あらすじ
稼業ひとすじ45年.かつて名を馳せた腕利きの女殺し屋・爪角(チョガク)も老いからは逃れられず,ある日致命的なミスを犯してしまう.守るべきものはつくらない,を信条にハードな現場を生き抜いてきた彼女が心身の揺らぎを受け入れるとき,人生最後の死闘がはじまる.韓国文学史上最高の「キラー小説」,待望の日本上陸!
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Posted by ブクログ
読み始めると、映画「レオン」の最初の場面が浮かんだ。真っ黒なカーテンから覗いたのは、銃口ではなく表紙の細い手。主人公に心酔した私は、「死なないでくれ〰️。」と祈りながら一気に読んだ。
Posted by ブクログ
非情であるべき殺し屋のベテランにしては、爪角は感情の揺れが大きすぎて、そんなんで45年もよくやってこられたねぇ…と訝ってしまうけど、それを差し引いても最後まで引き込まれるように読み切ったのは、爪角が自身の生き方にどんな風にケリをつけるのか見届けたいと強く思わされたから…でしょうか。
ここに描かれている爪角は、甘いし、ゆるいし、迂闊だし、そんなんじゃダメでしょ⁈ってツッコミどころはたくさんあります。が、それが老いの結果ということなのだとしたら、人間とはかくも愛おしいものなのか…と思ってしまいました。ノアール小説でこんな風に思うなんて、とても不思議です。でも、自分に置き換えると、57歳で未経験の仕事に採用していただき、落ちた記憶力や、咄嗟のときに全然回らない思考力にガッカリしながらも、なんとか楽しんで働いている自分も、ポンコツだけどけっこう愛おしいじゃん?
老いを常に自覚させられて、厳しい現実をつきつけられる毎日ですが、そんな自分を愛おしいと思わせてくれた爪角に感謝。
Posted by ブクログ
⭐️3.8
「殺し屋はおばあちゃん」のノワール小説と聞いたら読むしかない。
完璧主義で孤高のヒットマンも歳はとる。高齢期に差し掛かり心身ともにくたびれきっている。けれどもプロとしてのプライドが、主人公爪角(チョガク)を奮い立たせる。
はるか遠い昔日の師匠への思慕、傷ついた主人公を助ける歳若い医師への現在地での淡い想い。殺し屋として封印してきた女としての心の揺れにグッと来る。
ライバルとなるトゥも、愛に飢えてきた殺し屋であり、愛情の裏返しゆえの憎しみ、そして哀しみだった。
殺し屋である前に女性であること、そのヒロインの葛藤をていねいに描く筆者の矜持が見え隠れする、断固とした女性への賛歌である本作に拍手を送りたい。クセのある文体もだんだんと病みつきになる頃にはすっかりハマってしまう。
ラストの死闘のシーンは圧巻。映像化してほしいと思うほどに、鮮やかな描写に一気読み必死。
ひさしぶりにハードボイルドを味わった気分。
読み終えたあと、ネイルを塗った夜。
Posted by ブクログ
家業ひとすじ45年
かつて名を馳せた女殺し屋・爪角の
ノアール小説
どこで勧められた本だったか痛いのは苦手なのに、爪角の人生に魅せられて一気読み
ただのノアール小説に終わらず、人間味溢れる小説になっている
父親を殺されたトゥよりも、爪角に感情移入してしまうのは爪角の人生を追って来たからなのか、、、
リュウとの生活はあまりにも切ない
肉体の老いのみでなく、揺れ動く様になってしまった感情
そんな中繰り広げられる最後の死闘
一緒に生きて来た老犬も無くし
リュウの元に行くまで、これからどんな人生を送るのか、、、、
花火の様な、果物の様なネイルも見てみたかったな
続編も読んでみよう♬
Posted by ブクログ
一文が長かったり、突然場面が切り替わったりと、視点が明言されないまま物語が進む部分が多く、正直読みにくかった!ただ、訳者あとがきによれば、その読みにくさは作者の意図とのこと。「邪魔をするような文章で読者の行手を阻み、一気読みさせないため」だそうで、作者の狙いを自力で汲み取るのは難しかったものの、結果的にはその意図どおり、時間をかけてじっくり読むことになった。
殺し屋として生きてきた主人公・爪角の一節、
——「確固たる日差しのもとで根を張る人々を見るのは、気持ちがいいことだ。長いあいだ見つめているだけで、それが自分のものになるのなら。ありえないことでもほんの一瞬、その場面に属している気分があじわえるのなら。」——
という言葉には、生き残るために脳内を“効率・論理・無機質”で埋め尽くさざるを得なかった彼女のプロフェッショナルな生き様と、その奥底に少しだけ残り続けた「平凡で幸せな“普通”への憧れ」が歳をとってより滲み出てきていることに人間みが溢れていた。私にはこの一節がとても印象的で、切なく、胸に沁みた。
高齢×女性という、社会的弱者とみなされがちな存在をプロの殺し屋として描く発想にも驚かされた。自らの老いを誰よりも自覚しながら、ひとりの女性として抱いてしまった恋心に悩み、それでも最後は理性で処理してしまう彼女の姿に、境遇は違えど、同じ女性として共感し、また切なさを覚えた。
誰ともコミュニティを築けない殺し屋としての孤独。爪角をその世界へ導き、師であり唯一の相棒でありつつ、彼女に恋心を抱かせたリュウ。彼は「大切なものをつくらないように」という言葉を残し、結ばれることもないまま先に逝ってしまう。爪角の想いはどこにも行き場がなく、記憶だけが残り続ける。好きな人が自分のせいで生きづらくならないよう、仕事でもプライベートでも徹底して理性的に振る舞う爪角。リュウの奥さんに対しても心から気遣う彼女の姿を見ると、殺し屋とは思えないほど根が純粋で、誰よりも優しい人なんだと感じた。
そんな爪角の生き様を綴ったこの小説は、私にとってただただ切なく、胸に重く残る一冊だった。
Posted by ブクログ
2025.5 読みにくいし、テーマもよくわからない小説でした。訳者あとがきに、「未読者の方に」という文言があってなるほど、と…
訳者あとがきを先に読んだほうがいいかもしれません。