あらすじ
祝・柴田勝家(武将)生誕500周年 文化人類学、SF、バーチャルアイドル――《信仰》をテーマに繋がる柴田勝家の真骨頂。「クランツマンの秘仏」ほか全7篇の短篇集
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Posted by ブクログ
これはおもしろい。それに読みやすい。SFならではの難解な世界観や描写は抑えられていて、民俗学的な要素が物語の奥行きを広げている感じ。
AIや異星人など、生身の人間ではないものを主体にすることで人間らしさを浮かび上がらせるのが絶妙に巧い。
■オンライン福男
感染症の拡大の影響から新年の福男をオンラインで決める話。話が発散して無茶苦茶になっていく。コロナ禍を思い出す一話。
■クランツマンの秘仏
深い信仰には質量がともなうというエセ科学?に囚われた男と、その男の名誉を回復したい子どもたちの話。これは事実なのか?と思わせるノンフィクションのようなスタイルに引き込まれる。
■絶滅の作法
人類が絶滅した後の地球で、人類のようにふるまいたいロボットが米を育てたり寿司を作ろうとする話。昔に想いをはせるようなノスタルジックな味わいがいい。
■走馬灯のセトリは考えておいて
故人の生前を再現するAI「ライフキャスト」でバーチャルアイドルのラストライブを作っていく物語。最期の近い「中の人」の想いに胸が熱くなる。
Posted by ブクログ
短篇集、ざっくり信仰が全体的なテーマかな。、
推しは宗教、推し活は信仰、オタクがよく言うそれをSF要素も入れつつ考察した感じがして面白い。
クライツマンの秘宝の、信仰は質量を持つ、普通に考えればエセ科学でオカルトに取り憑かれた思想って感じなんだけど、文章の"ちゃんとした"感じと、オタク強さに通じる信仰の持つエネルギーの莫大さを知ってる現代人の感覚としてはホラ話だけどどっかにこういう学者いるんじゃないかなって気もしてくる。
論文、エッセイ、小説、色んなジャンルっぽい文章が詰まってて面白かったし、そのどれもが虚構と現実が入り混じって混乱する感じが面白い。自分の無知故にちょっと信じてしまいそうね。
Posted by ブクログ
表題作の『走馬灯のセトリは考えておいて』がとても面白かった。
人が死んだ後にライフログをもとに自分の分身を残せるようになった未来の話。
2023年時点においてすでに故人の生前のライフログやアーカイブを元に、あたかも亡くなった人が目の前にいるかのように再現できる技術が生まれていることから、そう遠くない未来に、終活に向けて自分のアーカイブを整理するという行為が当たり前になるのかなと思った。
自然言語処理のAIの台頭により、故人の受け答えの癖を再現できるAIのような存在も現実味が増してきていると感じる。
本書においても、技術の進化と共に死との向き合い方が変化してきていることの説明や、ライフログから試写を蘇らせることによる葛藤が描かれていて色々と考えさせられる内容だった。
巻末の解説では、アイドルに対する「推し活」の心理と、宗教における「信仰」の類似性から本作品の構造を説明しており、作品を理解する上で非常に参考になった。
“葬儀とは死者の人生に生者が意味付けをするための宗教的儀式であり、それ自体が他者を重み付けする「推し活」である”(解説より)
Posted by ブクログ
――
大霊界である…!
柴田勝家満喫セット。これ程バラエティ豊かな短編集をひとりで組めるなんて恐ろしいことである。名前以上にすごいひとだ…
壁、や境界、が文学のテーマになって久しいけれど、純文学がその境界を越えようとするのに対し、SFはその境界を曖昧にしようとする独特の死生観がある。そのあたり、所謂「非科学的」な幽霊や妖怪変化と通じるところがあるというのも不思議なもの。
技術で死を克服しようとする、という形は万国共通でも、例えば造り物の生命を繋いで克服するのと、死後もコミュニケーションを取れるようにすることで克服するのとではアプローチが違っていて。
それって死後の世界が身近な日本ならではのSF発想なのかとも思ったのだけれど、そのあたりは後続の研究が待たれるところです。いや探せばもうあるだろうけど。
繋がる、ことで境界を克服するというのは、場合によっては甘々なだけの理想論に聞こえてしまうが(それは世界中が繋がりつつあるいま、そのネットワーク上に蔓延する不理解が示しているわけだけれど)、それでも繋がること、繋がっていることが希望であって欲しいというのは、切り癖のある自分としてはあまりに身勝手で、そしてその分切実な想いでもある。
はてさて。
ポストコロナSFである「オンライン福男」に始まり、異常論文の嚆矢である「クランツマンの秘仏」、少し不思議なディストピア小説とも読める「絶滅の作法」から、宗教に説明をつけるかのように挑戦的な「火星環境下における宗教性原虫の適応と分布」、自伝的小説(爆笑)とも云える「姫日記」に、これぞ表題作「走馬灯のセトリは考えておいて」。
「クランツマンの秘仏」は民俗学SFミステリ。あまりの完成度に舌を巻く。こういうのばっかり読んでると、フィクションと現実の区別が付かなくなるのよ?
「火星環境下における〜」は宗教の伝播を寄生虫の繁殖に重ねて、風刺的に見えるのだけれど実際核心を突いているようでぞっとしない。小島秀夫の声帯虫のような発想にも繋がる恐怖があった。
そして表題作たる「走馬灯のセトリは考えておいて」。
有り得べき未来、というSFの根本をベースにして、バーチャルライヴというエンタメを中心に据えた物語は、一冊を通してある、境界や繋がりへの視座を纏め上げるものであり、
その上で、『ニルヤの島』から横たわる生と死の相克、と云うテーマが、急激に明転するのを感じた。
心強い返歌のようで。☆4.4
Posted by ブクログ
私にとってSFはどうやら合う合わないの振り幅が大きいらしい。
生死や信仰をテーマにしたこの短編集は、読めないお話もあった。
理解できない設定で小難しい言葉を並べ立てられると私の乏しい頭はバクハツしてしまうwww
言葉が上滑りの滑りまくりで地につかないし、入ってこないのでなんの感情も湧かない
そんな中で気に入ったお話がいくつか
「オンライン福男」
年1の行事が第18回って18年も!?
福男にかける熱意が素晴らしいw
インターネットの海は広大だ
「クランツマンの秘仏」
ホントにそんな史実があったのかと思っちゃうくらい真実味があったw
意外と古い昭和の時代の設定なのが湿った空気感を出していてよい
これが元で異常論文って書籍ができたんだって?
「姫日記」
はわわ…がツボwww
単純に面白かった。
バグばっかりのゲームも楽しいもんですよw
「走馬灯のセトリは〜」
いちばん共感が深いお話だった
このくらい生と死の境界線が曖昧になったら死ぬのも怖くないのかな…