【感想・ネタバレ】大暴落1929 (日経BPクラシックス)のレビュー

あらすじ

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日経BPクラシックス・シリーズの第3弾。
バブル崩壊、株価暴落のあとに必ず読まれる、恐慌論の名著。

●会社型投資信託のブーム
●レバレッジ効果への信仰
●バブル紳士の跋扈点
●動きの鈍いFRB

これ、いつの話?
第二次大戦後最悪の金融危機といわれるサブプライム・ショックに見舞われている2008年の話ではない。
1929年の大暴落、その後の世界恐慌につながるアメリカのバブル当時の話である。

「本書は1955年に初版が発行された。以来、40年、版を重ねている。この本がこれだけ長いこと売れ続けているのは、
著者はともかく中身がいいからだと評価していただいているようだ。まずいくらかは役に立つかも知れない。
だがこの本が時代を超えて長寿を保っているのは、別に理由がある。増刷され本屋に並ぶたびに、バブルや株安など
何事かが起きるのだ。すると、この本への関心が高まる。そう遠くない昔に好景気が一転して深刻な恐慌につながったときのことを、
多くの人が知りたいと考えるからだろう」(1997年版まえがき)

ガルブレイスの作品の中では小品だが、中身は濃い。サブプライム危機が世界経済危機に拡大しそうな現在の状況を考えるうえで、
貴重なテキストといえる。

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Posted by ブクログ

ネタバレ

1929年の株価大暴落について、米国内の状況が書き綴られています。リーマン・ショックあたりの本は何冊か読んでたけど、1929年の暴落についての本は初めてでした。

リーマン・ショックの際にCDOがブームになっていたように、この時は会社型投資信託がブームになっていたそうで、これがCDO同様歯止めの効かない流れを生み出した一因になったようです。

私が理解した投資信託が暴落の一因となった仕組みは、以下の通りです。
①投資信託が資金調達する際に、予め利率や配当が決まっている社債等に加えて普通株を発行。
②投資信託が設立後に投資した株式が値上がりすると、投資信託の価値が上がるが、社債等は利率等が決まっているため価値は変わらず、この価値の上昇分全てが普通株に反映される。つまり、投資した株式の値上がりの数倍の価値を投資信託が生む。
③これは即ち値下がりした時に数倍の価値で値下がりすることを意味するため、諸事情で下落した株式の値下がりが雪だるま式に膨らんだ。

今はこんなことにならないような規制がされているのかな...??
知っている方がいたら教えてほしいところ...

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2019年08月20日

Posted by ブクログ

ネタバレ

<米国の企業合併の変遷>P80
1.1900年前後:規模の大きい企業による小さい企業の吸収
・対象:同一または関連する製品を同じ国内市場に向けて製造販売している企業。
・目的:競争を減らす/なくす、競争を支配する
・結果:誕生した巨大企業は業界に君臨し、価格・生産に多大な影響力を発揮。投資、技術革新のスピードにも影響を与える
→電力、ガス、水道、乳業、たばこ、鉄鋼

2.1920年代:
・対象:正面からの競争相手ではなく異なる地域を商圏よする企業同士によるM&A
・目的:地方企業にありがちな非効率、無計画、無知、規範の欠如の駆逐(競争の排除ではない)
・結果:(豊富な金融知識など)洗練された都会の経営陣が(経営の)指揮を執ることによるメリットの享受
______________________________
P285~
<恐慌が長引いたことの主たる要因>
1.所得分配
・貧富の差は大きく、富裕層の不労所得が個人所得に占める割合が大きい
→高所得層の奢侈品の消費に依存した経済構造への傾斜
☆恐慌後☆
→株価暴落への感応度高い富裕層の支出・所得を直撃。景気の急激な落ち込みへ

2.企業構造
・新種の経営形態である持ち株会社と投資信託の結びつき
→下流側の事業会社から支払われる配当を、上流側の持ち株会社が発行した社債の利払いに充てる方法により、社債のデフォルトにより企業グループ全体が破綻する構造(逆レバレッジのリスクと損害が大きい)
→設備投資よりも社債利払いを優先させるインセンティブが働く
→設備投資の縮小によるデフレ圧力の強化
→企業収益減少、事業縮小、新規借り入れ困難(デフレスパイラルへ)
☆恐慌後☆
→持ち株会社方式の崩壊と投資信託の破綻により事業資金の出し手が不在に
→金融・証券の不況が実体経済に波及(受注減、失業増)

・企業規律のゆるみ(企業犯罪の全盛期)

3.銀行システム
・経営基盤の脆弱な銀行が多数存在
→(好況時でさえ)一行が破綻することにより破たんの連鎖が起きやすい状況

4.対外収支
・米国はWWⅠ後に純債権国へ転じ、(高率の関税の結果としての)貿易黒字に加えて資本収支の黒字が蓄積
→債務国から米国へ金流入+公債形式による貸し出し増(民間金融機関→対独・対中南米)
→高額な引受手数料獲得のための競争激化で、債権者の利益に反する情報の隠蔽と発行体への賄賂の恒常化
→(輸出先でもある)債務国国債のデフォルト率上昇を招く
☆恐慌後☆
→米国金融セクターの資金不足により対外融資打ち止め
→債務国は輸入減により財政均衡を図る圧力にさらされる
→主要輸出品目である小麦、綿花、タバコに打撃。米国農業セクターの苦境

5.専門家の経済知識
・専門家の助言は事態を悪化させる性質のものが多かった
例)
質問:「景気回復を促進する政策とは?」
専門家:「財政均衡!」
民主党:「賛成。我が党の綱領にも記されている」
共和党:「賛成。我が党の至上命令である」

例)
質問:「金本位制下で、我が国は膨大な金準備を蓄積している」
専門家:「金本位制からの離脱政策は不安だ」
専門家:「このままではインフレになるのではないか」←史上初の激しいデフレ状況
専門家:「インフレを回避するため、より財政均衡政策に力を入れよう。利下げ不可、信用供給不可、貸出基準も厳格なものを維持しよう」
専門家:「金本位制に反するドル切り下げなどもってのほかだ!」
民主党:「賛成」
共和党:「賛成」
フーバー大統領:「通貨の変動や切り下げを行わないこと、必要とあらば増税を行ってでも財政均衡を実現すること、国債の増発を控えて政府の債務をこれ以上増やさないこと。以上の点を直ちに確実に実施すれば、国は安定するでありましょう」
→金融政策は八方ふさがりへ
______________________________

歴史って面白いですねぇ。

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2013年11月29日

Posted by ブクログ

ネタバレ

1929年前後の当時の状況が詳細に書かれている。
経済本というよりは一つの読み物のように感じたが、そのおかげで当時の「空気感」がとても伝わってきた。
暴落直前の描写によって、そのドキドキ感を味わうことができた

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2012年09月01日

Posted by ブクログ

ネタバレ

結局のところ、今も昔も、熱狂の渦中にいるヒトたちは周りが見えなくなるし、イマを信じたいし、異常な状態にあるのかどうかすらわからなくなる。
仮に異常な状態だと分かったとしても、やめられない。

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2012年01月06日

Posted by ブクログ

ネタバレ

アメリカの大恐慌の流れを追った本。

「暗黒の木曜日」に株価大暴落、というだけのシンプルな流れではなく、様々な人の心理によって動くリアルな市場をここに見ることができる。

バブルが全く認識されていないわけではない。それでも止まらない投機ブームとその崩壊という過程は非常に興味深い。

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2011年06月21日

Posted by ブクログ

ネタバレ

【内容】
 本書によって、バブルや投機ブームがなぜ生じたか、当時の社会情勢を中心にして、示唆的な説明がなされる。名目上責任ある規制当局の人間が「風船を破裂させるのは簡単だが、針を刺して徐々に空気を抜くのはむずかしい」(p52)と考えていたこと、これが問題の本質を捉える言葉だと感じる。何らかの対処の必要性を感じる人間は、人工的に破裂させた場合、責任が明確になる。そして、誰もが責任を負いたくなかった。FRBは「自ら望んで役立たずにな」り(p62)、フーバー大統領は責任は政治的干渉を免れているFRBにあり、自分にはないと言い聞かせた(p54)。結局、投機への対処に法律どころか、警告すら発されることは無く、何かをやっていることを示すために、無目的会議が開催された。
 
 社会レベルに目を転じると、投機ブームを支持した重要な要因は「時代の空気」(p275)であった。意外にも、1929年のピーク時に投機に加わっていた人間はせいぜい100万人以下しかいなかった(p132)。しかし、「アメリカ人の生活が株式市場を中心に回り始め」ていた。報道は株高が永遠に続くかのように楽観的なものであった。彼らは自らゲームの参加者になっており、水を差すような言葉は発しなかった。少数ながら投機への懸念を表明する人は、ほとんど注目されないか、「破壊工作員」として排斥されるかのどちらかであった。著名な学者ですら「株価は恒久的に続く高原状態(プラトー)に達した」(p120)と主張し、ハーバード経済学会は当初の見通しから転向し、下落が続く中でも「不況が起きる確率は無視出来る程度」と主張し続けた。
 
 投機ブームへの免疫は時代を経るごとに少なくなっており、先の好況で投機のための貯金が潤沢に存在し、功名な経営者や学者に対する「無邪気な信頼感」(p276)が存在した。これらがブームを支えた。

【感想】
 1929年になぜあのような大暴落が生じたか、それは当然ながらその前の投機ブームに影響がある。本書ではその原因を基本的には「時代の空気」という社会的要因に求めている。「経済は基本的に健全である」といった、国民を安心させようとする発言を、主要な経営者や著名な経済学者、政治家の発言を引きながら、当時の状況がいかに麻痺し、浮かれていたかを示すことには成功していると思う。また、筆者の筆のうまさからか、読み進めるのは楽である。
 
 この株価大暴落がなぜ3年も続いたのか、最終章で⑴所得配分の偏り、⑵企業構造、⑶銀行システム、⑷対外収支、⑸専門家の経済知識、から少し説明している。しかし、なぜ株価大暴落が実体経済へ影響を与え、ひいては大戦の要因ともなる近隣貧窮化政策(通貨切り下げ競争)を向かえるに至ったのか、その説明に関しては米国の社会状況を描くだけでは全く不十分だと感じる。非主流派経済学者でで社会的要因を組み込み、経済を説明することには興味がわく。大暴落以後、世界構造が変化たことを鑑みると、本書内容では、他のバブル(欧州通貨危機や1997年アジア危機、日本のバブルなど)と大暴落がどう違ったのかそれが分からない。
 でもよく考えると、タイトルのThe Great Crashは当たったときの衝撃が如何に凄いかを示唆しており、The Great Depression(恐慌の中身について)とは言ってないのか。
 

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2012年05月23日

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