あらすじ
なぜ父と母は別れたのか。なぜあのとき、自分は母と一緒に住むと勇気を持って言えなかったのか。理由は何であれ、私が母を見捨てた事実には変わりはない――。完成しながらも手元に遺され、2020年に発見された表題作「影に対して」。破戒した神父と、人々に踏まれながらも、その足の下から人間をみつめている踏絵の基督を重ねる「影法師」など遠藤文学の鍵となる「母」を描いた傑作六編を収録。(解説・浅井まかて)
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Posted by ブクログ
母と父、そして信仰を書いた6篇。
いくつもの心理描写に圧倒された。全体からとても陰鬱な空気が漂っているのに、この本質を捉えたような文章が無理なくスッと心に入ってくる。子ども目線の話も、大人目線の話もどれも読みやすかった。
主人公は、厳しく烈しかった母を美化してしまう気持ちを持っているのに対して、父には冷ややかな視線を向けていた。この点は共通しているけれど、細かな設定は短編ごとに少しずつ違っている。
自身の経験が創作の元になっていることは確かだろう。でも物語をどう膨らませていくかは、ほかにも沢山の可能性があるのだなと思わされた。作品として昇華されるというのはこういうことなのかもしれない。未発表であった理由はわからないが、この作品を読めてよかった。
Posted by ブクログ
時代だとは思いますが、女性の立ち場が無い。
現東京藝術大学を卒業した母が、ヴァイオリンばかり練習していて家庭のことを顧みないと思ってる夫、
主人公が入院したときに、子どもをちゃんと面倒みてないから入院したんでしょ?と思い込む伯母、
病院のベッド脇で左指だけでもバイオリンの練習をする母見て、怒りだす主人公。
主人公の退院後、まったくバイオリンを弾かなくなった母を見て、夫は満足そうにしていたが、結局両親は離婚。精神を病む母。
満州から帰国後も、バイオリン指導が厳しすぎて仕事をやめされられた母。
誰も救われない。
父親が酷い。主人公を父の元か、母の元、どちらに住むか選ばせるようでいて、半強制的。
そのくせ選ばせるように確認するから、どちらかを選べばどちらかを捨てると考えてしまうように思う。
子どもにそんな残酷な選択をさせてはいけないように思う。
成長した主人公も、妻に対して着物を売ればいいとか言うなんて酷い。
でも、ここまで書いておいて、遠藤周作の未発表作品を読めて嬉しいとも思う。