた時間で精いっぱいに寄り添ってたんじゃないかな。
Posted by ブクログ
言葉は分からなくても人の心を汲み取る力が犬にはあるのかなと思った。
短篇ごとに、人が死ぬ描写が突然あったり、あっさり死んでしまっていて先が気になった。
最初はハッピーエンドを想像していたけど、読み終わったら全然そんなことなかった。
思っていたよりも悲しい最後だった。
Posted by ブクログ
ある一匹の迷い犬が、さまざまな人間たちのもとを転々としながら、本当の飼い主のもとを目指す旅の記録です。
そしてその過程で、人間たちが抱える心の闇に、静かに光を灯していく。
犬は言葉を話せないけれど、その存在自体がまるで「救い」のようだった。
問題を抱えた人々が、犬とふれあううちに少しずつ心を開き、過去の罪や悲しみに向き合い、前向きに生きようとする姿がとても感動的だった。
だが、最初の3話ではその仮の飼い主たちが皆、最後には命を落とす。感動とともに残酷な結末が続き、「これはもしかしてブラックユーモアの小説なのか?」と疑ってしまうほどだった。
犬は、ただ癒しを与える存在ではなく、どこか遠く南西の方角をじっと見つめる描写が繰り返される。
そのたびに、読者である自分も犬の心の奥底を想像してしまう。
「きっと会いたい人がいるのだ」と、仮の飼い主たちが気づき、犬を放つ場面には、優しさと寂しさが交差していて、胸が締めつけられた。
後半の4話、5話では、人が死ぬことはなくなるが、それでもやはり別れが訪れる。
どんなに絆が生まれても、犬は次の誰かのもとへと向かっていく。
それはまるで、すべての人の心を少しずつ癒しながら、最終目的地へと向かう“旅人”のようだった。
そして、最も心に残ったのが7話。
盛岡から熊本まで、信じられない距離を歩いてきた犬が、ようやく子どもと出会い、幸せに暮らせるかと思った矢先、熊本地震が発生し、子どもをかばって命を落としてしまう。
あまりにあっけなく、あまりに切なかった。
せっかく長旅の末にたどり着いたのに、なぜこんな終わり方をするのか。
やるせなさが胸に残った。
それでも、この犬は確かに多くの人の人生に意味を与え、心を救い、自分の命と引き換えに最後まで人間の傍に寄り添った。
その姿に、言葉では表せないほどの尊さを感じた。
全体を通してとても読みやすく、そして心を動かされる一冊だった。
生き物とのつながり、別れ、思いやり、そして人生のはかなさについて、深く考えさせられる物語だった。
Posted by ブクログ
震災で飼い主とはぐれてしまった犬と、その犬と出会った人々の物語。
ウ~ン…
いくら多聞が賢いからといっても、色々と無理がある。
ここで言う多聞の賢さは、もはや警察犬レベル。
「老人と犬」まではまだ良かったが、最終章「少年と犬」で一気にシラケた。
とは言え、読みやすかったのと犬が好きなので、このスコアを付ける。
Posted by ブクログ
最初、震災で行方不明になった犬と人々のほのぼのした温かい話かと思って読み始めたのですが、全く違いました。
それぞれの話が死という重いテーマを抱えていて、ほのぼのではなかったです。
それと話の内容が特殊な設定が多く(犯罪者だったり、娼婦だったり)、日常生活をベースにしているのに自分が経験したことがない状況ばかりだったので現実味は欠けていた気がします。でもフィクションとしてはとても楽しく読めました。
あと、作中で「あの日あの時あの場所で」という表現が2回ほど出てきますが、あれは小田和正さんのあの有名な曲が参照されているのか個人的に気になりました。