あらすじ
NTTは日本の空洞化危機を防げるか
通信150年目の岐路
今や誰もがスマートフォンを持ち、インターネットを使う。ネットなしの生活など考えられないくらいだ。その隆盛を土台として支えてきた通信インフラが巨大IT企業や政治に揺さぶられている。
既に海底ケーブルはその多くがグーグルやアマゾンなどの巨大IT企業が敷設するようになった。これまでNTTなど通信事業者の牙城と思われてきた、電話のコアネットワークにもこれらの企業が進出しつつある。
一方で、ウクライナ戦争に端を発し、政治によるインターネットの分断も進む。5Gでも米中の分断が起こっている。これまでの開かれたネットの世界は夢幻になっていくのか。
こういった巨大ITや政治の力がネットを揺さぶる中で、日本はこれからどのようにしていくべきか。NTTは独自のIOWN構想でその存在感を示そうとする。
本書は、このような激変期を迎えた世界の通信に関する動きに、地政学という切り口でフォーカスを当てる。これらの動きから、来る2030年代の情報通信の世界を展望する。
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Posted by ブクログ
キャッチーなタイトルというよりは、通信業界の現在と今後について知るべく読書。
クラウドが全てを飲み込み圧倒的な力を握ることによるリスクを語った本。奇をてらったり、過度に不安をあおることはなく、可能性が提示されており、参考になる本。
メモ
・GAFAは通信インフラへの投資として、国際通信の重要インフラである海底ケーブルへの投資を加速。自ら海底ケーブルを引いた方が経済合理性に優れることに気づいた。
・クラウドサービスで仮想化によって5Gインフラを構築
・OTT over the topという呼び方は通信インフラにただ乗りするが故のものだったが、今や通信インフラへの投資も行うように。
・海底ケーブル投資額 100億ドルを超える。2022-2024の三年間。世界の海底ケーブル市場は年二十億ドルで推移
・海底ケーブルにしめるビッグテック参画プロジェクト割合は過半を超える
・米中横断海底ケーブルの話があったが米政府にストップがかけられた
・従来通信インフラはクラウドサービスとは無縁であったが、クラウドサービスに乗る形が取られ始めた
通信インフラの仮想化、企業が顧客向けに速度や遅延条件、データ要件などを柔軟にカスタマイズしたサブネットワークを定義できるように
・at&tのコアネットワークはMicrosoftに売却された
・iown構想 光技術を活用し6G時代の基盤から通信に至るまで活用していこうという基本コンセプト
・nttは光トランジスタを開発。電気から光への変換効率を実用的なレベルに。
Posted by ブクログ
現在の通信業界を取り巻く環境がコンパクトにまとめられていて、最近の技術トレンド、政治情勢を把握できる。
海底ケーブルへビッグテックが進出しているという話から、5G、edgeにまでAWSなどのクラウド事業者が進出していて、edgeなのでそれはもはやクラウドではなく、ローカルにまでビッグテックが進出しているということでもあるし、通信事業者が通信を制御する仕組みをクラウド上で作れるほどに信頼性や技術力が上がったということなんだろう。徹底的に規模の経済や限界費用ゼロを狙ってあらゆる領域に進出しようとするパワーには恐れ入る。
そんな中で日本企業がかけるのがオープンRANとIOWN。中国排除の流れもあって5GのRANをオープン化する取り組みで上手くNTTが流れに乗り、それに富士通やNECのような日本企業が追従する形。ファーウェイは排除されるのかもしれないけれど、ノキアやエリクソンに勝てるか。IOWNは技術として注目したい。電気信号を光に変えることで電力を削減し、距離を伸ばすことができる。サーバという物理的な筐体にこだわらなくていいという点に可能性を感じた。
通信も他業界と同様に、米中対立のなかで、インターネットも西側と中国やロシアなどの権威主義国家に分断されつつあり、世界を一つにつなぐオープンなインターネットという夢から覚めつつあるというのが現状のようだ。