あらすじ
ヘレナ・フレミングは憂鬱だった。家族で引っ越してきたシェトランド本島の家の納屋で、まえの持ち主が首吊り自殺を遂げて以来、何者かが敷地に侵入し、謎めいた紙片をあちこちに残していくのだ。たまりかねてジミー・ペレス警部を訪れ相談をした翌日、同じ納屋で今度は女性の首吊り死体が発見される。彼女は島の旧家モンクリーフ一家の子守りだった。ふたつの死に関連はあるのか? ペレスは上司のウィローや部下のサンディとともに捜査に当たる……CWA最優秀長編賞受賞作『大鴉の啼く冬』から始まったペレス警部シリーズ、感慨無量の最終巻。/解説=古山祐樹
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Posted by ブクログ
シェトランド四重奏に続く、The Four Elements Quartetの完結編。
そもそもが『哀惜』を読んでみたくて、それまでの作品を読んでおこうと思って改めて辿り始めたシリーズ物。
なんだかんだで凄く長い時間が掛かってしまったなと思いつつも、その思いを抱いたのが2023年6月かと思い返すと、あちらこちらに手を伸ばしがちな自分的にはそれでも案外短期間に読み進めたなと感慨深し。
とにかくこの著者の描き出す空気感が好き。
正直、ミステリとしての意外性だったり新奇性というのは全くない。
むしろしっとりと淡々と。
犯人は誰!?というリーダビリティもあるようでないようで。
真犯人はいつも思ってもいなかった人物だけれど、そりゃそうだ、そこに焦点当てていませんでしたから。
殺人が絡む物語、人の悪意がつまびらかにされていく物語なのに、語りが心地良くて、ずっと読んでいたい気持ちにさせられる。
読書びとなら誰しもその作者、ジャンル、シリーズがあると思うが、自分的にはこの著者がその一人。
本作の印象的な点は、あのジミー・ペレスがそんな態度を示すとは!!
それ以外はこれまで同様の雰囲気なのに、その一件だけがこれまでのどの作品とも異なり、気持ちの面で大きなしこりを抱えながら読むことに。
ただそれはサイドストーリーに過ぎず、全体しての事件はそれとは別にいつもどおり淡々と進む。
最終的には、結局のところジミー・ペレス的決着を着けるのだけれど、シリーズ全体としてのフィナーレは思っていたよりもあっさり。
が、それすらも潔さを感じ心地よい。
思えば、現役海外作家さんのシリーズ完結編て意外とないような気がする。
終わりを書くのって難しいんだろうな、とふと思った。
そもそも終わりまで訳してもらえていないという問題もあるかもしれないが。
次はいよいよ『哀惜』。
Posted by ブクログ
『シェトランド』シリーズ最終巻。
相変わらずの切れ者警部、ジミー・ペレス。だけど同時にこのオトコ、ダメダメ男。そこが魅力的なんだけれど。
シェトランドである程度裕福なふたつの家族。次々と関係者が殺される。
あんなに美しい諸島なのに人間臭いドロドロとした感情が見え隠れする。
嫉妬、憎悪、それらがついには人をも殺す。
今回のテーマは突き詰めて言えば虐待。
放任主義も言葉を換えればネグレクト。
負は連鎖するという悲しい親子関係。
国、民族など関係なくそういったモノはある。
Posted by ブクログ
シェトランド島シリーズの八作目。
ウィローが妊娠(!)を告げたのに、
喜びもせず感じの悪いペレス。
たしかに、
刑事の仕事をしながら、
元婚約者の娘キャシーを育てるだけでも大変なのに、
もうひとり子供を持つことの責任の重さに腰が引けてしまうのはわかるが。
前の家の持ち主が納屋で首吊り自殺をしたために、
肩身がせまくなっている移住してきた家族。
同じ納屋で、近くの家に住み込んでいるベビーシッターの若い女性が
首を吊っていた。
ベビーシッターと言っても、一番上の子供はティーンエイジャー、
子供たちの送り迎えや世話だけではなく、家事も手伝う、
雇い主にとっては都合の良い存在だったらしい。
明らかに自殺ではなく、
彼女の恋人やその母親、雇い主や既婚者の元恋人が疑われていく。
被害者の人となりがどうも納得がいかないし、
被害者が世話していた子供たちとウィローたちが話をする場面も、
後から思えば不自然な気がして、ちょっともやもやする。
とはいえ、
サンディがプロポーズに成功したし、
ウィローとペレスも上手く行きそうなラストで良かった。
Posted by ブクログ
ジミーペレスのシリーズ最終話。何はともあれジミーペレスがようやく幸せになれそうで良かった(子どもが出来たとウィローから聞かされた時の、ジミーの態度は酷かったけど!)。事件の方は犯人も含めて、後味が悪かった。追い詰められた子どもたちと無関心の親、虐待の連鎖。子どもが関わる犯罪はとても悲しい。