あらすじ
ホラー作家の道尾は、取材のために滋賀県山中にある仏像の工房・瑞祥房を訪ねる。彼がその夜見たものは、口を開けて笑う千手観音と、闇の中で血を流す仏像。しかも翌日には仏師が一人消えていた。道尾は、霊現象探求家の真備、真備の助手・凛の三人で、瑞祥房を再訪し、その謎を探る。工房の誰もが口を閉ざす、二十年前の事件とはいったい? 愛ゆえの哀しき結末とは――。
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Posted by ブクログ
なんか事件が起きてそうで特に起きていない前半。道尾さんの作品は、そんな感じで進み、実はいろいろと伏線が散りばめられていると感じる。この作品も後半に向けて物語がどんどん加速していく。真備のキャラは好きだけどもうちょっと周りに真相教えてあげてたら被害は少なくなるんじゃないかなぁとか思う。
Posted by ブクログ
☆4ではあるが、☆5に近い。
多種多様なトリックが用いられており、前作とは違って霊はあまり関わってこないものの、「仏像」という神秘的な小道具がそれに代わる役目を果たしている。
まず、トリックとしては、
立像→隆三、釜→釜、といった作者が読者に仕掛けるわけではないが、一種の叙述トリックともいえるものや、赤い血が実はダニだった、というトリック。
そして、やはり一番驚いたのが、「死体に漆を塗り、仏像にしてしまう」というトリックだ。
どれも見事。
幽霊の言葉ではなく、浄めのための経であった。
仏像が笑ったのではなく、それは仏像が裏返されて現れた12個目の面であった。
部屋の仏像が動いた気がしたのは、犯人が使える像がないか物色していたから。
などなど、今作では前作と違ってオカルトに頼らず、全ての謎を論理的に解決している点も好印象。
だが、今作の良さはトリックだけではない。
全てが"いたずら"や"勘違い"によるものであったという運命ともいえる偶然によって事件が起こっていたという真相は、怖ろしさ、そして同時に切なさを感じさせる。
立ち並んだ仏像が作り出す恐ろしげな雰囲気や、まるでクローズドサークルのような環境、どれも高レベルないくつものトリック、伏線回収、人物描写、終盤のどんでん返し。
ミステリーに必要なものが詰まっており、とても完成度が高い作品だった。