あらすじ
スパイオタクな池上さんが初めて解説。
ロシアウクライナ戦争、米中対立にもつながる現代史の裏側とは?
東西冷戦が終わった時、「これでスパイ小説の書き手は失職する」と言われました。
ところが、米中対立やロシアのウクライナ軍事侵攻をきっかけに「新しい冷戦」という言葉が生まれます。
東西冷戦が終わってもスパイの存在はなくなりません。
むしろITやAIを駆使することで、情報をめぐる争いは一層激しくなっています。
・ロシアがハイブリッド戦を駆使できなかったわけ
・ロシアで神格化するスパイゾルゲの存在
・イランの核施設を破壊する驚くべきサイバースパイ
・スパイランキング上位 北朝鮮のスパイ事情
・日本のインテリジェンス能力はいかほどか
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Posted by ブクログ
アメリカのCIAやソ連のKGBなど、世界の諜報機関が沢山出てきて、それが歴史にどんな影響を与えてきたのか本当に詳しく書いてました。特にCIAについては20世紀に様々な国の内政に影響を与え、政権を転覆等、恐ろしい活動を沢山していたのだなと改めて思いました。それが現在の世界情勢にも繋がっていて、ニュース等から得る情報ももっと分かりやすくなったと思います!後は池上彰さんの知識の多さにはいつも驚かされます。
Posted by ブクログ
池上彰氏によるスパイに焦点を当てた近現代史の解説書です。
第二次世界大戦からウクライナ戦争に至るまで、現在までに明らかになっているKGBやCIA等の活躍やその背景を分かりやすく解説してます。
スパイの活躍についての解説書ではあるものの、科学技術の発展によりスパイという情報収集手段が、サイバー空間を活用した情報収集やインターネット上のSNS等、個人が発信しているものを含む一般に公開されている情報の収集•分析に置き換わりつつあるという指摘が印象的でした。
なお、実話を元にしたスパイにまつわる映画の紹介もあったので、興味が湧いたものは見てみようと思いました。
Posted by ブクログ
表紙のコスプレ(?)からして、半ばギャグに走っているかのような印象を受ける。冗談というワケではなかろうが、どちらかというと、軽めに、楽しく「スパイ」という存在を身近に感じてもらい、理解してもらおうという、NHK「週刊こどもニュース」のお父さん役に戻ったかのようなスタンスで書いているような内容。サクサクと読めて楽しい。
記述の大半が、先の大戦から冷戦時代のスパイ暗躍の黄金時代の事例紹介が多く(ゾルゲや、CIAのダレス長官等々)、かつて30年以上前に、落合信彦本で堪能した内容が盛りだくさん。そのあたりは懐かしく拝読した。
その後の時代、冷戦終了後は、アメリカと中東地域の確執の振り返りは興味深いが、アメリカが凝りもせず世界のあちこちにチョッカイを出しては失敗している事例が炙り出される。例えばビンラディン。
アフガニスタン紛争で反ソ連の抵抗勢力に武器と教育を授け、聖戦だと戦場へ駆り立てたその中に、後年同時多発テロでアメリカ本土を攻撃するアルカイーダの親玉となるビンラディンがいた。
イランのフセイン政権を倒した後、フセイン支持のバース党(アラブ復興社会党)を解散、追放した結果、党員だった警察官、軍の将校が武器を持って職場を離脱、その中からイスラム国(IS)が誕生することになる。
ビンラディン殺害に地元の医師がCIAに協力していた事実が知れると、現地で小児麻痺ワクチン接種をする医療機関関係者=CIAとみなされ、接種が進まず、パキスタンとアフガニスタンでは、今も小児麻痺に苦しむ子どもたちがいるという。著者も、こう記す。
「CIAの罪は大きいと言わざるを得ません。」
本書タイトルの通り、“世界史を変えた”ということだが、アメリカという思い上がり国家の存在が無かったら、あるいは余計なおせっかいをしてなければ、今の世界も違ったものになっていたのだろうなという思いは強い。
そして、昨今のロシア、ウクライナ戦争だ。
現在進行形の事案ゆえに、今の時点で、スパイの暗躍といった裏事情の開陳はさすがに、ない(サイバー戦が展開されているという記述はある)。が、アフガン侵攻の経緯をこんな事例を引いて紹介していることから、現状を推察することは可能だ。
当時、アメリカのカーター政権の国家安全保障問題担当特別補佐官だったブレジンスキーの証言だ。
「アフガニスタンへの反政府勢力への秘密の援助は、ソ連の軍事侵攻より半年も早い1979年7月に始まっていた」
「我々がソ連を軍事介入に追い込んだのではない。だが意図的に力を加え、ソ連がそう出てくる蓋然性を高めていったのだ」
アフガニスタンをウクライナに、ソ連をロシアに置き換えずとも、アメリカが今なにをしているか読めてしまわないだろうか。歴史に学べ、ではないが、当然、今も同じ事が繰り返されていると推測するのは、なんら難しいことではない。歴史は繰り返されるのだろう。
その他、昨今のサイバー空間での諜報活動、あるいは市民でも行なえるOSINT(Open-Source Intelligence)の可能性など、新たな世界も垣間見れて面白かった。