あらすじ
――「選択と集中」、そして「効率」を求める政策が研究力を低下させ、大学を破壊する。日本の学術に輝きを取り戻す必読の書。山極寿一・京都大学長
「平成・失われた30年」をもたらした「科学研究力の失墜」はなぜ起こったのか?
「選択と集中」という名の「新自由主義的政策」および「政治による介入」の真実、および疲弊した研究現場の実態とは?
毎日新聞科学環境部が渾身のスクープ!
かつて日本は「ものづくり」で高度経済成長を成し遂げ、米国に次ぐ世界第二の経済大国になった。しかし「ライジング・サン」「ジャパン・アズ・ナンバーワン」と言われたころの輝きはもはやない。日本メーカーが力を失い、経済が傾くのと並行して、大学などの研究も衰退している。政府による近年のさまざまな「改革」の結果、研究現場は疲弊し、大学間の格差も広がった。どうしてこんなことになってしまったのか。それなのになぜ政府はますます研究現場への締め付けを強めようとしているのか。そうした問題意識から、われわれの取材は始まった。(本文より)
※こちらの作品は過去に他出版社より配信していた内容と同様となります。重複購入にはお気を付けください
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Posted by ブクログ
大学で理系学部を専攻していたため、今の日本の科学力の低下は憂いている。本書ではこれまでの政策や関係者のインタビューから、日本の科学力の凋落を分析している。
特に基礎研究をおざなりにし、出口のある研究に注力する今の姿勢では、今後さらなる科学技術の発展が見込めないため、タネを撒くように、基礎研究にも力を入れてほしいと思う。
Posted by ブクログ
毎日新聞の連載記事が元となった一冊。取材が基本なので多くの関係者の主張が紹介されるに留まるが、この20年の日本の科学界の歩んできた衰退の経緯を振り返るのにはとても便利。いわゆるPDCAのCの部分だけど、日本には基本的にこのCは無くてPDのみのドードー巡りが続いているのかもしれない。官僚の無謬性の原則というやつかもしれない。犯人捜し、責任追及をしても仕方ない(本書では何となく犯人が特定されている)が、この20年の敗戦への道を精査して、どうしてこうなったかを理解することは大事だろう。
この本を読んで、「(官邸)トップダウンによるスピーディーな意思決定、効率化」って、要は、社会主義体制、共産党独裁的に近づけていこうってことだなって感じた。いくら優秀なトップによって目の前の短期的な問題の解決が達成されても、長期に渡れば権力が腐っていくのは歴史の教えるところ。上の目ばかり気にして、やがて誰も何も考えなくなってしまう。
1995年の科学技術基本法のスタートから、その後の科学技術政策は全て、経済発展のための科学・技術という発想だったようである。科学者・研究者がしだいに意思決定から排除されていき、今やすっかり経済・産業政策に成り下がってしまった。内閣府に集められた”有識者”の年配の方々らが、現場も知らずに自分らの経験で教育”改革”を主導してかき回しているのは、昨今の大学入試改革の混乱でも周知の通り。
また、国立大学法人化と基盤経費削減は、時期が一緒なのでセットのように見えるが、セットとして始まったわけではなかったようだ(「遠山プラン」での法人化では基盤経費は確保することが付議されていた)。法人化の前から、国の財政難から国立大の基盤経費の削減は議論されていて、法人化によって寄付やらその他の事業による収入源を得る自由を確保するためにも、終盤で国立大自身から手に平を返して法人化を推進した面もあるようだ。