あらすじ
忍びは再び輝ける?
いつの間に我らは、ただの警護になっていたのだ?
滝川弥九郎は甲賀忍びの末裔。かつて戦国の世では、伊賀者と並び勝敗の鍵を握る者だったのに、今や日がな一日、江戸城の警護をするために番所に座っているだけ。忍びの技はひっそりと伝えられているが、それを使って何かをなす機会もない。おまけに上がらない禄を傘張りの内職などで補わなければならぬ始末……。
大人気シリーズ「しゃばけ」の著者による軽快な忍者もの
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Posted by ブクログ
時は江戸時代中期。世はまさに天下太平である。
そんな太平の世とあっては、かつては影の軍団として戦を左右する存在だった忍びも、今やその任を解かれ下級武士としてお城勤めと内職に精を出す毎日だ。
鉄砲組となった甲賀衆も、江戸城の大門警備という単調で退屈な仕事に就き、不遇をかこつだけの日々を送っていた。
だがある日、本来の忍びとしての勤めに戻れるかも知れない千載一遇のチャンスが、甲賀衆に訪れたのだった。
江戸城勤めが本業になってしまった忍びの者たちの悲哀と奮闘を描くお仕事時代小説。
◇
その日、滝川弥九郎は江戸城本丸御殿の傍らで立っていた。両の手に持つのは忍具の打鈎であることから、正業たる警備業務ではない。
今日の仕事は職務とは関係ない臨時のものであり、忍びとしての請負仕事なので謂わば副業に当たる。
密かに甲賀衆に持ち込まれた今回の仕事。長から命を受けたのは若手上忍の弥九郎だ。
弥九郎は依頼人である表右筆に顔を向け仕事に取り掛かる旨伝えると、両手の打鈎を使って宙に浮くや否や瞬く間に本丸の屋根の上に姿を消した。 ( 第1章「忍びの副業」) ※全5章。
* * * * *
初読みの畠中恵さん。物語のおもしろさもさることながら、初めて知ることばかりでとても勉強になりました。そのあたりについて少し触れておきます。
まず物語の背景から。
時の将軍は十代家治。八代吉宗のお孫さんです。幼名を竹千代といい、将軍になるべくしてなったことがわかります。
吉宗の治世の名残りで世間は落ち着いていましたが、不穏の種が1つありました。それは家治には後継に相応しい男子が1人しかいないことでした。
もし、その世子に万が一のことがあったなら、紀州徳川家による将軍世襲は途絶えるかも知れないのです。
現在、家治の世子・家基は元服を済ませて西之丸で起居しています。世子とは言え将軍のように御庭番が警護につくわけではありません。広大な西之丸。小姓や書院番だけで家基を守るのは難しい。
そして西之丸天井裏に貼られた呪符まで見つかるに及んで、家基主従の不安は高まります。
必要なのは警護のプロ。でも大奥警備が主要業務の伊賀者は使えない。そこで主従が目をつけたのが甲賀衆でした。甲賀は伊賀と並び、神君家康公の時代から徳川に仕える忍びの雄です。
とりあえず忍びとしての腕を見よう。家基たちは、密かに甲賀衆の技量を試してみることにしたのでした。
さて、その甲賀衆。吉宗が御庭番職を紀州忍群専任にしたため、そのあおりで伊賀者ばかりか甲賀衆や根来衆も忍びの職を解かれ、江戸城内外の警備に回されていました。 大奥を守る伊賀者はともかく、甲賀衆や根来衆の悲哀はとても大きかったようです。
まず、生活が苦しかったこと。
将軍の覚えめでたい紀州忍者が旗本並みの扱いを得ていたのに対し、その他の「元」忍びたちは下級武士として内職に励まねば食べていけない暮らしに甘んじていました。
次に、技の伝承が難しいこと。
一門に伝わる技や秘術。使う機会が巡ってこないため、密かに修業はするもののモチベーションが上がらないのです。
そして、メインストーリーです。
江戸城大門警備が主業務の甲賀衆に、忍びとしてのアルバイトの話が持ち込まれたことで、悲哀の日々から脱するチャンスが巡ってきたのでした。西之丸での世子御庭番が正式に決まれば、甲賀衆は忍びとしてのステイタスを取り戻すことができるのです。
一門の命運を背負い家基を警護するのが、甲賀衆若手上忍の3人です。打鈎使いの弥九郎、曲玉占いの十郎、火薬使いの蔵人。
物語では3者3様の活躍が描かれていて、読んでいて高揚感が味わえるほどでした。
また、甲賀衆と言えば毒使い。
敵の正体を突き止めるため、弥九郎がとっさに相手の手首に毒を塗り込む場面などは、思わずにんまりしてしまいます。
そういった忍びたちの躍動感あふれるサスペンスストーリーが中心ですが、家基を狙うのは誰なのか、甲賀衆が家基に近づくことを喜ばぬのは誰なのか、暗躍する田沼意次の真意はどこにあるのかなど、ミステリーの側面もあって退屈することがありません。
さらに、上巻では明かされなかったのですが、弥九郎には甲賀第1とされる技があるそうなので、下巻がますます楽しみです。
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甲賀忍者、頑張ってるp(^-^)qいろんな人達のどろどろした思惑に剣呑な雰囲気が…(゜゜;)な話のはずなのに、畠中さんの文体のせいか、主要人物の人柄のせいか、のんびりとして優しい雰囲気( ・∇・)
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戦国の世から続く忍者家業。
世は江戸となり、忍者も必要とされなくなってきて…
伊賀・甲賀しか知りませんでしたが、江戸の伊賀など流派が色々あってお家争いに巻き込まれていく忍び達。
くノ一・吉乃の嫁ぎ先も破談となり、その行方も気になります。
誰が毒を盛ったのか黒幕がだれなのか、ハラハラしながらも下巻へと読み進めます。
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幻の第11代将軍と言われた徳川家基に仕える忍びたち。
畑中恵さんは『猫君』で実際の第11代将軍徳川家斉を描いていて、そちらでも家基の存在を丁寧に親しみを持って描いていたのを思い出した。(家斉が家基の存在を敬っていたというのは史実のようですし)
思えば「しゃばけ」シリーズも江戸中期が舞台だし、ほぼ同時代なんですね。
史実として家基の急死が不穏で謎に包まれているからこそ、この物語の中では特に“毒”に対して非常に過敏。だからこそ忍びの存在が良い。
早々に鷹狩りのシーンが出てきてハラハラしました。
若干スロースターターぎみな感触です。タイトル通り忍びたちを主役においてしまいますが、上巻の後半ほどになって、家基の立場、人柄などの描写が入ってくるにつれて、本書は徳川家基の物語なんだと感じる。そこから急に物語に引き込まれてく。そして、下巻の目次を拝見し最終章が「鷹狩り」なの…、、、ますます家基にフォーカスされていくかんじがします。
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江戸時代中盤の忍者の末裔達のお話。悪い意味では無く、巻頭の登場人物紹介のイメージが焼きついて、軽快なストーリーに感じている。続きは読むつもりだ。
後半の展開に期待。
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甲賀の若者忍び3人の活躍話and人間らしい忍びの話
使うことがないだろう技のために厳しい修行を強制された若者たち。内職の日々が一転、西の丸様の護衛の為に実践していくうちに、役に立つ喜びが徐々に向上と繋がっていく
噓と本当が入り混じった会話をする相手との付き合いはしんどいだろうなあ
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畠中恵を初めて読んだのですが、山田風太郎(の忍者もの)が自分の素地に染み込んでいるので、驚き、ワクワク、ケレン味が物足りないまま終わったなあという読後でした。
作風の違いだと思うので、仕方ない。
こないだまでのドラマ大奥と時代が同じだったので(男女は違えど)いろいろイメージしやすかった。
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先人たちの書いてきた忍びに比べ、なんとも控えめな大人し気な忍びたち。そして先人たちの忍びは得てしてエロいが、畠中さんのは全くエロくない。
程よく謎とアクションが混ざった感じ。主人公たちほ飛び切り強くて無双する。でも身分が低い、うだつが上がらない。
小事件をこなしつつ、とばっちりでクビになったところで次巻へ。
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泰平の世となり久しく、本来の働きをする場のない甲賀忍者の末裔が
伊賀や根来とのせめぎあいや城下の企みに巻き込まれていく。
まだ深く世界に入り込めず、下巻に期待。
Posted by ブクログ
甲賀忍者の末裔の3人が技を使って、だんだんと重用されていく様子がおもしろかった。
色々な人にしゃばけを勧められるのだが、シリーズが沢山出過ぎていてこれから読むのもと思っていたところ、同じ作者が書いた別の話があるのを知って読んでみた。どうやって西之丸様を守るのかドキドキしながら読み進めた。
Posted by ブクログ
好きな著者なので。
NINJA。
アメリカのスパイ博物館にNINJAコーナーがあるとかないとか。
そんな人の心をがっつりつかんで離さない「忍者」だが、
それほど期待している訳ではないにしても、何か違った。
日頃の鍛錬のたまもので宙を飛んでるように移動できたり、
長年の知識の集積で毒や病いに詳しかったり、
太平の世となり行き場を失っている、ところまでは良いとしよう。
くノ一の一人が嫁ぐために小遣い稼ぎとか、
傘張りを副業としているとか、
術の一つが占いだとか、笑いを取りたいのかと思いきや、
江戸城内で火薬をつかって吹き飛ばしたり、
鷹狩りに現われた猪をくノ一二人が倒したり、
噂をかき集めたりと一応忍者らしい活躍をしている。
が、詳細は描かれない。
田沼意次の屋敷に忍び込んで話しかけるとか、
見たり聞いたりしたものを信じてはいけないとか今更なことを思ったり、
贈られた酒樽を喜んで飲んでたりとか、
将軍の世子の前で取り乱したりとか、口をすべらせたりとか、
忍者としてはそれはないだろう、と気がそがれた。
(下巻へ)