【感想・ネタバレ】ウクライナ戦争のレビュー

あらすじ

2022年2月24日、ロシアがウクライナに侵攻し、第二次世界大戦以降最大規模の戦争が始まった。国際世論の非難を浴びながらも、かたくなに「特別軍事作戦」を続けるプーチン、国内にとどまりNATO諸国の支援を受けて徹底抗戦を続けるゼレンシキー。そもそもこの戦争はなぜ始まり、戦場では一体何が起きているのか? 数多くのメディアに出演し、抜群の人気と信頼を誇る軍事研究者が、世界を一変させた歴史的事件の全貌を伝える待望の書き下ろし。

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Posted by ブクログ

ネタバレ

東大先端研専任講師にして、軍事オタクでもある小泉悠による新書。最近新書大賞にノミネートされており、またプーチンのアメリカメディア露出が気になり読んだ。2日ほどで読めた。
1章から4章にかけて、開戦前の2021年から執筆時の2022年9月に至る時系列を辿りつつロシア・ウクライナ戦争の政治的原因・推移を考察し、第5章ではそれを踏まえた本戦争の特徴を述べている。
2021年の春からロシアは演習と称してウクライナ国境に軍を大規模展開しており、その時点で軍事的緊張が高まっていた。これにはロシア寄り(というより自国主義のため他国への介入を好まない)のトランプからバイデンへ政権が移ったことが要因として挙げられている。ウクライナのゼレンシキー(これはウクライナ語表記)も、第二次ミンスク合意の批准やNATO加盟をめぐりアメリカとの外交政策を続けていたが、はかばかしい進捗は得られなかった。
2021年9月には春の軍隊が撤退しておらず、それどころか増えていることが発覚。ここでプーチンは「ロシア人とウクライナ人の歴史的一体性について」という論文を公式発表。ウクライナとロシアの一体性を強調する右翼民族主義的な見解を大統領個人のものとして明確に示した。プーチンの動向は一時平和共存路線をとるかに逸れるものの、2022年明けには開戦は確実に。
当初のロシア側の目的は短期決戦だったらしい。首都キーウに近い北部のアントノウ空港への奇襲からも明らかなように、ゼレンシキーを退陣させ、混乱したウクライナに傀儡政権を樹立することが眼目だった。しかし、ゼレンシキーはロシアの予想を裏切り理想的な動きを見せる。アメリカをはじめとした西側からの武器供与(特にジャヴェリンはウクライナ抵抗のシンボルとなった)も手伝い、ハルキウを守り抜き北部の戦線は膠着、ロシア軍は撤退を強いられる。停戦交渉はウクライナへの歩み寄りを見せる(ただし、ブチャでの虐殺発覚により交渉は決裂)しかし、ロシアはここで東部のドンバス地方へと方針を転換。マリウポリが陥落し、ドネツィク、ルハンシクはロシアの手に落ちる。
当初の作戦に際し、プーチンと軍や情報部との亀裂が明らかに。奇妙なのは、ロシアが戦時体制に入らず動員が限られること。著者はこれを、国民への平穏な生活の保障に原因があると見ている。核兵器の使用も、前著『現代ロシアの軍事戦略』であったように、西側からの介入を牽制する材料としての威嚇にとどまった。
総じて今次の戦争は、いわゆる「ハイブリッド戦争」(戦場外部のファクターが重要な要素となる)のような新しい戦争とは程遠く、むしろ大量動員や兵器の物量によって村落を取り合う古典的な戦争であった。
さすがに現在日本でロシア知識人を代表するような存在なだけあって巧みな論理展開である。現在進行形の現象である今次の戦争が簡潔にまとめられており非常に勉強になった。今後も小泉氏の著書は必読となるであろう。

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2024年02月13日

Posted by ブクログ

ネタバレ

戦争開始前から開始後の経過がまとまって描かれておりわかりやすかった。ことはみんなの予想通り進まないですね。プーチンもゼレンスキーも予測してなかった展開になってそうだな。最後はどうなるのか、、

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2023年07月15日

Posted by ブクログ

ネタバレ

・ベラルーシはロシアの軍事作戦に使われることを拒否してきてはいたがルカシェンコの再選が難しくなったタイミングでプーチンの介入により再選した経緯から、憲法の文言が外されるなどして軍事作戦に使われてしまうようになった背景
・ウクライナの国境付近に配備された軍がロシアの東の地域からも派遣されてきていたり、準備された武器の種類の多さであったり、野外病院が多く設置されていること等からロシアによる進行は政権陥落まで狙ったものになるというアメリカの事前の見立てはかなり正確であった
・ウクライナでゼレンスキーのライバルだった親ロシア派政治家に対しゼレンスキーからの制裁?締め付けが厳しくなったタイミング、妙にロシアに甘いトランプ→比較的厳しい(だが強行派というほどでもないが)バイデン政権に変わったタイミングが重なっていた
・そもそもプーチンの論文等を読むとウクライナは本来ロシアの一部であり人工的に切り取られた結果ウクライナ化が進んでしまった、と言う考え方
・ゼレンスキーはヒーローではないしバイデンもやれること全て尽くした訳ではないが圧倒的に悪いのは戦いを始めたロシア
・このタイミングでプーチンが戦いを始めた理由はよくわからないが結論。何かが差し迫っていたタイミングでもない。NATO拡大を阻止という大義名分はあるがそれなら北欧がNATOに加入した時の反応の薄さが矛盾。プーチンにとってウクライナは本来ロシアの一部であり自分が生きてるうちに民族を統一したいといった考えがあった可能性
・ロシアだけを責めるのかという意見もある、ウクライナのネオナチ化や暴力的支配等ロシア側の言い分は全てロシア側にも言えることであり程度で言えばロシアの方が圧倒的に上回る。客観的証拠が出せていない主張も多い。最終的にロシア側から侵略戦争を仕掛けていることからも厳しい目を向けなければならない。侵略戦争はいつ自分の身に降りかかるかわからない
・核の抑止力は強い。アメリカ等の対抗措置が縛られているのは結局第三次世界大戦、そしてロシアの核を恐れているから。ロシアにとっても同じだが。

わかりやすくよかった。軍事的な話はあまり頭に入ってこなかったが国と国の関係や動きはよく理解できた。
核の抑止力がこれだけ効いている今の世界の中で、唯一の被爆国である日本ができることは間違いなくあると思う。核兵器なんて使われるわけない、被爆国なんて過去のこと、なんて思わず真摯に受け止めたい。

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2023年06月20日

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