あらすじ
明治十年の創立から東京大学は常に学問の中心としてあり続けた。大震災、戦争、大学紛争、国際化――その歩みはまさに日本の近現代史と重なり合う。時代の荒波の中で、歴代の総長たちは何を語ってきたのか。名式辞をめぐる伝説、ツッコミどころ満載の失言、時を超えて紡がれる「言葉」をひとつずつ紐解く。南原繁から矢内原忠雄、蓮實重彥まで、知の巨人たちが贈る、未来を生きる若者たちへの祝福と教訓!
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Posted by ブクログ
常に世の注目を浴びる東京大学の式辞集です。
「今年はどんな内容を語ったのか」とニュー
スになることは多いです。
そんな過去の式辞が一冊の本としてまとめら
れています。「東京大学歴代総長式辞告辞集」
です。
東京大学創立120周年を記念して刊行され(
1997年)、それまでの式辞をまとめたもので
す。
そこでは19世紀末から20世紀末までの内容
に限定されますが、時代背景を密接に関わる
式辞内容に驚かされます。
この本ではそれらの式辞を紹介して、時代と
共に移り変わる式辞内容を紹介しています。
日本の頭脳の頂点でもある東京大学の総長で
あっても、戦前戦中はこういう考えだったの
か、と改めて時代の勢いとは凄まじいと感じ
ます。
ただ、時代を経て現代に通じる一貫された
メッセージは「ノブレスオブリージュ」です。
得た知識、知見を広く世に還元することに務
めなさいと説いています。
背筋が伸びる一冊です。
Posted by ブクログ
第二次世界大戦中、東京大学の総長であっても自由に発言することが許されず、戦争を賛美するような式辞しかできなかったというのが、まず驚いた。それもあってか、戦後の総長の「軍閥・超国家主義者等少数者の無知と無謀と野望」によって推進された物であったと戦争を一刀両断しているのは気持ちよかった。
矢内原総長の旧制の学生と新制の学生の対比も面白かった。どちらも、東大生という日本のトップレベルの学生たちに対し、一長一短を言っているところがとくに。また、寛容の精神にも触れており、現代にも通じる話もあったが、筆者が言うように寛容の精神が大切ではあるものの、寛容しすぎのいまの社会もどうなのかと思ってしまった。