【感想・ネタバレ】普通という異常 健常発達という病のレビュー

あらすじ

ADHDやASDを病いと呼ぶのなら、「普通」も同じように病いだーー

「色、金、名誉」にこだわり、周囲の承認に疲れてしまった人たち。
「いいね」によって、一つの「私」に束ねられる現代、極端な「普通」がもたらす「しんどさ」から抜け出すためのヒント

●「自分がどうしたいか」よりも「他人がどう見ているか気になって仕方がない」
●「いじわるコミュニケーション」という承認欲求
●流行へのとらわれ
●対人希求性が過多になる「しんどさ」
●本音と建て前のやり取り
●社会のスタンダードから外れていないか不安
●ドーパミン移行過剰症としての健常発達
●親の「いいね」という魔法

「病」が、ある特性について、自分ないしは身近な他人が苦しむことを前提とした場合、ADHDやASDが病い的になることがあるのは間違いないでしょう。一方で、定型発達の特性を持つ人も負けず劣らず病い的になることがあるのではないか、この本で取り扱いたいのは、こういう疑問です。たとえば定型発達の特性が過剰な人が、「相手が自分をどうみているのかが気になって仕方がない」「自分は普通ではなくなったのではないか」という不安から矢も楯もたまらなくなってしまう場合、そうした定型発達の人の特性も病といってもいいのではないか、ということです。――「はじめに」より

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Posted by ブクログ

これは中身に対して題名が軽過ぎる印象にある。
実態は定型発達と非定型発達の差異から垣間見る人間としての哲学論考に他ならない。
ただ題名だけをみると精神学の本に見えなくもない。これはかなり重めの哲学書であることは踏まえておかないと読むのは苦痛になるだろう。

さて、ADHD当事者としては「せやろか」の連続であることは否めない。さもありなん、カントの例も出てくるが、我々は言語化し得ないファジーな感性の中に揺蕩う一次的感覚を他者に伝達する上で削ぎ落とされる情報と付加される虚偽が生じるのだから。

なので、正確に発達障害と健常発達の病理を明かすと言うよりは、理論立ての遊戯を眺める感覚の方が良いかもしれない。俺は哲学が好きだからそれで十分楽しめる内容だった。

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2024年07月17日

Posted by ブクログ

■ベーシック・トラスト(基本的信頼)とは、エリクソンが言い始めた精神科用語。
 具体的には、自分は何か価値ある存在だとあえて証明しなくても、自分とは生きる価値のある、いいものだと思える基本的な自分への信頼感のこと。
 子供の養育者が子供に充分「いいね」を言って育てるとベーシック・トラストは醸成され、そうでないと、自分が生きるに値するいいものであることを、子供はその後の生涯をかけて証明しなくてはならなくなる。

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2023年10月01日

Posted by ブクログ

とても面白かった。
健常発達を一つの特性として捉え直すことで、普通に生きることの困難さ、生きづらさについて考えていくような流れと感じました。
大きな物語で自己をバラバラにならないようにしていた昭和と比較し、令和はいいね!と言った他者評価により自己をバラバラにならないようにしていくという流れと理解しました。
他者を取り込み自己を形成していく過程を超え、あまりに多くの他者像に触れてしまう現代においては、自己をどのようにも形成できてしまう(ように錯覚してしまう)自己形成における自由の刑に処せられているように思えます。また、少し前ならドラマ、今ならSNSで提供される普通は、とてもハードルが高いと個人的には思っています。普通になれず辛く思っている人は、僕もそうですが、たくさんいるのではないかと。
美味しい餡を作りたい、打算も計画もないただそれ自体の欲求を打開とすることは、狙ってできるのかは疑問でしたが、我が身一つで日本に生きているならそれも一つの手段なのかなと限定的な納得をしました。

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2023年08月15日

Posted by ブクログ

難しい部分もあったけど、総じて普通なんてものはなく、すごく地続きに色々な性質の人がいるイメージを持てた。

自分の幸せは自分で決めたい。

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2024年05月08日

Posted by ブクログ

「発達障害とはどういうものか?」という内容だという認識で読み始めました。
そういったことの解説もあるのですが、もっと踏み込んで、「そもそも人間の欲求ってどのように生じるのか?」といった哲学的な問いから「普通の人って何なんだろう?」というところに及んでいて、とても勉強になりました。

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2025年09月25日

Posted by ブクログ

発達障害が脚光を浴びるようになってそれについての話はよく見聞きするようにもなりましたが、健常発達もまた病と言えるのでは!?という切り口は良かったです。AちゃんにBちゃんの話も分かりやすかったです。あと、見てないドラマですが牡丹と薔薇の例えも分かりやすかったような気がします。でも、他の方も書いているように、後半は難解でした。心理学の本によく出てくる「〇〇的な」という例えがその前に説明はされてあるのですが覚えられません。デカルト的コギタチオも予備知識のない自分には意味不明でした。最後の終わり方もなかなか、、、。

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2025年08月16日

Posted by ブクログ

精神科医の書いた本でこのタイトルなので医学的アプローチの本かと思えば、発達障害を社会モデルで捉え、さらにその「社会」について哲学的な考察を重ねていくといった本であった。
ギャップに面食らったが、内容自体は興味深い。
健常発達の「健常」とはなにか、そもそも人を健常たらしめている力学とは(筆者はそれを社会からもたらされる承認=いいねであると述べる)などなどが語られる。
昭和の時代は社会的に推奨される堅固なロールモデルがあり、それに沿えば承認されていたが、多様性の令和の世となった結果、むしろいいねを獲得するのは個々人の創意工夫が必要となり困難になった(故に発達障害的言説も顕在化している)というあたりも面白い。

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2024年08月08日

Posted by ブクログ

作者の方の広範な知識と洞察が披露されるが読解力皆無なため、自分には猫に洋服を着せるが如く無理があった。ドーパミンの辺りとかは興味深かった。
本書の伝えたい事とズレてるかもしれないけど、情報の過剰さが「普通」という枠を狭めている気がする。

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2025年12月08日

Posted by ブクログ

ネタバレ

ほとんど無知の状態でこの本を手に取ったので、意外とも思える方向に話が進んで不思議だった。哲学、文学、絵画、アート、芸能などからも根拠を引っ張ってくるような感じなので、真に理解するには読者にも幅広い知識が必要なのではないかと思う。
対人希求性や精神鑑定の話、ドーパミンの移行、ベーシック・トラストなどの話は興味深く読めた。
第三章まではそうやってついていくことができたけれど、途中からテーマが変わったように感じられ、話は飛躍していき、読みにくくなっていった。結論があやふやに思える。
人間のことを知っていこうとすればするほど、人間のことが分からなくなっていく。そんな感覚にもなった。でもここに生きている私はたしかに存在していて、自分や他者のことを知ろうとしていることの面白みを感じる。それこそすごく人間らしい営みのような気もする。

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2025年11月04日

Posted by ブクログ

普通とはなんだろうかという問いの一つの解釈として精神科医の視点で解説し問題的提起をする。
発達障害は年々増加傾向となり、直近の厚生労働省の令和4年(2022年)「生活のしづらさなどに関する調査」によれば、医師から発達障害と診断された人の推計数は約87万人で、前回(平成28年、2016年)の約48.1万人から倍近く増えている。現在(2025)においても増加傾向であることは揺るがないだろう。
さて、本著は発達障害ではない健常者という普通の人について焦点を合わせた内容である。普通とはどういう状態かを本著では解説している。現代において、特にスマホやSNSが大きく発展し承認欲求や同調圧力による生きづらさが記載されている。生きづらさは様々であり、普通という異なる別の普通の環境が同時に存在したのであれば、その普通に耐えられない普通の人もいるということなのだ。
発達障害も健常発達(普通の人)も立場や環境や周囲の人が異なれば変わるのではないかと私は思う。発達障害は行動障害なども合わさることがあるので、普通の人とは異なる点もあるかも知れないが、普通という人も他人軸で生きる依存のような生きづらさを抱えており、両者に違いはあれど、普通と呼ばれる人も一つ状態が異なれば精神疾患を発症したりすることだろう。発達障害は生まれながらの障害または特性だ。発達障害も普通も優劣は無く、発達障害がある人も普通と思う人もあまりその言葉に縛られず、自分らしく生きることが大切だと私は思うのだ。発達障害も普通も精神的な疾患もそれは状態であり、自分の今いる現在位置がわかるコンパスや地図のようなもので、診断名がついたのであればその診断名からどうやって自分だけの人生設計を軌道修正すればいいのだ。普通の人も承認欲求や同調圧力やらしがらみ等、精神疾患になる前にその環境から脱出し自分の人生設計に向けて軌道修正すればいいのだ。
幸い現代の世の中はお金があろうがなかろうが自由で保障された日本である。私やあなたにとっての人生設計をするにあたって診断名の有り無し問わずどう前へ進むべきか自分なりに思索してみると良いだろう。答え合わせは歴史の古典から学ぶといい。それらには人生を賭けて悩み抜いた知恵が込められている。それも一つの普通への解釈だろう。発達障害は現代病ではない。普通も同じだ。何千年前からも変わらない。ただ名前が付いて当事者が生きやすくするためのサポートがあるだけなのだ。それらの支援を充分に普通の人も活用し自分自身に向き合うとよいだろう。
普通とは何かという一つの視点と解釈が得られる本である。

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2025年09月21日

Posted by ブクログ

序盤はわかりやすい例えで読みやすかったのですが、以降はなにがなにやら理解が追いつかず、とりあえず文字を追う感じで読み終えました。
ということで、なにが書かれていたのかいまいち要点を掴みきれず(わたくしの理解力のせい)、とりあえず納得できたのは、ADHD特性と健常発達特性を状況によって使いわけていけたらいいよね、との論でした。

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2025年06月22日

Posted by ブクログ

”定型発達の特性を持つ人も負けず劣らず病的になることがあるのではないか、この本で取り扱いたいのは、こういう疑問です”
ADHDやASD、いわゆる非定型発達という概念が浸透してきた。それに対して、定型発達の特性が過剰な人の特性についても紐解いていくという本
興味深かったのは脳内のドーパミン放出に関するところだった。健常発達(本のなかで著者があえてこう書いている)は自分がなにかに直接触れて感じた快・不快を、すぐにまわりの多くの人が良しとする行為や目標へ置換される。これが躾のしやすさやルールを守ることにつながりやすいが、つまりそれは、社会制度的な正しさが自分の実感と深く結びついてしまい、自分が本来何を求めていたのかが曖昧になりやすちことではないか、と書いているところはああ、なるほどなと納得した
自我よりも社会の要請に従いやすいとでも言えばいいのか。とりあえず従っておくというのは校則なんかでも何のためにこのルールを守るのか、というところを一足飛びにして、とにかく従うものというようなことになりやすい
後半は哲学的な内容になり、正直難しくあまり理解できたとは言えないかもしれないけれど、前半の健常発達(定型発達)はいったいどういうことか、という内容だけでも読む価値はあったと思う

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2024年09月30日

Posted by ブクログ

むっちゃむずいけど、人間でいることに疲れてもいいんだ、と思えた
こんなに人の目を気にして、悩んでいるのは自分ひとりだとおもっていたから

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2024年09月20日

Posted by ブクログ

中盤までは良かったんですけど後半はなかなか理解し難かったです。
ですが自分がいかに周りを気にして生きているかを知り、たまにはそうでない人を真似してみるのも人生の見方が変わっていいかもなと思いました

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2024年08月13日

Posted by ブクログ

ADHDを知りたい気持ちから『健常発達という病』とのサブタイトルに惹かれ、手に取ってみました。健常発達の観点から逆説的にADHDが浮き上がって見えてくるのでは?と思ったのですが、どちらかというとタイトル通りでした。無いことはなかったのですが。

期待した方向とはやや違ったものの、新しい知識を得られる事は面白く、難解ではありましたが興味深く読みました。
第四章で伏線回収、第五章でまとめといった感じでしょうか。
例えに出てくるテレビ番組も有名な哲学者の本もあまり知らず、少なくともテレビ番組を知っていればもっと楽に想像を膨らませて読めただろうと思います。

行き過ぎた健常発達の怖さとそれに付き合わねばならないしんどさ。キツいよなぁ…

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2024年05月29日

Posted by ブクログ

私には難しい内容でしたが、懐かしい題材がありました。普通とは何か、発達障害とは何か、これからも考えていきたいと思います。

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2024年05月12日

Posted by ブクログ

【目次】

第一章 意地悪と健常発達者

第二章 ニューロティピカル症候群の生き難さ

第三章 ほんとうは怖い「いいね」と私

第四章 昭和的「私」から「いいね」の「私」へ

第五章 定住民的健常発達者とノマド的ADHD

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2024年04月19日

Posted by ブクログ

第二章の「ドーパミン移行欠陥仮説」が興味深い。
後半にいくにつれて難しくなり読み込めていない。
「発達」「健常」それぞれの特徴のどちらが普通で生きやすいのか、はそのコミュニティによるよな、などとごくありきたりな事を思ったり。
時間をおいて再度したい。

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2023年12月15日

Posted by ブクログ

周りに合わせていくことは普通であり平凡で悪く言われがちだけど、それはそれで社会適応できるという大事なスキルであることに本書を読んで気づいた。
またマウントを取って生存価値を見いだそうとする女性心理にも、確かにそういうところがあるなと、はっとした。

後半は専門用語使った作者の持論で良くわからなかった

精神医学とか興味あれば一読してみて良いと思う。

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2023年10月16日

Posted by ブクログ

タイトルに魅かれて読んでみた。
正直、文章が読みづらく、前提知識を必要とするパートが大部分を占めていて、軽い気持ちで手に取ると頭に入らないかもしれない。ただ、それでも健常発達者をスタンダードなモデルにすることなく、一つの類型として捉えて評価する視点は新鮮だった。

健常者の特徴の一つに「対人希求性」(いいねを求める)が挙げられるが、それがあるべき姿なのかと問われると素直に肯けない自分がいる。それよりも自分の興味にしか気持ちが向かず、他人の評価が意識に入らない発達障害者の方が健全に見える。

健常発達者の「空気を読む」「いいねをもらう」は、共同体を維持するためには必要な能力なのかもしれないが、幸せになるための能力かと問われると悩んでしまう。

・いじわるコミュニケーション
・対人希求性
・色、金、名誉

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2023年09月04日

Posted by ブクログ

ADHDやASDに対する「健常発達」という異常。
相対的なものとして考えてみませんか、という本書。

極めつけが、アメリカの自閉症協会による「ニューロティピカル症候群」の定義。
ニューロティピカル症候群は、1万人のうち9624人に発生するという。社会的懸念へののめり込み、妄想や強迫観念に特徴付けられる、神経性生物学上の障害。←定型障害のヒトたちのことだけど。

ニューロティピカル症候群の人は、いじわるコミュニケーションとか、「いいね」とか、対人希求性とか、本音と建前とか、「色、金、名誉」に囚われてて、よっぽど病んでるよね、と。
生きづらくて、とてもしんどいですわね、と。

「他人からどう見えるのか」より自分の興味や関心ごとに拘る発達障害と言われている人の生き方を参考にすると、もしかするとそのしんどさから抜け出せるのかも。

おもしろかった。

♪FISH DANCE/THE BOOM(1989)

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2023年06月06日

Posted by ブクログ

発達障害ブームに対するアンチテーゼとして、ニューロティピカル症候群に触発された、「普通」という生きにくさを前半では著述、身近な例も出され、面白かったが、それはあくまでも序章に過ぎず、後半1/4は他者との関係を主にADHDをはじめとした発達生姜と、そうではない人、そして著者の専門であるてんかんを例に出し、哲学的に考察し、最終的には人間学的な論考となった。ドールーズなどの考察など、自分自身が十分に理解できてない部分が多々出てきたので、最後は難しく理解は尻切れトンボとなってしまった。

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2023年04月30日

Posted by ブクログ

1〜3章は面白く読みました。
4章ではポップカルチャーやアートから定型発達のコミュニケーションを分析していますが、個人的には1章から言及している『牡丹と薔薇』を軸に深掘りして欲しかったです。
「自分」とは本来性のないもので、他者からの相対評価が自己像を作り出すために関係性に依存せざるを得ない、というのが定型発達の病理だと主張している…と読み解きましたが、もっとシンプルな論展開のほうが読みやすいように思いました。

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2023年04月01日

Posted by ブクログ

健常発達の特性やいじめの構造を解説。後半からは哲学との比較が為されやや難解です。タイトルに引かれ読みましたが私にはまだ早い(正直あまり楽しめなかった)本でした。とはいえ私たちが考える普通を見直す契機となる本になり得るかもしれません。

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2023年03月20日

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