【感想・ネタバレ】ラインマーカーズ ~The Best of Homura Hiroshi~のレビュー

\ レビュー投稿でポイントプレゼント / ※購入済みの作品が対象となります
レビューを書く

感情タグBEST3

このページにはネタバレを含むレビューが表示されています

Posted by ブクログ

ネタバレ

2003年刊行の歌集『ラインマーカーズ』に単行本未収録の『ピリン系』『手紙魔まみ、教育テレビジョン』の連作を加え文庫化。
表紙のLinemarkersの文字は、装丁を請け負った名久井直子さんが、以前文通していた外国の男の子の手紙の文字を切り貼りして仕上げたそうだ。
よく見ると“k”が“R”にも見えていて、そこがこの歌集にぴったりだと思う。
間違った“聖書”ということなのだろうか。

穂村弘さんの単独歌集を読むのはたぶんはじめてだと思うが、穂村さんが影響を受けたという少女漫画みを強く感じた。
そういう目で見るからかもしれないけれど、特に私も大好きな大島弓子さん色が強い。
脆くて強い、理想の“女の子”を大島作品で理想化したのだろうか。
昔、なにかの文章で、穂村弘の歌はマッチョ、という評を読んだのだが、意識してみるとそれも感じる。
弱々しいふりして、その実“男らしさ”にも憧れていて、女の子を守るふりして守られたい。のかも。

『手紙魔まみ』から抜粋された歌は、私も好きな歌が多い。

特に好きなのは『手紙魔まみ、完璧な心の平和』の中にある、有名な一首。

[ハロー 夜、 ハロー 静かな霜柱。 ハロー カップヌードルの海老たち。]

優しくてあたたかくて泣きそうになる。

暗く冷たい夜と朝をいくつも越えて、まみは夜中に起きだした。
お腹が空いてカップヌードルの蓋をめりりと開ける。
外は寒い。
こんな寒い日は霜柱がいつもの土手で育っているだろう。
カップヌードルに熱いお湯を入れて待つ。
静かに育っているあの土手の霜柱に心の中で挨拶する。ハロー。
キッチンタイマーが鳴り響き、カップヌードルの蓋をまた開ける。
湯気とともにピンクの小海老たちが揺らめく。
ハロー カップヌードルの海老たち。
容器の熱さがもどかしくも嬉しい。

夜は辛いばかりではない。
美しい霜柱は夜のうちに育ち、干からびた小海老たちはお湯の中でまた泳ぎだす。
『完璧な心の平和』を手に入れたまみは最強なのだ。


って、すみません。
読んでくださった奇特な方、ありがとうございます。

あと、この本とはなんの関係もない私事ですが、憧れの新聞歌壇に初掲載されました。
中日新聞の中日歌壇、小島ゆかり先生選で、祖母の集めた五円玉のことを詠ってます。
地方紙なので、購読者が少なさそうですが、もしも購読されている方がいたら、どれどれ、と、覗いてくださったら幸いです。
作者(私)の心情まで想像してくださった小島先生の評が嬉しかったです。








0
2023年09月10日

「小説」ランキング