あらすじ
第二次大戦後、ギャルヴィン一家はコロラド州に移住し、12人の子宝に恵まれた。しかし子どものうち6人に異変が起きる。修道士のようにふるまう長男、自分はポール・マッカトニーだと言い張る末っ子……。彼らはなぜ統合失調症を発症したのか。家族の闇に迫る
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Posted by ブクログ
民俗学なんかの伝承や禁忌の源泉になってそうなことを考えたり勉強したりするのが好きで、これもずっと読みたいけど高くて買いそびれてたのをやっと買って読めた。サブタイトルに書いてあるけど当事者の足跡や治療や研究の歴史、包括して知ったうえでしかそのことは語るべきじゃないよなって思った。
早川のサイエンス系のノンフィクションほんと良い本多い。
Posted by ブクログ
◆感謝祭の場面
険悪の仲である長男・ドナルドが次男・ジムと取っ組み合いになり、ついにドナルドはテーブルを持ち上げてジムに投げつける。母親の耳が手作りのお菓子の家を粉々に壊すシーンがせつない。
◆メアリー(小学5年生)
「自分の部屋で何時間も、クローゼットや机の引き出しを整理しては、やり直すことに没頭し、自分には多少なりとも物事を意のままにする力があると思おうとした」(P.220)
「まず、十二人も子供を儲けておいて、全員を理想的なアメリカ国民に育て上げられると考えること自体、自覚が欠けていると思います」(マーガレット P.404 )
「彼のことは、安全な港と呼びたいです」(ワイリーと結婚したメアリー P.446)
ゲイリー夫妻の援助がすごい。マーガレットを下宿させるだけでなく、リンジーの息子をセラピープログラムに参加させた際の費用援助が月額8,300ドルを合計21ヶ月分っていま換算すると2,500万くらいじゃん!
◆サム・ゲイリー
36回目に油田を掘り当てて財を成した。
8人の子供のうち4人を難病でなくし、そのこともあってゲイリー夫妻は科学研究や医療の分野に莫大な寄付を続ける。モンタナ州で掘削件権を獲得するのを手伝ったのがギャルヴィン家の父・ドン。それでギャルヴィン家を援助している。
ラストでリンジーの娘のケイトがメディカルスクールの研究室にいる場面で終わるのがまるで映画のよう。
「それは、彼女の六人の伯父のおかげで、未来の世代のためにすべてを変える可能性のある試験だった」(P.473)
Posted by ブクログ
12人の兄弟のうち6人が統合失調症だと診断されたギャルヴィン家の歴史が描かれている。兄弟の末の二人、マーガレットとリンジーが自分の家族に起こったことを世間に知ってもらうことで、他者の助けになると信じて出された本である。
「遺伝か、環境か」の副題に興味を持ち読み出した。この家族がたどった道を知るにつれ、自分がその境遇にいた可能性だってあったのだという思いになった。子供は親を選べない。環境を選べないのだ。
父と母、兄弟12人の大家族、日本のテレビ番組で観るような騒がしくても楽しい家族とは正反対だった。年長の子が下の子を虐待する。けんかが耐えない。家の中に兄弟という敵がいて、身の危険がある。
親が子どもたちに安全な場所を与えられず、なすすべなく壊れていく家族の様子は、ノンフィクションだということが信じられないくらい過酷である。
母親の育て方が悪いのか、遺伝か。病気の治療のために原因を突き止めることは重要なことだけれど、何かのせいや、誰かのせいにすることは非難の対象を探すことになり、病気を認めるのが遅れ、異常の発見や治療の妨げになる。もし適切に対処できていたなら、重症化長期化を防げたかもしれないのに、家族の深い傷になっていくのを止められなかった。そんな状況で、性的虐待から立ち直り、自分の人生を手に入れたマーガレットとリンジーの強さに心打たれた。
他方、治療薬の開発には多額の費用がかかる。利益を出さない開発には資金がでない。そのため統合失調症の研究は遅れた。それも悲劇を拡大させた原因だった。
儲からないという理由で治療への道が開かれない他の難病も多くあり、今も続く問題であろう。
何が原因で統合失調症が発症するのか。
病気と思われる徴候があれば、早い段階に介入し不安を取り除くことが重要だと思われる。(わからないことはまだ多いから断定はできない)。
治療薬を待つしかないのだろう。
Posted by ブクログ
ノンフィクションの中でも圧倒的だった。
なぜ、わたしがこの本を読みたいと思ったのか...統合失調症では無いが精神疾患に苦しみ友人を見てきたから。それが''一族''って...読み始めてからもしばらくこれはほんとにノンフィクションなのか?疑う部分も多かった。
まず普通にほぼ毎年のように子どもを孕んで産むという行為がわたしには考えられない。いくらベビーブームでも!!夫が辞めようと言わない限り、ってそんなの信じられない。
そして次第に兄弟のうち長男から次々と精神に異常を見せ始める。間に女の子が居なかったのも、精神に以上を来す一因だったんじゃないか、なんてわたしが語るべきじゃないけど少し感じた。
色々な、本当にただそこに産まれて生きていくことが大変な中でそれぞれが追い詰められ、逃げ場を欲して異常な精神状態になってしまったのを最終的には妹や科学の力でどうにか解決の糸口にでもなって欲しいと願わずにはいられなかった。
メアリー(リンジー)はこの本のみでしか知ることができないが、凄い人だ。
わたしなんて日々自分1人生きるのに必死になってるのに、その生死さえ危ぶんだ兄たちのかけがえのない支えに自らなっているのだから。
実際に自分以外の人生を経験することは絶対できないし、知ったかぶりなんて絶対にしてはいけないと思っている。だから、こうしてノンフィクションで体験することの無いような人生を追体験した時、何ものにも変えれない思いをする。
痛い、苦しい、しんどい辛い、もう嫌だ...楽しい、面白い、嬉しい...哀しいとか、どの感情も間違っていないような間違っているような、変な感覚に陥る。それでも大抵読んで、知ることができて良かったと思う。
今回のこのギャルヴィン一家の中を知ることが出来てやはり良かった。
精神疾患自体に更に興味を持つきっかけにもなった。色々知って行ければ、と思う。
Posted by ブクログ
前半、特にマーガレットとリンジーが成人するまでの話が恐ろし過ぎて、どうにか逃げ出せるようにと祈りながら読んでいた。後半に進むにつれ、一家に科学からの光が差し込み、この病そのものへの対処も確実に進んだ事が分かり、安堵した。
Posted by ブクログ
統合失調症の兄がいます。娘がいつか遺伝発症しないか頭の片隅に不安を抱えています。著書では男子の発症率が高いことを知りました。環境誘発をしないよう親なりに整えながら、発症しないよう見守ろうと思っています。
Posted by ブクログ
こりゃすげえというのが一番な感想
ジンとミミの反応に対して思うけど、やっぱりプライド高い人って問題に関わろうとしないんだよな、お前らで解決しろ感
「今日でさえ、ソラジンやその他の抗精神病薬がこのような効果を持つ理由は、誰にもはっきりわからない。医師たちは何十年にもわたって、統合失調症の生物学的特性を明確に理解しないまま、この疾患に薬物治療を行なってきた。」
マジ?!?!
なぜ兄たちが自分の妹に性的虐待をするのかそのメカニズムがわからない
ガールフレンドを銃殺したところでもうええ!!ってなったけどまだ1/3だ…
老い先短い母親が、自分の納得行ってない人生に全部理由つけて私のせいじゃないって言うのを聞かされるの辛すぎる
娘2人ともすごい私にはできない
父親が寡黙すぎて父親側の視点があればかなりこの家族の解釈深まりそうなのに
一年以上前にインスタでまずこの装丁がドン!って感じでかなりインパクトがあって、どんな壮絶な物語があるんだとワクワクして、実際壮絶な物語だけど統合失調症の治療の研究の進み具合についても細かく書いてあって、
こんなのが読みたかったのかな…と思っちゃう所が人間として嫌なとこだな
はーこんな大変な環境でねー!、はーやっぱ遺伝なんだねー!って自分には関係ないスリリングな物語として読みたかったんだろう
好奇心を煽る装丁に見えるし、インスタで見かけたってのがまたね…
インスタの画像のインパクトと、その中にいる生身の1人の人間が現実に生きて日常を自分と同じように送ってるという、そんな当たり前のことをいつも思い出しては忘れるけど、現実はそんなにインパクトはないしおしゃれでも楽でもないって事実にまた改めて気づいた感じだ