あらすじ
戦時中に消息を絶った知人の情報を得るため巣鴨プリズンを訪ねた私立探偵のフェアフィールドは、調査の交換条件として、囚人・貴島悟の記憶を取り戻す任務を命じられる。捕虜虐殺の容疑で拘留されている貴島は、恐ろしいほど頭脳明晰な男だが、戦争中の記憶は完全に消失していた。フェアフィールドは貴島の相棒役を務めながら、プリズン内で発生した不可解な服毒死の事件の謎を追ってゆく。戦争の暗部を抉る傑作長編ミステリー。
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Posted by ブクログ
「メリークリスマス、ミスターローレンス!メリークリスマス!」
上記のセリフは映画「戦場のメリークリスマス」のラストシーンですが、本小説は明らかに戦メリを意識していますね(笑)
本小説のラストは戦争が終わって20年が経っており、社会情勢としては「戦後」がようやく一段落して次のステージに歩みかけてる時期なのだとおもいます。
その象徴がキョウコなのであり、キョウコに「メリークリスマス!ミスターフェアフィールド」と言わせるあたりは作者(というより兄イツオが述べていた)の「自由と責任」を体現させているようで心地よかったです。
小説の中の謎解きである、連続自死案件、キジマの戦犯容疑それに伴う記憶喪失案件、従兄弟の捜索案件などを追いながら、
日本の戦争責任のあり方や民意責任のあり方や、権力の裏側(正当に制御しない権力は暴力になるという考え方)を示しておりとても面白かったです。
Posted by ブクログ
読み応えあった。
「時代劇は大した内容じゃなくてもそれなりに面白くなる」と映画関係の誰かが言っていたけど、終戦直後の日本という背景だけでも面白い。disっているわけでは無いです。
エドワードの相棒も、キジマもイツオも救われなかったけど、後味の悪さは感じなかった。様々な人の思惑が交錯して複雑になった事件の真相の扉が一枚一枚開いていく爽快感が上回ったのかも。
「キジマにとっての真実」は、5年前の自分では思いもよらないようなサディストの一面が戦争によって引き出されたということ。戦争とは恐ろしいものですね。
Posted by ブクログ
東条英機ら第二次大戦の戦争責任者たちを収監した巣鴨プリズンで起こる不可解な事件の謎に迫るミステリ。
巣鴨プリズンは実在したけど、本作でのポジションはあくまで舞台というだけ。戦争の功罪を読者に問いかけてきたりはしないので安心して読めます。
戦時中に消息を絶った知人の情報を得るため巣鴨プリズンを訪れた主人公・私立探偵フェアフィールドは、調査の交換条件として、囚人・貴島悟の記憶を取り戻す任務を命じられます。捕虜虐殺の容疑で拘留されている貴島は恐ろしいほど頭脳明晰な男だが、戦争中の記憶は完全に消失。フェアフィールドは貴島の相棒役を務めながら、プリズン内で発生した不可解な服毒死事件の謎を追うが…。
歴史ものとも言えるけど、それよりは純粋に推理小説として楽しみたい作品。