あらすじ
帰省するのはいつぶりだろう。大学進学を機に上京して十四年、忙しさにかまけて実家から足が遠のいていた私は、新幹線で金沢に向かっていた。まもなく旅立つであろうミャアを見送るために(「ミャアの通り道」)。離婚以来、自暴自棄の生活を送っていた女性の家のベランダに現れた茶トラが、生活を思わぬ方向へ変えてゆき……(「運河沿いの使わしめ」)――肉親を亡くした時、家庭のある男を愛した時、離婚して傷ついた時…… ふり返れば、いつもかたわらに猫がいた。人生の様々な場面で猫に救われてきた女性たちの心洗われる七つの物語。「犬を亡くした私を救ってくれたのは猫でした」――著者インタビューも収録!
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Posted by ブクログ
唯川さんの作品を読んだのは十数年ぶりになるだろうか。
若い頃、アラサーと呼ばれる世代に唯川さんの恋愛小説の大ファンだった。
同世代のヒロインの心の動きを繊細かつリアルに描く作風に強く魅力され、深い共感を得た。
本書はたまたま書店店頭で見かけて、タイトルと表紙に惹かれて購入した。
特に印象に残ったのは「祭りの夜に」。
認知症の祖母が今なお待ち続けている男性の正体が実は夫である祖父だったー。地方の田舎でひと夏の休暇を過ごすヒロインの目を通して、幻想的、情緒豊かに祭りの夜が描かれる。
「最期の伝言」。幼い頃に母と自分を捨てて他の女性に走った父。ヒロインは父を恨めしく思ってきたが、父が家庭を捨てた事情の裏には、意外な真実があったー。
全体的な感想としては、相変わらず今も昔も唯川さんは女性の心理描写が秀逸だなと改めて思った。
唯川さんも歳を重ねられ、読む側の自分も歳を取った分、昔とは違う作風なり感じ方なりがあるのは当然かもしれない。
私が唯川さんの作品にハマっていた頃、小説のヒロインは若い女性が多かったが、今は、あらゆる年代の女性たちが生き生きと作品の中で息づいているように思った。また機会があれば、唯川さんの作品を是非読んでみたい。