あらすじ
昭和・平成のミステリの技法をフル装備し、
乱歩デビュー前の大正時代半ばに転生して本格探偵小説を書いたら……。
そんな夢想が現実のものになったかのような極上の逸品。
この作者は、令和のミステリを支える
太い柱の一つになるだろう。
有栖川有栖
大正の東京。
秘密結社「絞首商會」との関わりが囁かれる
血液学研究の大家・村山博士が刺殺された。
不可解な点は3つ。遺体が移動させられていたこと、
鞄の内側がべっとり血に濡れていたこと、そして、
遺族が解決を依頼したのが以前村山邸に盗みに入った元泥棒だったこと――。
頭脳明晰にして見目麗しく、厭世家の元泥棒・蓮野が見つけた
四人の容疑者の共通点は、“事件解決に熱心過ぎる”ことだった――。
『方舟』が各界から激賞されたミステリー作家、衝撃のデビュー作!
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Posted by ブクログ
蓮野さん!井口さん!ナイスバディッッ!!!
そしてまさかの結末!これぞミステリ!!!
とワクワクしっぱなしな作品。
『方舟』から夕木春央先生を知り、
『十戒』を拝読し、ついにデビュー作へ遡る…
犯人は誰だ!!?と探していたが、
まさかそれどころではないと思う日が来ようとは…
ミステリとは犯人探しがミソなのに、
それよりもはるかな衝撃に撃たれる…なんたる事…
恐るべし物語を紡ぎます、夕木春央先生。
キャラクターも生き生きとして、
その中で同じ景色を俯瞰しつつ
ページを捲るのがこんなにも楽しい…
これはもはや、2作品目のサーカスも
読まざるを得なくなりましたよ!ええ!!
Posted by ブクログ
面白かった!夕木春央さんの作品は『方舟』に続いて2作目だが、どちらも最後の謎解きシーンが鮮やか。『方舟』は割と一直線で進み一撃で仕留める構成に対し、本作は謎が多すぎて一体何が起こっているのかわからないまま読み進めた。しかしあらゆる謎が太い一本の紐のように収斂していくのが気持ちよく、視界が晴れていくようだった。こちらの方が個人的には好み。
また、「探偵」という役割の欺瞞や無責任さが繰り返されていたことが印象に残っている。蓮野は仕方なく巻き込まれる形で探偵役を引き受けることになるが、真実を突きつけ糾弾するわけではない。あくまでも傍観者である。つじつまを合わせるのは真実を知った当事者である。その線引きは一見すると冷たい態度にも思えるが、「人間嫌い」の彼なりの誠実さでもあるような気がした。
Posted by ブクログ
「サロメの断頭台」を先に読んだのでシリーズ1作目の本作を遡り読んでみた。
気になっていた、井口夫婦や蓮野、峯子らの人物像が深堀出来たことは勿論良かったが、作品自体もなかなか良い。冗漫な前中半を読んでいる時は「あぁ、デビュー作なんで慣れてないんだろうなぁ、しかし長い…」と思っていたのだが、後半、その冗漫な伏線がつながっていく。所謂トリック構成も良いのだが、そのつなげ方が一ひねりあって(詳しくは書けないが、犯人捜しを逆手にとってそう来るかって感じ)面白い。
話題作方舟とはまた違ったウェット感があるが、このシリーズもまたくせになりそう
Posted by ブクログ
大正時代を舞台にした少し昔風の喋り方をする登場人物たちの雰囲気は良かった。
表題にもなってる絞首商會、そして無政府主義者の陰が作中通してちらついていたが、結局はそこまで関係なかったのは少し期待外れだった。
井口はかなり活躍しているはずなのに、周りからはずっと蓮野の付属品的な扱いをされているような気がして、少し不憫に感じた…笑