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Posted by ブクログ
ロンドン軍縮会議、統帥権干犯問題の頃から、柳条湖、そして第二次大戦へとひた走る日本の、軍部の、メディアの狂気の中で、一人闘う石橋湛山の言葉たち。今読めば当たり前のようでも、当時の情勢の中ではどんなにか苦しく、重圧を押しのけての勇気ある言論だったか。朝日や毎日などの”大新聞”が軍部のお先棒を担いで書いていた記事と比べると、湛山の「良識」は胸にしみる。
この「屈服なき言論」は、どうも現代には比するものがないように思えるのが哀しい。だからこそ、今読んでいる新聞記事を改めてもう一度疑うために、湛山の執筆したものと、当時の朝日や毎日が書いていた具体的な記事を並べて比較することに、現代的な意味があるように思う。
Posted by ブクログ
2015.8.16
良著。湛山の命懸けの主張が、当時の大新聞との対比でより鮮明に映し出されている。
戦争を起こしたのは、軍部の責任であり、それはマスコミの責任であり、詰まる所、国民の責任である。
経済合理性と、言論の自由とが最も大事だと改めて感じた。
今の日本は、言論の自由はあるが、その言論は、マスコミのバイアスが掛かっていないか?疑問に思うべきである。
また経済合理性の視点はやや欠如しているのではなかろうか。
たとえば、尖閣諸島や竹島を守る事による経済合理性はどうなのか?年間いくらの防衛費を払っているのか?それがどれだけのリターンをもたらしているのか?いっそうの事、そんな儲からない土地なんてあげてしまったほうがいいのではないか?とすら、最近思ってしまう。
領土問題で戦争が起きる可能性なんて低いだろうが、その領土を死守して、何の意味があるのか、よく考えた方がいい。
そんなことを考えさせられた。
Posted by ブクログ
★TBSラジオ荻上チキのセッション22での「日本の首相ベスト5」(正式タイトルは違うと思うが)を聞いていて、知らない首相の名として、石橋湛山の名があがっていたので、知りたいと思って手にとった。(確か、best5には入っていなかったが、リスペクトす神保哲生氏が最高の首相にあげていた)
では、本の感想ですが、半藤一利氏も書いているが、この本は石橋湛山の事を書いたのではなく、「満州事変以降から、国際連盟脱退までの当時の日本の軍部・内閣・新聞・世論がどう動いて行ったか」その対極にあった石橋湛山の言論をとおしてあぶり出したものである。
彼の経歴はさらっとしか触れられていないが、彼の言葉が彼を知る何よりの間違いない手掛かりとなった。そして、社会の殆どの流れが、ひとつの方向に雪崩をうって動くなかで自分の信念に疑念を持たずに、しかも怯まずに信念を主張していた。'人間は社会的生きもの'という言葉が、違った意味を持って迫ってくる。'空気に縛られ、染めらる生きもの'としての人間がいかにしてここまで強く自己の信念を支えられるのか? たんに、石橋湛山への魅力を増しただけにはとどまらない読書になった。 2014.03.25
Posted by ブクログ
戦前戦中時代に東洋経済新報社において、様々な圧力に屈すること無く自由の論調を主張し続けた経済人。大手新聞社が軍部に迎合する翼賛記事の掲載競争を行って当時の世論をミスリードしていたことに反発し、「伝統も主義も捨て軍部に迎合し形骸だけを残しても意味が無い。そんな醜態をさらすなら自爆して滅んだ方がまし」として一歩もひるまなかった。戦後その経済に対する見識と豪毅をもって首相に選出されるが、過労から長期療養が必要になってしまう。湛山は責任を果たせないならばと潔く首相を退陣する。
本書は石橋湛山の伝記ではなく、戦前戦中のジャーナリズム史を石橋の目を通して浮き彫りにしたもの。マスコミという「商売」がいかに危ういものか、また、記事・ニュースという「商品」を鵜呑みにすることがいかに危険かということがよくわかる。記事・ニュース配信サービスの利用者、情報受領者としてのリテラシーをあげていかなければと痛感。