あらすじ
留学先のアメリカで孤独な日々をおくる19歳の尚美を救ったのは、多様な生徒が自ら運営する学生食堂〈サード・キッチン〉との出会いだった……仲間に支えられ成長していく姿に共感、感涙必至の青春小説!
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Posted by ブクログ
ゴールドサンセットがすごく良かったので、白尾悠の過去作を読んでみようと手に取った1冊。いや、これもまた凄かった。
あしながおじさんの現代(というても1998年)版、女子一人でアメリカの大学に留学した主人公のナオミ。幼いころに父親を亡くした彼女の家は決して裕福ではないが、正体を母しか知らない謎の援助者のおかげで留学資金を調達できた。条件は一つ「学園生活の手紙を定期的に送ること」
この設定であれば、そりゃもう外国で色んな友人を作って揉めたり仲直りしたり、恋したり挫折したり、青春学園モンの楽しいヤツ…って思うやん。その金八感や裏切られるから。
ダイバーなんとかとかLGBTQとか価値観の多様性とか、最近色々騒がしい昨今のあれやこれや…がぶっ刺さるぞ。そういう問題に直面して主人公思いっきり悩むから。白人社会で差別される側の苦悩かと思ったらそれだけちゃうから、そんな甘いもんじゃないから。
読んでどんどん苦しくなる。自分の言ってきたことやってきたこと、常識かなぁと思っていたけど違ったよねって最近気づいたそのクソ甘え…。もう人と顔を合わすのがイヤになるから。主人公もそうなるんやけど、こんないい子がそうなるのに、俺程度は「生きててすみません」だから。
それでもね、そういう罪科を背負って生きるんよ。赦しは得られないだろうけど、これ以上罪を背負わないよう、そして少しでも償える言動をして生きるんよ。
覚悟を迫られる小説。読んでる間結構ツラかったけど、読んでよかった。もっぺん腹を括れた
Posted by ブクログ
【自分が持つ差別意識と向き合い続ける物語】
以前読んだ短編集「舞台!」の5人の作家で一番気になった、白尾悠の作品である。
アメリカ合衆国に留学しているとは言え、決して英語がぺらぺらなわけでも頭が冴えているわけでもない主人公、尚美。彼女は、今まで気づかなかった自分の中にある差別意識や、国際感覚のなさに日夜うにょうにょしながら、非白人が集まる学内組織「サード・キッチン」に少しずつ居場所を得ていく。
40年前、多少はひっかかりひっかかりしながら、留学先のメキシコで自分の立ち位置を探していた僕。自分が差別意識の固まりだからこそ、その意識と「社会的に差別されている人たち」に対する向き合い方は区別をつけたいと考えている僕。そんな僕を、自覚しながら読ませる作品だった。