【感想・ネタバレ】「強い円」はどこへ行ったのかのレビュー

あらすじ

これは、日本に対する最後の“警鐘”かもしれない。
市場が放つメッセージの真相を解説。

急速に進んだ円安。
「国内外の金利差が原因だ(米国の利上げによるドル高の裏返しだ)」
「日本が売られているのだ」
「今回は悪い円安だ!」
「やがて日本国債も暴落する!」
さまざまな議論が交錯するなか、2022年5月には20年ぶりに1ドル=130円台をつける。その後も軟調気味に一進一退を続け、「50年ぶりの円安水準」に直面した。
果たして今回の円安はなぜ起こったのか?
円安の何が悪いのか?
つまるところ「円安は日本売り」であり、「経済低迷に根本的な手を打たない日本政府に対する市場からの警鐘」である。現状の為替の動きは「日本回避」の兆候であり、まさに「買い負け」は今の日本を的確に表現している。日本(円)経済が岐路に立たされていることを象徴しているということだ。
そして、円安で得をするのは、輸出や海外投資の還流に近いグローバル大企業だけで、内需主導型の中小企業や家計部門にはデメリットが圧倒的に大きく、結局、円安は両者の格差を拡大する。言い換えれば、今回の円安は、日本における優勝劣敗を徹底する相場現象と認識すべきかもしれないのだ。

本書は定評あるアナリストが、今回の円安の構造的要因を冷静に分析しながら、将来に向けて捉えるべき課題をコンパクトに整理。為替を軸にみた日本経済の置かれた現状を解説する緊急出版。

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Posted by ブクログ

ネタバレ

通貨高は先進国の悩み、通貨安は途上国の悩み。
為替の説明変数は多数ある。成長率、金利、需給の3つが基本的なところ。
成長率は、コロナの緊縮度で日本が出遅れている。
金利は日本だけ低い。スイスでもマイナス金利を終了。
需給は、対外純資産国だったため、安全資産として円が買われた。しかし、国際収支の悪化=貿易収支の赤字+所得収支の黒字へ転換。
成熟した債権国へ移行している=所得収支は現地で再投資されるため、需給に表れにくい。
対外純資産は日本がドイツに追いつかれつつある。
日銀は総合的には円安にはメリットが多いと考えているが、各論ではマイナスが多い。
過剰なコロナ対策が、円安の遠因。

REER=実質実効為替レートとNEER(名目実効為替レート)。2020年以降は名目よりも実質で円が下落している=名目レートはかわらなくても、世界では物価上昇+賃金上昇が起きた。=外国の所得から見ると日本は安くなった。

名目GDP成長率ーGDPデフレーター=実質GDPデフレーター。名目のほうが実質より大きいのが普通=GDPデフレーターはプラスが普通。
GDPデフレーター=名目/実質=名目所得(GDI)/実質GDP(三面等価の原則から)
GDPデフレータの推移でみると、2020年ごろからマイナスで、大きな要因は輸入デフレーター=輸入額が増えた。
国内財の上昇でGDPデフレーターが上昇するのが良いインフレ。
交易条件=輸出デフレーター/輸入デフレーター。輸入が増えれば悪化する。輸入材の価格が上昇すると企業が吸収している間はCPIは上がらない。GDPデフレーターのほうが日本の実体を表している。
日本のデフレは、資源価格のインフレや円安による交易条件の悪化による。
対外直接投資は、円安要因。
国際分業の結果であり、黒字が善で赤字が悪、ではない。
怖いのは家計金融資産の数%が外貨へ動くこと。かなりの円安になる。円の価値低下が認識されると雪崩を打って外貨に代わる可能性がある。ギリシャやロシアで起こった。
成長を放棄すると、世界の多くに投資機会がある中、日本の株式を買う理由はなくなる。
貯蓄から投資へ、が本当に機能すると国際暴落住宅ローン金利上昇につながらないか。家計部門が貯蓄優先保守的運用だからこそ、低金利が成り立っていた。

黒田総裁の「家計が値上げを受け入れている」発言は、2022年4月に実施された渡辺務によるアンケートによるもの。受け入れているのではなく諦めているが実態。

リフレ政策は、未達だったからこそリフレ政策の支持が集まった。
悲惨指数=インフレ率(CPI上昇率)+失業率を足した数値。
日本では上がらない物価、海外では上がらない株価がデフレの定義。
中央銀行の財務健全性は、通貨の信任と同義ではない。日銀の評価損が膨らんでも、通貨が信任されなくなるわけではない。スイス国立銀行は、ユーロ安スイスフラン高をユーロ買い支えで抵抗したが、抵抗しきれずやめた。そのときユーロは下落して為替差損が生じて債務超過になったが、スイスフランの信任は揺るがなかった。ユーロ導入前の分ですバンクもマルク高になって外貨準備が減少し債務超過になった。
ベネズエラ、アルゼンチン、ジャマイカは、中央銀行が債務超過になり、高率のインフレになった。
通貨高を通貨安にすることは可能なので、通貨高による債務超過は心配されない。債務超過自体に決定的な意味があるわけではない。
しかし、債務超過がテーマ視されれば別。

日本とドイツの違い。
ドイツは安いユーロの恩恵を受けて大幅黒字。日本は円高との戦いだったが、海外直接投資によって円安基調になった。ドイツは安いユーロのため、工場が外に出ていかない。日本は、国際収支の発展段階でいえば普通の変遷を経て成熟国に変化した。ドイツは永遠の割安通貨を得た。貿易黒字は3~4倍。
ドイツと日本は似ていない。

IMFの外貨準備の構成通貨データ(COFER)カレンシーコンポジションオブオフィシャルふぉれいんエクスチェンジリザーブス)ではドルのプレゼンスが低下している。
ロシアはSWIFT抜きの世界を構築しつつある。

リーマンショック後の世界の協調路線は、2010年のg20での近隣窮乏化対策=通貨安競争を戒める内容だった。
2022年はアメリカもユーロ圏もインフレ抑制のための自国通貨高を歓迎している。
日本は、白川総裁のころまでは、世界の潮流に逆らって緩和を渋っている国だった。今は、世界の潮流に逆らって低金利を続けている国。

為替参加者の意識は「長期的に正しくても短期的に間違っていれば命運は尽きる」。そのため一方向に流れやすい。

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2023年02月09日

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