あらすじ
君はすっかり読んでしまったら、この本を捨ててくれ給え。そして外へ出給え――。語り手は、青年ナタナエルに語りかける。「善か悪か懸念せずに愛すること」「賢者とはよろずのことに驚嘆する人を言う」「未来のうちに過去を再現しようと努めてはならぬ」。二十代のジッドが綴った本書は、欲望を肯定し情熱的に生きることを賛美する言葉の宝庫である。若者らの魂を揺さぶり続ける青春の書。
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Posted by ブクログ
地の糧
著:アンドレ・ジッド
訳:今 日出海
出版社:新潮社
新潮文庫 シ 2 5
見城徹氏の本を読み返していると、「地の糧」のおすすめがあったので、手にとりました。2023年に再版があったことも、調べていくうちに知りました。難解な書であるかとおもい、ちょっとたじろきました。
あとがきに、欲望解放の書とあります。主人公の心境が変わっていく姿、そして、旅。旅に出るたびに、主人公は変わっていく。
頭で覚えたものを忘れる旅、ナタナエルには、あらゆる書を焼いてしまえといっている。過去の自分から離別ととらえました
糧よ、私はお前を待ち望んでいる、と3度叫んでいる。
飢えは、半端なところで、たたずんではいけない。満たされなければ黙らない
糧とは、欲望を満足するためのものだ
ロンド、バラードといった、詩が各所にでてくる、それが、メナルクの詩からとおもう
病気になった。そこで旅に出た。そして、メナルクに会った、とある
私の愉しい回復とある ここで、主人公は2度目の変化をとげる
イタリア、マルタを旅行しているようだ
旅からもどったら、人がやっていることをやってみたくなった、それは、なしとげるためではなく、ただやりたかったからだ
それから15年間、守銭奴のように金をためて、勉強をし、いろいろなことを成しとげるようになる
そして、いろいろな詩、ロンドに出合って、再び旅にでる
疲れを得、恐怖を感じ、そして眠る
その結果として、主人公は、放浪者にであって、自らも放浪者となる、
今度は、ノルマンディ、グラナダ、フランスからスペインのあたりをまわったようだ。
ナポリ、アルジェリア、船で地中海を回る
眠れない夜、不眠。そして、渇きを得て、渇望に泣き出しそうになる。
恐ろしい緊張、激しい精神統一、肉体の弛緩。そして、眠り
眠りとは、死を示唆するものなのだろうか。
登場人物
ナタナエル ヨハネの福音書に登場するイエスキリストの弟子の一人、神の使いという意味か。主人公は常に、ナタナエルに対して、話しかける。主人公の良心かもしれない。
メナルク ナタナエルに対する存在、ナタナエルにはあえていないのに、メナルクには会ったとある。羊飼いの詩人。メナルクこそが、地の糧ではとおもえるし、主人公の良心:ナタナエルに対抗する心、それも子供ごごろのような。
目次
第1書 久しく眠っていた私の穏やかな幸福は目覚める ハフィズ
Ⅰ
Ⅱ
Ⅲ
第2書
第3書
ヴィラ・ボルゲーゼ
アドリアティック海(午前3時)
フィエソオレの掟
羅馬、モンテ・ピンチオ
アマルフィ(夜更け)
シラクサ
チュニス
マルタ
ブリダ
甲板にて
第4書
Ⅰ
Ⅱ
Ⅲ
Ⅳ
第5書
Ⅰ
Ⅱ
Ⅲ
第6書 ランセウス
第7書 アミンタス、膚の黒きが何ならん ヴィルジル
第8書
結論風の賛歌 M・A・Gに
1927年版の序
あとがき
ISBN:9784102045145
出版社:新潮社
判型:文庫
ページ数:224ページ
定価:550円(本体)
1952年03月31日発行
1981年06月30日35刷
2023年04月05日新版発行
2023年07月15日4刷
Posted by ブクログ
再読。前回は感想を書いていませんでした。うっかり。
ナタナエルに語りかける場面から始まる。
彼の体験談(旅の話)やそこから辿り着いた思想をナタナエルに伝える。
旅に行ったことが瑞々しく鮮明に表現されている。様々な種類の果実が出てきた。食べると酔う熟れた葡萄とか。甘いジャム食べたり。美味しそう。明日の朝は葡萄のジャムをパンに塗ろう。
彼は知覚過敏なのでしょうか、果実が冷たくて歯が痛いと言っていました笑笑(p94)違ったらごめんなさい笑
ただ、地名の名前が書かれていても私は分からないので、その都度検索をして、追体験出来るように工夫しなければならなかった。また、知らない漢字も多く難しかった。勉強になる。
ナタナエルに自己投影すると、読み方も変わってきて面白い。あとがきも読むと理解が深まり良い。
思想書なので、この詩的な文から、人生観を学ぶことが出来る。
彼がネガティブな考えを吐露する場面もあるが、少し心配性な気もする。それほど過信していないということだろうか。
ポジティブな場面、特にナタナエルに対して語りかける言葉はとても力があり、前向きにさせてくれる、所謂名言が沢山あった。
感動した文を五つ記しておきます。
「未来のうちに過去を再現しようと努めてはならぬ。各瞬間ごとに類いなき新しさを掴み給え」
「一切の物が大切なのは、我々にとって大切なのではなく、物自身にとってなのだ。願わくは君の目が眺められた物であるように」
「果実は風味で包まれる。また辛抱強く生命の喜びで包まれる。果実の肉は、愛の味深い証し」
「それは真珠のように煌かしくもなく、水のように艶々しくもない。けれども小径の砂礫は光るのだ。私の歩む木の下道に光の優しい歓待」
「燐にその光が添うように、我々の行為は、我々に付き従う。我々の行為は、真に我々に光輝を添えはするが、それは我々の身を擦り減らしてでなければ輝きはしない」
Posted by ブクログ
小説、という括りになっているけど、哲学書ですね!
かなり抽象的で難解な表現が多いけど、それだけに想像や思考を掻き立てる
そして、自分にしかないメッセージを受け取れる
「書を捨てよ、街を出よう」
答えは常に自分の内側にありますね!
Posted by ブクログ
物事や景色の捉え方、感じ方の言語化がとても豊か。
全体として理解が追いつかないところが多いが、印象に残るフレーズが多い1冊だった。
その一部より
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欲望の対象の常に偽りがちな所有よりも、いかなる欲望にせよ、欲望自体の方が私を豊かにしてくれた。
そして素晴らしく美しい。そのくせなぜこんなに美しいのか、君に説明ができない。
わが身に毒虫を飼う喜び。
人生は我々にとっては
野生的で味の変わりやすいものだった
そして死の上にようやく花が開きかけたように幸福がここにあるのを私は愛惜する。
Posted by ブクログ
解説にある通り「欲望を肯定し情熱的に生きることを賛美する」「青春の書」であるとは感じた。そういう先入観があったからなのかもしれないが、書物に埋没すること勿れ、自分の足で歩き・目で見・耳で聞いて人生を体感せよという魂の声高な叫びが、そう感じさせてくれた。
1927年版の序でも指摘されているように、自戒的な響きもあるように思った。しかし、そんな自分の言葉も捨てるように促す姿は決して説教臭さを感じさせなかった。何よりも大切なのは自らと向き合い、"置きかえのきかぬものを、身をもって創造"することなのだ。
……という具合に、書物の言葉を引用し、無言で頷くのも程々にした方が良い。
難解に感じる部分も多くあったが、気になるフレーズも見つけられた(読書途中で記録が一度消えてしまったため、全ては残せていない)。豊かな比喩表現と情景描写、内面の光も闇も解放するような文章には力があった。
特に、自然と人間を見つめる視点は現代にも通じるような警告を感じた。
"人間の叡智には、自然の河川がもつような清冽さがない"とあるが、これは人間の驕りを批判していると共に自然の中では弱いことも感じさせる一節だ。淡々と人間の非力さを嘆いているようにも、もう諦めているようにも感じる。
また、「保有」を"形態の渦巻"と表現している箇所もあり、何かを所有することに対する懐疑的な見方も窺える。この書を知るきっかけとなった「チノカテ」(ヨルシカ)の歌詞でも示唆されているように、やはり所有の悪性について記されていた。開かなければ停滞するということではないのだろうか。書物も知識も土地も家庭も……所有することによってそれらに執着し、それらに自らを埋めてしまう危うさがあると思う。広く周囲を感じ、考えていきたい。
Posted by ブクログ
なんだこれは。全然分からん。全く分からん。
ジッド、外国人、訳本、だからなのか?
あとがきに病気のころ書いたとあったが、それだから?
しかし、ロングセラーであり、ベストセラー。俺でさえ本の名前を聞いたことがある。歌にもなってる。
なのに、全然分からん。
なのに、響く一文が二つあった…。
Posted by ブクログ
ヨルシカコラボカバーが出たので購入したうちの1冊。
今読めてよかったと思う。目で見たものを大切に愛でる気持ちは持ったまま、この本をそっと棚にしまって、この本の思想を捨てて外へ放浪してみたいと思った。
Posted by ブクログ
「君はすっかり読んでしまったら、この本を捨ててくれ給え」
「もう今は私の本を投げ棄ててくれ。そこから離れて自由になってくれたまえ。」
最初と最後に繰り返される。
この本を含めて誰かの思想に囚われることなく、自分の目で世界を見て、自分自身を探求し、生きていきなさいと勧められている気がした。
中身はあまりよくわからなかったのだけれど、みずみずしい世界が描かれていたような気がして、不思議と読むのは楽しかった。
Posted by ブクログ
難解な箇所が多いが、現代の自己啓発書にもつながる思想が見受けられた。読んだ知識ではなく、素足で感じた知識こそがその人の糧になる。でも読むことがそれの始まりでもある。未来に過去を再現しようとしないこと、不幸の在りどころは覚えていたい。