あらすじ
小島に一人で暮らす元医師のフレドリックは、就寝中の火事で住む家も家財道具もすべて失った。その後警察の調べで火事の原因が放火であったことが判明、フレドリックは保険金目当ての自作自演だと疑いをかけられてしまう。ところが、火事はそれだけではおさまらなかった。付近の群島の家々が続けて放火されたのだ……。幸い死者は出ていない。犯人の目的はどこにあるのか? 〈刑事ヴァランダー・シリーズ〉で人気の北欧ミステリの帝王最後の作品。CWAインターナショナルダガー受賞。
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Posted by ブクログ
ヘニング・マンケル最後の長編小説。マンケル自身ががんの末期であることを承知の上で書かれた小説と考えて読むと色々と考えさせられる。
本作は「イタリアン・シューズ」の続編(時系列のずれはあるけど実質そういうことだろう)で、主人公の外科医崩れフレデリックは相変わらずのクセが強いちょっと根性がヒネくれたクソジジイである。
家が火災で燃え尽きる場面から物語が始まる。前作のタイトルにもなった、イタリアミラノの凄腕靴職人が作ったハンドメイド革靴も金属製のバックルを残して燃え尽き、それ以外の家財もほぼ焼き尽くされて途方にくれるフレデリック。しかも警察からは保険金目当ての自作自演放火と疑われだす始末。
可哀そうだと思うが、前作や本作での主人公の行動を読むと「バチがあたった」と思わなくもなく(ちなみに主人公は犯人ではない)、それくらい彼の言動はひどい。まぁその非道さがまた読み処でもあるのだが。
色々あって(そこは読んでもらいたい)、「だがわたしは、もはや暗闇をおそれてはいない」と言い切るラスト。フレデリックが言ってると思うと「うっさい、もうええわ」と思うのだが、自分の寿命を悟ったマンケル自身の言葉と考えると、なんだか哀しいような良かったなぁと思えるような。
70歳になった時、あるいは死期を悟った時の俺は、こんなことを言えるのだろうか。「死にたくないし、苦しいのも痛いのもイヤだ」と無様にうなされてるだけのように思うけど…。
Posted by ブクログ
放火犯は誰かというミステリーでもあるが、小島に住む孤独な元医師の老人フレドリックの回想と老人性生活への欲望と娘との関係改善に至る日記でもある。
しかしこの主人公はかなり自分勝手な男で30才も年下の新聞記者へのアプローチには正直気持ち悪さが先に立ち彼女がそれをそこまで嫌がらないのが不思議。作者が男性なので仕方ないのかなあ。
犯人は分かったけれど動機がはっきりわからなかったのは残念。