あらすじ
私を助けて――。生と死の選択は誰が決めるのか!?蔑まれた者だけが知る深淵。声なき声は届くのか!?――。命の重さの重要性を問いかけ、連鎖する“いじめ問題〟に一石を投じる、青春ミステリ小説。東京の進学校に通っていた、高校一年の成瀬航基は、母の再婚をきっかけに、ある田舎町に引っ越すことになった。転入して間もない学校生活は順調に進んでいたが、そんな状況が一変し、突然いじめのターゲットになってしまう。いじめは次第にエスカレートしていき、航基は身も心も耐えられなくなっていく。不条理な目に遭うたびに心は削られ、誰にも相談できずに、我慢の限界を迎えた航基が出した結論は「死」。地元で『ゴーストリバー』と呼ばれる河を自殺の場所に選ぶが、その河でほとんど学校にも登校せず、真面目に授業も受けない、クラスメイトの月島咲真と出会う。そんな咲真が航基に対し、「報復ゲームに参加しないか」という衝撃的な一言を放つ――。
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Posted by ブクログ
虐めがテーマにあるから全体的に暗めだったけど、咲真と成瀬の微妙な距離感の中でお互いがいい影響を与えられる関係は本当に素敵。希望や目標を与えて合う、家族よりも深い絆があるように思えた。「誰の役にも立てなかった奴は天国に行けない。」という言葉は、多分誰もが怯える言葉なのでは?生きる意味とはみたいな抽象的で大仰なことを考えるのは好きじゃないけど、この本のおかげでどう生きるべきかを考えてもいいと思った。「弱さを武器にして生きたくない。」という言葉も刺さった。生きられるのに選択される死、生きたいのに選択さぜるを得ない死。命の重要性を問いかけ、連鎖する。咲真は成瀬や青柳の中で生き続けるのだろう。「命」というありがちなテーマを取り上げているのに陳腐にならない小説は本当に稀有だと思った。
Posted by ブクログ
多くの読友さん推薦本。これまでも居た堪れない小林由香さんの強烈な社会風刺、それだけではない命の大切さ、大人に「辛い」というのを伝える大切さ、また友人への感謝。色んなメッセージが込められていた。母親の離婚、再婚、これに伴う壮絶な苛めをうける成瀬。彼は自死を決意する。しかしそこに現れた同級生・咲真。彼らが「復讐」を決意する。咲真の過去の経験が明らかになるにつれ、成瀬、咲真を応援している。人の痛みとは何か?それは痛みを知るまで分からないという矛盾を秘めているのかもしれない。誰かに役立つ人生、素晴らしい。⑤↑↑
Posted by ブクログ
母親の再婚で田舎の高校に転校して、いじめに遭う。
継父である高校教師が生徒にセクハラをしているという理由で…。
不条理な目に遭うたび心は削られ、誰にも相談出来ずに我慢の限界。
選んだのは「死」。
5つの遺書を書き、誕生日に河で死を決意した時にクラスメイトと会い、そこから報復ゲームへ参加させられることとなる。
いじめ問題というのは、テーマが重くて暗く心の中がもやもやとしてくるので好んで読まないのだが、これは自殺を少しでも考えたら手にしてほしいと思う本。
正直、本当に心が荒んでる時に読書はしないのかもしれないが…。
ここに書かれている遺書は、他人に向けた悪意なんて少しもなく、自分の変わりたい目標が綴られている。
だからかもしれないが、救いがある。
誰ひとりとして不要な人間なんていないと伝わってくる。
Posted by ブクログ
どれほど残酷な記憶だとしても、
君と一緒に過ごした日々を、
僕は永遠に忘れることはできないだろう。
今も世界のどこかで、
紫色の雨が降り続いているはずだから。
東京の中高一貫校から母の再婚によって転校した成瀬航基は転校先の高校の体育教師である継父が生徒の安藤菜々子にセクハラをしたという噂が流れ、クラス中の酷いいじめに遭います。
いじめの首謀者は絹川淳也で菜々子に好意を寄せる男子生徒です。
家族とも上手くいかなくなった航基は、遺書を書いて自殺をはかろうとしたところ、同じクラスの月島咲真に止められます。
そして航基は咲真の手引きによって同じくいじめに遭っていた青柳麻衣と共に三人で淳也を殺す一歩手前まで痛めつけます。
咲真は、11月25日を「世界報復デー」として理不尽に人を苦しめた奴らに同等の痛みを感じさせる日にするのだと言い放ち、航基のパソコンから世界中の子どもたちにメールを送っています。
全部ストーリーを紹介したいくらいですが、無理なので端折りますが、咲真はなぜか学校に来なくなり、航基は咲真の言葉によって真実を知ろうとし、継父の無実を知り、いじめていた生徒たちに自力で反撃します。
そして最後の第四章は涙腺のそれほど緩くない私でも涙なしには読めませんでした。
描いてある言葉、すべて書き写したいくらいですが、この作品に興味を持たれた方は読んでみてくださいとしか言えません。
航基と咲真の間にはこれ以上ない絆が結ばれていました。
咲真の世界に発信した想いも届けられるようにと願ってやみません。
私は日本の15歳から20歳の死因のトップがまさか自殺だとは知りませんでした。
そうした子どもたちにも是非読んで欲しい本です。
小林由香さんの本はこれで4冊目ですが、一番よかったです。
Posted by ブクログ
いじめられている少年と病気の少年の報復の物語。
颯爽感はあまりないが、咲真少年の儚さに相反する厳しさには引き込まれるものがあった。
登場人物の中で母親が1番腹が立った。
Posted by ブクログ
学生はこれを読んで「いじめ」のダサさを再認識したらいい。
学校は「みんな仲良く」だけじゃなく「合わない相手には無関心可」と「いじめは犯罪行為で処罰の対象となること」を教えなければならないと思う。
主人公、よく生き残ってくれた。
悲惨な状況下でも心の拠り所があれば生き抜けること、そして最大の武器は信頼できる大人とやはり法の知識だった。
主人公が名刺でせまるところ、感動したしふるえた。
私は「それだけで許すん?優しっ」って思ったけど、作家さんは加害者にもやり直しのチャンスを与えたかったのかな、と。いや私は同等の痛みを味わってからの話でしょ派ですが。
加害者が、自分がいじめられた経験から先にいじめの対象を作っていたって話。これが人間の本質だよね。だからやっぱり幼稚園とかの集団生活をする頃から人との距離感を教えなあかん。もちろん親にも。
これは絶望と希望のお話。でも生きることが希望っておかしい。病気とか自然災害じゃなく、心や体を傷つけないでほしい。無関心を推奨ではなく傷つけるなら無関心ありってことです。
いじめのお話は毎回しんどいですね。