【感想・ネタバレ】影に対して―母をめぐる物語―(新潮文庫)のレビュー

あらすじ

なぜ父と母は別れたのか。なぜあのとき、自分は母と一緒に住むと勇気を持って言えなかったのか。理由は何であれ、私が母を見捨てた事実には変わりはない――。完成しながらも手元に遺され、2020年に発見された表題作「影に対して」。破戒した神父と、人々に踏まれながらも、その足の下から人間をみつめている踏絵の基督を重ねる「影法師」など遠藤文学の鍵となる「母」を描いた傑作六編を収録。(解説・浅井まかて)

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Posted by ブクログ

ネタバレ

母と父、そして信仰を書いた6篇。
いくつもの心理描写に圧倒された。全体からとても陰鬱な空気が漂っているのに、この本質を捉えたような文章が無理なくスッと心に入ってくる。子ども目線の話も、大人目線の話もどれも読みやすかった。
主人公は、厳しく烈しかった母を美化してしまう気持ちを持っているのに対して、父には冷ややかな視線を向けていた。この点は共通しているけれど、細かな設定は短編ごとに少しずつ違っている。
自身の経験が創作の元になっていることは確かだろう。でも物語をどう膨らませていくかは、ほかにも沢山の可能性があるのだなと思わされた。作品として昇華されるというのはこういうことなのかもしれない。未発表であった理由はわからないが、この作品を読めてよかった。

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2024年11月12日

Posted by ブクログ

ネタバレ

遠藤周作本人の母親について書かれた自伝的作品。
没死去後に未発表作として発行された作品。
彼自身、発行するつもりはなくとも、彼にとっては書かずにいられなかったであろう母に対する心の葛藤、愛情や憎悪や憐れみといったものが文章から手に取るように伺えれる。
自分の足元に常にまとわりつく影のような存在。

複雑な家庭環境であり、複雑な想いをずっと抱え続けていたのだろう。
離婚後、母親がキリシタンとなり、彼自身11歳でカトリックの洗礼を受ける。
彼が最後までキリシタンだったのは、母親の存在が大きく関係しているのであろう。

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2024年02月29日

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