あらすじ
亡き父、弘之の口癖は「一回たりとも不味いものは食いたくない」であった。朝食をとりながら夕食のメニューを訊ねて周囲をゲンナリさせ、気にくわない食事に出くわせば「一回損した!」と本気で憤怒する。そんなワガママで怒りん坊の父に振り回されても母は家族のために台所に立ち続け、娘サワコは冷蔵庫から干からびた食材を発掘しては、危ない料理をせっせと作る。爆笑必至の食エッセイ。
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Posted by ブクログ
食べたいものが思い浮かばない、でも何か用意しないと、あ~やりたくな〜い〜、という時に一つか二つ、話を読んで励みにさせてもらった。
著者は明るくたくましく、きっちりし過ぎない性格も良い。ちょっと賞味期限が切れちゃったやつも、こうすれば食べれる、いけるいける、とやっていくところも、普段食材を管理したりできてなかったりする身としては心が軽くなった。
ちょいちょい出てくるミルクトーストの話もよかった。あ、ご存知ない?から始まって、作り方は、カリカリに焼いたトーストに砂糖とたっぷりのバターを乗せる。そこに熱々の牛乳をかけるとトーストが牛乳を吸い込み、どんどんどんどん膨らんで、ぼよんぼよんになったら出来上がり。
トーストを大きめのスプーンで食べると、口の中にバターの香りと甘さが広がり、ああ風邪が治りそう〜、と思ったものだ。っていう子供の頃の思い出話。
読んでいると、何となく心が休まって少し食欲が湧いてくる。それなら食べたいな、と自然に思える文章がとても良かった。
そして、お父さんは基本的に恐ろしい。これやるの面倒だなー、と思った時に、いやいやアガワ家の食卓に比べれば天国だ、あのお母さんはすごい、と時々思い出して気力をもらっている。