【感想・ネタバレ】ボーダー 移民と難民(集英社インターナショナル)のレビュー

あらすじ

佐々涼子はかつて司法試験予備校で机を並べていた児玉晃一と偶然再会する。児玉は弁護士として難民問題のエキスパートとなっていた。彼の案内で茨城県牛久の入国管理センターを訪れ、そこに長期収容されている外国人たちと面会した筆者は、その窮状にショックを受ける。イラン、アフガニスタン、カシミール……。内戦で命からがら日本に避難してきた「難民」たちを本国に強制送還しようとする入管。帰還すれば死刑になる状況でも意に介すことはない。さらに日本で家族をもっていようが容赦なく親と子を引き離す非道な仕打ち。長期収容で身体を壊し、命さえ落とす収容者がいながら、一向に改善されない日本入管の待遇に対して、国連も国際法違反と指摘する。四半世紀にわたり、難民の受け入れ、入管の改善のために闘い続ける児玉の奮闘の日々を、日本語学校教師として在留外国人と関わってきた自身の体験と、現在入管に収監されている在留外国人の取材とともに綴る。

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Posted by ブクログ

ネタバレ

「私の人生最大の失敗は、日本に助けを求めたことです」(p.95)

著者が十年かけて執筆した作品。日本が難民や外国人に対してどれほど理不尽で酷い仕打ちをしているか暴かれている、非常にショックな内容。しかし、少子高齢化もあり他国や外国人と共存して生きていく日本で生きていく以上、読む必要性の強い本だと思う。
読みながら、著者自身ショックや無力感に苛まれているのを感じるが、そのなかで、日本の真実を追求する熱量が爆発している。膨大な取材量、自身の思考・分析力の高さ、読んでいるだけで知識は増えて視野が広がる。また日本人の善悪も脚色なく書かれていて興味深く、読書時の満足感がすごい。



まず本作でフォーカスされているのは、自国で迫害・殺害の危機があるなか、日本に助けを求めて来たものの、理不尽な言い訳で難民と認定されず、入管に収容された外国人の実態。どう見ても難民条約に該当する状況なのに(迫害の膨大な証拠書類もある)いざ日本に行くと難民認定されず、「難民でもない、在住権利もない無法者」として、入管にぶちこまれる。
ここで、世間の多くの人が入管収容者を「ビザが切れても居座る無法者」として見ているようだが、その認識は事実とズレがあることを実感。という私も外国人労働者の実情や、内戦や迫害と来日理由のつながりなど、まったく知らなかった。

入管の実情があまりにもむごい。一部屋に十人収容、仕切りすらないトイレ、風呂は週二回十分のシャワー。さらにショックを受けたのは、日本の警備員による暴行。日常的な暴力や、無抵抗者への集団リンチ。国に許される警備員は、虐めや暴行に歯止めがないようだ。(元職員によると入管で働くとこういう雰囲気に馴染んでしまうのだとか)
そして、治療を求める重病患者は放置。独房で助けを求めて叫んでも、血を吐き続けても、死ぬまで放置。何人も死なせている。自殺を図る収容者も多い。

絶望的なのは、彼らは一度収容されたら、自分の意思でこの地獄から脱出できないこと。首を吊ったインド人に対して収容者は「彼は本当に勇気があった。死んで本当の自由を手に入れた」と褒める……。
「日本は人権国家でない」「ここほどひどいところはない」「収容者達の声が辛い。



次の部では、フィリピンやベトナムなどから日本に働きに出る技能実習生にフォーカスしている。

仕事口に対して人口が多いと、ブラック企業や無職、貧困者が増える。一方、今の日本のように仕事口に対して労働者が少ないと、こうして海外からの働き手を受け入れる訳だが、ここでまた外国人を搾り取るような待遇が暴かれる。
著者が言うように、この態度を続ければ、日本は一層外国人の方から見限られてしまう恐れがあるだろう。(他の先進国は難民認定に対しても日本より寛容のようだ。)そのとき初めて体勢を見直すのだろうか?

しかしこの豊かな生活を求めて日本語を習得し、働きに出る者達の生命力の強さ。暗い内容が続くなか彼らの向上心や明るさが眩しい。



最後の難民支援センターの話では、彼らを支援したい人が沢山いることや、日本人の善意や思いやりが描かれている。それまで絶望的だったので、心が救われるパート。有川氏の「世に必要なものなら資金は集まる」という意気込みで一人支援センターを立ち上げた勇気と行動力に感銘。

あとがきからは、多くの人の努力によって、少しづつ、変わってきていることがわかる。しかし移民・難民と国の在り方は混沌としており、先進国のなかでは不寛容なようだ。これは実は一人一人が当事者の問題なのかもしれない。生ぬるい安全の中で、閉塞的な視野と考えに落ち着くのは、危険なのかもしれない。

こんな内容を実名で日本で公表する著者の勇気に感謝しかない。何度も読みたい本。

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2025年12月26日

Posted by ブクログ

ネタバレ

P202
『働きたいのに働けない難民がいるのに、働いて欲しい日本から逃げていく外国人労働者がいる。どこまで探っても日本の政策は、他人に対する敬意がなく、ただちぐはぐなだけだった。』

なんてつらい話だろう。日本に働きに行き稼いで故郷で錦を…なんて過去の話。もう日本に行きたい人なんていない。そして過去、外国人労働者に頼っていた業種は人手不足。
入管の環境、人権無視の扱いなど、読んでる限りはひどすぎる。けど、何事も両方の言い分をきかないことには判断できない、と思ったり。
移民、難民、技能実習制度、全てが繋がっている。
この先、佐々涼子さんの著書は読めないことが悲しい。ご冥福をお祈りします。

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2025年04月09日

Posted by ブクログ

ネタバレ

知らない世界だった

人はどこに生まれてくるかは選べない

日本人は純血であること、完全であることが好きで、少しでも違っていると仲間に入れない。

日本が買い手市場だった時代は終わりつつある、今は、彼らの方が日本を値踏みしているのだ。

いまだに昭和時代の栄光にすがって、外国人を怖がり、時に見下し、鎖国政策を取り続け、いろいろなことが悪くなっている

今後、少子高齢化多死社会を迎え、外国人を受け入れない選択枝はない。ならば、どうやって共に暮らしていくのか、未来は私たちの手にかかっている。

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2024年02月12日

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