あらすじ
「なぜ日本人は競争が嫌いなのか?」「競争のメリットとは何だろうか?」「格差の感じ方が人によって違うのはなぜか?」「私たちが公平だと感じるのはどんな時か?」日本は資本主義の国々のなかで、なぜか例外的に市場競争に対する拒否反応が強い。私たちは市場競争のメリットをはたして十分に理解しているのだろうか。男女の格差、不況、貧困、高齢化、派遣社員の待遇など身近な事例から、市場経済の本質を捉え、より豊かで公平な社会をつくるヒントをさぐる。
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Posted by ブクログ
競争と公平感
―市場経済の本当のメリット
帯に「週間ダイヤモンド」2010年のベスト経済書とあったので、思わず購入。本の山に眠っていた物を発掘しました。貧困問題、非正社員問題、外国人労働者問題など数々の問題を取り上げながら、全体として日本人と競争に関して論説しています。
日本人は先進国の中でも飛び抜けて競争が嫌い。ふむふむ。それは教育から来ている。なるほど。現在の日本の教育では金融リテラシーは教えられていない。ほー。
著者は公平さを保つ介入を政府が行いながらの競争市場が健全で効率的な経済成長を促すことを盛んに論じています。でも、そうなっていない。そこには、為政者たちが既得権を死守するように誘導している日本社会がひしひしと感じられるようになる良書だと思います。
一般庶民は金融リテラシーなど持たない方が商売人にとっては都合が良い(多くのサラ金が金融リテラシーの低さによって商売していた)。競争市場をつくったら、既存の大企業はたちまち勢いのある企業に淘汰されてしまう(ホリエモンに対しての驚くほど重い実刑判決)。
そういったもろもろの世の中の流れを理解する上で、役に立つヒントがいろいろと入っています。
逆に、竹蔵が経済学の言外を感じたのは、モデル構築によるシミュレーションの結果というのは、モデルの精度次第で大きく結果が異なってしまうということ。経済活動という極めて複雑で人の感情によって大きく左右される活動をモデル化することがそもそも難しいということ。逆を返せば、モデルの構築時の恣意性が簡単に都合の良い結論を導けてしまうことを改めて認識させてくれました。
いずれにしても、いろいろとショッキングな結果(経済学部卒の人の20%が複利計算ができない?)も満載で、そういったところも楽しむことができます。
コストパフォーマンスが異常に高い本で、この本であれば、公平な競争市場でも生き残れると思います。はい。
竹蔵