【感想・ネタバレ】帝国ホテル建築物語のレビュー

あらすじ

1923年に完成した帝国ホテル二代目本館、通称「ライト館」。“世界一美しいホテル”“東洋の宝石”として絶賛された名建築だが、完成までの道のりは、想像を絶するものだった――。二十世紀を代表する米国人建築家、フランク・ロイド・ライトによる飽くなきこだわり、現場との対立、難航する作業、襲い来る天災……。次々と困難が立ちはだかったが、男たちは諦めなかった。ライト館の建築に懸けた者たちの熱い闘いを描いた、著者渾身の長編小説!

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Posted by ブクログ

ネタバレ

帝国ホテルというと、自分の結婚式を挙げるときに、「こんな機会はなかなかないから」とウェディング系のイベントに夫と二人で行ったこと(披露宴で出るフルコースが、比較的良心的な価格で食べれる。おいしかった)と、その最後のデザートとして、スタッフの方がずらっと並んで、一皿ずつのデザートにリキュールに火をつけて仕上げをする炎の演出があって、高そうなオプションだなと思ったこと、数年後、友人が帝国ホテルで披露宴をするのに参列したら、その演出があって驚いたこと……なんかを思い出すのだけれど、建物への印象があんまり残っていない。

私が行ったことのある帝国ホテルはもちろん当時のライト館ではなく、印象も違うものなのだろうし、ビルが立ち並ぶのが当たり前になった東京で生きてきたなかでは、また担う役割も変わっているはずだ。

豪華で重厚、きらびやかで、少し敷居が高い。

個人的な感覚を言葉にするならば、そういったあたりだろうか。

最近気づいたことなのだけれど、小説にしてもドラマ・映画にしても、「お仕事もの」が好きだ。お仕事ものというとライトに聞こえるが、仕事をてきぱきと進めていくプロたちの様子を見るのが好きだ。
自覚したきっかけは「シン・ゴジラ」と、あとは「TOKYO MER」だと思う。余計な足を引っ張る人がいなくて、それぞれの役割をきっちりこなして、スムーズに物事が進んでいくところに、ある種の快感がある。

なにせ、現実ではそうはいかない。

で、この作品はお仕事ものではあるけれど、決してプロたちがテキパキとこなしてスムーズに進んでいくような話ではない。
それはどうなのよ、みたいなことが山ほど出てくる。それはおそらく、時代もあるのだろうけれども、今よりももっと曖昧なところも多くて、計算だけでは動かない物事を熱意と想いで動かしていくような物語だった。

いや、この仕事大変すぎない?というのは正直な感想。

こだわりの強すぎる建築家。
そのニュアンスが伝わらない大工や石工。
脆弱な地盤。
相次ぐ火事。
あとから文句をつけてくる重鎮。
足りなくなる資金。

しんっっどい!!!
でもそれらを乗り越えてでも作り上げるんだという気迫があり、建築の知識がなくても分かるほどの建物のすごさが伝わってくる。
技術は大きく進化しただろうけれども、今はもうそういう熱のこもった建物は建たないんだろう。
そしてきっと、現代にまったく同じものを再現しても、同じだけの感動は得られないんだろう。
当時、その時代に、その場で、それを目の当たりにしたからこそ得られる感動は、少し羨ましい。

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2025年05月05日

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