【感想・ネタバレ】赤ちゃんをわが子として育てる方を求むのレビュー

あらすじ

子をはぐくむのは血ではなく愛のつながり。

1970年代に起きた「赤ちゃんあっせん事件」の真実。命を守るため不屈の闘志を燃やした産婦人科医・菊田昇の信念の物語。1926年石巻に生を受けた昇は、母が営む遊郭で育ち、女達のおかれた厳しい現実を目の当たりにする。医学部へ進み産婦人科医となった昇は、子供の命を救うため、望まぬ妊娠をした女性と、子供を望む夫婦の橋渡しを始める。それは法を犯す行為でもあった。マスコミによって明るみになり、世間を揺るがす事件へと発展。それでも命を守るという信念を曲げることなく国を相手に闘い続け、悲願の「特別養子縁組」の法律を勝ち取った。
ノンフィクションの旗手・石井光太氏が取材を重ね、「赤ちゃんあっせん事件」の裏にある真実を描いた評伝小説。解説はTBS・久保田智子さん。

※この作品は単行本版『赤ちゃんをわが子として育てる方を求む』として配信されていた作品の文庫本版です。

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Posted by ブクログ

菊田医師と「赤ちゃん斡旋」の事はうっすら知っていましたが、マスコミにすっぱ抜かれた物だと思っていました。自ら世間に、仲間の医師達に問いかけ闘ったのですね。面白かったです。映画化してほしい〜。

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2024年07月12日

Posted by ブクログ

ネタバレ

特別養子縁組制度のために身を捧げた産科医、菊田昇氏のドキュメンタリー。同じ辛苦を味わっているはずの、つまりは同志となるべきはずの産科医から袋叩きにあいながらも「絶対に取り組むべき問題だ」と、一歩も譲らない。自分の意志を貫く強さ、情の厚さ、愚直の信念に感激した。また元妊婦や診療所看護師、仲間の医師などの優しさや情熱にも、何度か涙を誘われた。
それにしても、昔の遊郭の女性たちの人生は、本当に苦しいものだったんだな、、、

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2023年08月13日

Posted by ブクログ

第一章からぐいぐいと引き込まれ、一気に読んだ。「実話を元に紡いだ評伝小説」とのことだが、読み終わってから菊田昇氏についてざっと調べたところ、小説的な味付けはされているにせよ、概ね事実なんだろう。

特別養子縁組制度というのが、自分が生まれる前から問題提起されていて、成立したのはずっと後だということに衝撃を受けたし、
ものすごい信念を持った医師が尽力したということに感銘を受けた。
そしていまだに、乳児置き去りや虐待など日々のニュースを見てもやもやすることがあるのも現実だ。
皆が問題意識を持つことはなかなか難しいが、私はこの評伝小説を通じて、ひとつの現実を知ることができてよかった。

ぜひ、映像化してほしい!!

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2023年04月01日

Posted by ブクログ

涙なくしては読めない、

命の重さ、尊さについて考えさせられる。

正しさとはなにか?
正義の反対はもう一つの正義
という言葉を思い出した。
正しいことをするという
主人公の医師の想い。
いろいろな立場の人がいる中で
何が正しいと言い切れるのだろうか。
望まぬ妊娠をした女性、
生まれてくる子ども、
生を受けても生きることができなかった子ども、
周りの大人たちのきもち

宿った命。
人が決められることではないけれど
誰かがどこかで決めなくてはいけない、
不条理、やるせなさ、葛藤、
考えて結論を出すことではないけれど
いたしかたなく、誰かが決める。
なんとも言えない思いで読んだ。

結局は自分が信じる道を進むしかないのだろうな。
自分自身の過去の経験もよぎった。

また医師が知らなかった母の想いにも感涙。
気丈で冷たく非人情だと思っていたが
母なりにやさしさ、思い遣りをもっていたことに
気づく。
実は自分の知らないことがたくさんあって
見えていないだけなんだと思った。

法が改正されるという裏には
こんなにも多くの人の想いがあることに
気がつかされた。
意志を貫く、という言葉では軽すぎるくらい
重くて尊いものがそこにはある。



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2023年03月26日

Posted by ブクログ

ネタバレ

あとがきに「この物語は、実在の医師・菊田昇の人生に基づいたフィクションです」と書いてあったので「小説」に分類しました。でもほぼ時系列で、菊田医師の子供時代から、医師になった動機、医師として赤ちゃんの命のために奔走した過程、病に侵されながら多くの人の協力で特別養子縁組の制度の成立にこぎつけたところまでを描いているので、ルポルタージュに近い印象でした。
菊田医師は戦時中の石巻で幼少期を過ごした。当時はまだ遊郭があり、母親が経営する遊郭で、遊女に囲まれて成長した。行き場のない女性たち、望まぬ妊娠、危険な民間療法による堕胎などを目にしてきた。
母親は上の兄たちを進学させてやることができず、昇に望みをかけて、医者になれ、立派になれ、石巻を救う人間になれと言い続ける。
葛藤しながらも、慕っていた遊女の死をきっかけに本当に産婦人科医になった昇。クリスチャンの妻、理解のある義両親にも恵まれ、医師として邁進していたが、年間に何件も、何十件、百件もの堕胎手術を行っていた。7か月の胎児の堕胎も認められていたため、薬で早産を促した場合、産声を上げて生まれてくる赤ちゃんもいた。
悲劇的な堕胎、望まぬ妊娠をした女性、子供に恵まれない夫婦の問題を何とかしようと、当時の慣習を破って行動を起こす菊田医師。医師会から非難され、困難にぶつかっても信念を貫いた。妻も、志を共にする看護師や病院のスタッフも、菊田医師を信じてついてきた。取材や国会招致ににも応じて世間にも訴え続けた。
正しいことをして、世の中の「当たり前」を変える。
菊田医師の主張はシンプルに正しいのに、なぜこんなに難しいのだろう。こういう例は、現代社会にもたくさんあると思う。既得権益を手放せない一部の人、現状を変えることによって不利益を被る人たちへの配慮、現状維持でいいやという思考停止状態。
私も職場で、絶対おかしい、これは変えるべきだと思っていることがあるけど、20年も言い出せないでいる(笑)。少しずつ変わってきてはいるけど、だれも一気に変えることができない。明らかにおかしいのに、少しずつしか変えていくことができない。誰か一人が勇気をもって「やめよう」と言って実行にうつせばいいのに、それができない。だれも菊田医師のようにはなれないのだ。批判が怖いし、誰かがしてくれれば…と思っている。情けない。

小説では、戦中・戦後の石巻の様子や、昭和の女性たちのおかれた状況、時代背景も興味深く読めた。赤ちゃんを想う人々の気持ちも温かく、感動した。現代では、親が育てられない子供の多くが施設に預けられ、本来は一般家庭に家族として受け入れられるのが理想だがその数が増えていかないのが問題とされている。菊田医師が特別養子縁組の制度成立を目指していた時代とは違って、親のいない子供を引き受けることは「リスクが高い」「子供がいない人生も大いにあり」という価値観が広まり、この問題はまた難しいだろう。
とても考えさせられた。

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2023年02月18日

Posted by ブクログ

石井光太『赤ちゃんをわが子として育てる方を求む』小学館文庫。

数々のノンフィクションで有名な石井光太が綿密な取材により『赤ちゃんあっせん事件』の裏にある真実を描いた評伝小説。

自らの立場が危うくなることも辞さずに新聞に『赤ちゃんをわが子として育てる方を求む』と広告を出した菊田昇医師の勇気たるや。

世の中には誤った法律やルールが多数ある。こうした間違った壁を壊すために費やすエネルギーは並大抵ではないだろう。

1926年、石巻に産まれた菊田昇は、母親が営む遊郭で育ち、遊女たちが味わう厳しい現実を目の当たりにする。母親の強い勧めで医学部に進学した昇は産婦人科医となり、望まれぬ妊娠で命を失う子供たちを救うために法を犯して、養子縁組の橋渡しをする。

その行為がマスコミに知れると、世間を揺るがす事件へと発展する。それでも昇は尊い命を守るという信念を曲げず、国を相手に闘い続け、悲願の『特別養子縁組』の法律を勝ち取るのだが……

本体価格800円
★★★★★

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2023年02月15日

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