あらすじ
ポストコロナの激変する環境下において、企業が将来像を確立することの重要性は夙に指摘されるところである。特に、我が国に多い多角化企業やグループ企業では、傘下の事業の成長状況を見据えながら、そのバランスを取りつつ、企業全体としてどのように将来を描いていくのかが益々重要な経営課題となりつつある。
NTTによるドコモ完全子会社化や、ニトリによる島忠TOBなども、グループにおける全体最適を考えつつ、次世代の成長を見据えるという流れに即した動きといえるだろう。
しかし、日本においてはこうした「企業(全社)戦略」については従前語られてこなかった。戦略には大別して「事業戦略(Business Strategy)」と、「企業(全社)戦略(Corporate Strategy)」がある。前者については昨今理解も進み、数々の良書も出版されてきたが、後者についてはほぼ未開拓である。経済産業省の事業再編研究会においても「日本企業には、事業戦略はあるが全社戦略がない」ことが問題意識として共有された。そして、コーポレートガバナンス・コード改訂においても「資本コストを見据えた事業ポートフォリオ・マネジメント(=全社戦略)の確立」に関する要請が強化されることになった。
こうした流れを受けて、企業側も「本社を司令塔とする全社戦略、全社改革」(いわゆるCX、Corporate Transformation)の必要性に関心が高まりつつある。
事業ポートフォリオ・マネジメントに強いフォローの風が吹く一方、「では具体的にどうすればいいのか」に応えられるような書籍は驚くほど少ない。本書は、強まる「全社戦略」策定ニーズに向けた教科書の「決定版」である。
感情タグBEST3
Posted by ブクログ
全社戦略=経営資源配分、ポートフォリオ管理という前提のもとで、全社戦略を網羅的に説明している教科書。各チャプターはコンパクトだが、教科書的なので読むのは少し骨が折れた。付箋だらけ。所々読み返して、自分のものにしたい。
Posted by ブクログ
経営戦略というジャンルは経営学の中では怪しげな領域で、抽象的なあるべき論か、現実の後追い的な解釈か、一見、もっともらしく見えても、本当のところはよくわからない。
それでも、事業戦略はそれなりの議論の蓄積があるわけだが、全社戦略になると怪しさも極限だ。結局、これは経営者の直感とか、好み、経験の問題で、筋の通った議論はあまりない気がしていた。
そんな全社戦略をここまで明確に体系化し、学問的にも、実務的にも、まとめることができるとは、本当に驚きだ。
内容的には、これまでバラバラに読んできたもの、経験からなんとなくそんなことだなと思ってきたことがすっきり綺麗にまとまっている。そして、それぞれのパーツがお互いに関係しあって、全体として整合的なフレームワークを作っているのは、もはや感動レベルだ。
もちろん、これを読めば、全社戦略ができるというようなものではないが、でも何を議論すべきなのかが明確であるというのは、実務的にはとてもありがちことだ。
内容的には、☆は5つだが、内容的に難しいところも随所にあって、私の理解が十分ではないところもありそうなので、☆4つとしてみた。
これからもリファレンス的に使って、一読してわからなかったところも少しづつ解明していきたい。