あらすじ
おれはあなたに初めて会った時に、見つけたと思ったんです。
物静かで人見知り、本の中でしか恋を知らない小鳥は、ひょんなことから継いだ古書店ではじめての恋に出会って――。
慕っていた店主・松本の入院でバイト先の古書店「夕海堂」を継ぎ三代目になった小鳥。そこに、初代店主の孫である宗一が訪れ、小説の続きを買う口実で頻繁に通うように。季節が深まるにつれ二人の関係がゆっくりと進む中、小鳥は宗一が買っていく本に初代店主と松本の叶わなかった恋の思い出が残っていることに気付く。夕海堂に残る恋愛の記憶と交差するように、小鳥はしだいに宗一への想いを自覚して……。
YANAMi・装画
電子書籍書き下ろし、限定配信!
感情タグBEST3
とても静かなおはなしです。
東京のど真ん中で、楽園のように佇む古書店での物語。
師匠の様な店主から店を引き継いだ小鳥くん。一人静かに細やかに暮らしていた。そこへ、かつての店主の孫だと名乗る人物が来店する。宗一と名乗ったこの人は、先先代からこの店のことを聞いていたと言う。まるで楽園の様だったと。
小鳥と宗一の静かな交流は、やがて少しずつ形を変えていく。お互いを大切に想いながらゆっくりと進む関係が、本当に大切な壊れモノのようで、とても優しい気持ちになった。
先代と先先代の密かな想いを含んで、2人がいつまでも一緒にいるのだろうなと、読み終わった後も感じてしまう、そんなお話。
あまい
宗一(28)×小鳥(24)
とらのとら先生の文章は本当にその場の空気が伝わってくる。
宗一と小鳥の二人がはじめて会う場面も、そこそこの頻度で宗一が訪ねてくる期間も。恋愛感情すら知らない小鳥は当然、宗一のことが好きかも――なんて考えも出てこない。
なのに小鳥のぎこちないような、心を開き切ってないような、気を遣った会話や態度から見える微かな恋の兆しを感じてすごくじわじわ萌える。
まだ好きを自覚してないのに、付き合ってないのに、なんでこんなに何でもない世間話のような会話でもキュンとくるんだろう。
Hシーンで小鳥の放つ「ずっと我慢してたおしっこしてるみたいな気持ちよさ」って表現がエロすぎて、宗一が暴発しないか心配だったw
風景描写が多く、人物の描写が最小限だからか、小鳥のこの発言に宗一はどう思ったんだろうとか、想像を掻き立てられる。
性描写も今までの作品と同じく神がかっていて、Hの始まりから終わりまでじっくり読み込めます。
在り来りな流れや会話じゃないので、読んでいてクドくもないし飽きもしないです。
文学作品みたい
なんとも優しくて懐かしい空気が感じられるような作品でした。
主人公たちの会話もおっとりと穏やかで、緩やかに育まれていく愛がとても綺麗。
こういうのをノスタルジーを感じるっていうのかなとほんわかした気分で、祖父母の家の縁側で過ごした幼少期を思い出ししんみりとしました。
心温まる良い作品です。