あらすじ
中国古代王朝という、前人未踏の世界をロマンあふれる勁い文章で語り、広く読書界を震撼させたデビュー作。夏王朝、一介の料理人から身をおこした英傑伊尹の物語。新田次郎賞受賞作。
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Posted by ブクログ
古代中国、夏王朝を倒した、商(殷)の湯王に仕えた名宰相・伊尹(いいん)を主人公に据えた歴史長編。
3500年以上も過去の人物について、史書の記述を結び合わせ、伝説の域にある事象をも、ひとりの人間を形作るエピソードとして語る筆力は説得力があり、圧倒される。
上巻では未だ天命を見出していない伊尹が、どのような道を辿って不朽の名を残すに至るか、下巻の展開を追うのが待ち遠しい。
Posted by ブクログ
10年以上前に読んだことがあったけど、また読みたくなって再読。
夏王朝を妥当し、商(殷)王朝を樹立した功臣、伊尹のお話。
ようやく実在が明らかになってきた夏王朝を舞台に据えた日本の小説は、おそらく本書が最初じゃあるまいか。
史料も少なかったろうに、よくぞここまで物語を構築できたなあ、と脱帽。
史実なんぞわかりっこないのだから、あくまで読み物として楽しむべきなのだけど、はるかな古代の生活観に触れた気になれるという点で、貴重な本なんじゃないかなあと思う。
あらすじは割愛するけど、語られる素朴な生活観・倫理観が非常に力強い。
「政治とはどうあるべきか」的な為政者の観点だけじゃないところから描かれている点が、よくある歴史小説とはちょっと違う点。
Posted by ブクログ
宮城谷先生作品再読祭、第2作目上巻再読完了。
夏が滅んで商が起こる時に活躍した伊尹さんのお話です。自然の脅威から始まる彼の数奇な運命は、桑の木から生まれた寵児として、時代の高貴な人々と繋がってしまいます。それによって命を失いかねない災難に見舞われたり、商の起こす戦乱に巻き込まれますが、しぶとく図太く生き残り、結局遺民の面倒をみたり、自国の民衆を救うために裏で立ち回ったり、大活躍です。
そして、為政者に取り立てられるかと思いきや、反対に迫害されて、ならばと、野に出て1人で生活を始めちゃう。生活できちゃう。
めっちゃ強か、さすが神木から産まれた子です。
しかし、神聖な太古の時代で、神木から産まれたとも思える子を迫害する為政者もいるんですね。怖くないんでしょうか。
さて、下巻はいよいよ商の湯王との邂逅です。夏と商の争いはどうなっていくのか、さっそく続きに入りたいと思います。
Posted by ブクログ
夏王朝末期、桀王は衰退していく夏王朝に拍車をかけるように、酒池肉林を催し、自分は天子であるとして、諸侯を力で屈服させてきた。東からは、商の湯王が立ち、徐々にちからを蓄え、夏王朝の自滅のような感じになる事を待つかのごとく徳をつんでいく。伊尹と言われることになる、摯は、桀王や湯王に従うというのではなく、民草の声を率直に伝えて、死をも恐れず、直諫し、商の執政へと活躍の場を与えられていく。
長く生きていると、恨みばかりがつもるものだ。その恨みをどう残し、どう捨てるかで生き方が違ってくる。まず己を治めること、それをしないで他人を恨むと、その者は一生の間悲憤が付き纏う。その悲憤が極限に達して自分がどうにもならなくなったら、いっそ自分を捨てることだ。
全二巻