あらすじ
透明人間が事件を起こしたら? アイドルオタクが裁判員裁判に直面したら? 犯行現場の音を細かく聞いてみたら? ミステリイベント中のクルーズ船で参加者の拉致監禁事件が起こったら? 波に乗る著者が放つ高密度の本格ミステリ! 読めばファン確定。2020年のミステリ・ランキングを席巻。驚嘆必至、必読の傑作短編集!
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「彼女に色をつけてもらうのは、いつか彼女がどこかに消えてしまうのを、ひたすら怖く思うからなのかもしれない。彼女が透明になってしまえば、ぼくには見つけ出す手段がない。詰まるところ、国を挙げて、医療を駆使して、透明人間に色を与え続けるのは、われわれのそうした恐怖に由来するのではあるまいか?」p32
「彼らが透明なのではなく、われわれに色が付きすぎているだけだと」p38
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おすすめされていた本。4つの作品からなっており、様々な設定のミステリが読める。個人的にアイドルを扱った2つ目の作品が面白かった。アイドルではないけど自分も追っかけている存在がいるので、そういうのあるよねーってなってしまった。後、透明人間ネタの引用にジョジョ四部があってびっくりした。そういえば透明人間ネタあったよね。それからラストの作品の弟くんの猫被り具合が凄すぎて笑ってしまった。探偵役の裏に隠れる探偵っているよね。どれも読みやすくて面白かった。他の作品も読んでみよう。
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ヒボさん推しの阿津川辰海さん。✧。・゚
お薦めして頂いた一冊目は『透明人間は密室に潜む』
なるほどദ്ദി^._.^)
四編のお話なんだけど、どの話もしっかりみっちりミステリー色満載で、個性が強い
本格的なミステリーは読み慣れていないのだが、短編とは言えない仕上がりで面白かった° ✧ (*´˘`*) ✧
表題の『透明人間は密室に潜む』
勝手に消えたり現れたりするイメージのある透明人間が、完全に消えるのに苦労するというのが意外
ここでは透明人間病が流行っているという設定
透明人間と完全犯罪
Pレディの「透明人間」の歌詞は、”つかまらないのが、透明人間なんです♪〜”だけど……??
(昭和でしたね^^;)
『六人の熱狂する日本人』
オタクを扱った法廷もの
アイドルグループのロゴが入った、どぎついピンクのTシャツに着替えて来た裁判員の一人
そこから、六人のオタク達の会話が炸裂していく様がコメディ
コールなどをせずライブを噛み締めるように聞く人を『地蔵』というらしい
私はオタクではないが、自分はまさしくそれだと知った笑
『盗聴された殺人』
耳の良さを特技にした助手と、そこからヒントを得る探偵が事件を暴く
探偵と助手のコンビがいい
耳が良過ぎると、聞きたくないものも聞こえてしまうんだね
『第13号船室からの脱出』
船の中での脱出ゲームが、本当の脱出ゲームになってしまった
話は一転ニ転、最後にほくそ笑むヤツは誰か?
いつも街中で見かけては気になっていた「リアル脱出ゲーム」
一人からでも小学生からでも楽しめるらしい
梅雨の時期、真夏の暑い時に室内で快適に楽しむにはいいかもしれない
この方の長編ものはまた違うのかな?
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傑作ミステリ短編集。四編はどれも「もしもこのような状況になったら」「もしもこういうことが起きたら」という設定であり、あまり読んだことのないテーマの作中が多い。どの作品も最後に驚かされ、思わず「やられた!」と叫ぶこと間違いなし。
表題作『透明人間は密室に潜む』はタイトル通り「透明人間」が登場する“特殊設定”ミステリ。透明人間が存在する世界の作り込みにリアリティがあり、作中の透明人間の課題や社会問題が色濃く描かれている。倒叙ミステリで、犯人の用いたトリックは分かったが、最後のどんでん返しは衝撃だった。
『六人の熱狂する日本人』は法廷ミステリであり、アイドルオタクが裁判員裁判に参加するという設定。コメディ色が強い中急に展開する推理に物語は二転三転する。「そんなことある!?」となる結末が待っている。
『盗聴された殺人』
耳が異常に良い主人公と探偵役のバディもの。耳が良いことで拾える証拠から犯人を推理するミステリで、“音”が謎に関わっている。解決編パートの伏線回収は圧巻。
『第13号船室からの脱出』
ジャック・フットレルの代表作『十三号独房の問題』のオマージュで、脱出ゲームがテーマのミステリ。四編の中で一番面白かった。「脱出ゲームの最中に実際に拉致・監禁された主人公が脱出を目指す」という魅力的な設定で、作中の脱出ゲームは参加者になった気分で謎解きにのめり込める。そして終盤の連続どんでん返し。何度も覆る物語に驚愕!
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どの短編も設定が面白く、すぐ再度読み返したいと思えるほどに面白かった。どれも特殊な設定ながらしっかりと本格ミステリーで読み終えた後の満足感が素晴らしい。
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作者のノンシリーズ短編集。
以前「入れ子細工の夜」を読んで面白かったのでこちらも読んでみたのですが、物凄く楽しめました!
以下各短編感想。
「透明人間は密室に潜む」
表題作だけあってクオリティは折り紙つき。
透明人間になる病気が蔓延している世界での、特殊&倒叙ミステリ。ミステリを成立させるための設定が細部まで考えられてるなと思った。
特殊設定ミステリ特有の、そのシチュエーションだからこそ出来るトリックとかそういうのが大好物なのです...!
そしてラストに明かさせる真相によって、作者の掌で転がされていたことが分かります。綺麗に騙されて快感でした!
あと参考文献にジョジョ4部があってちょっと笑った。
「六人の熱狂する日本人」
アイドルグループのファン同士で発生した殺人事件を扱った裁判員裁判のお話。
本短編で1番のスラップスティック回。話が進むにつれてどんどんおかしな方向に向かっていき、カオスな事になっていきます。読んでて終始笑っちゃいましたw
そして最後の結末もある意味前代未聞じゃないでしょうか。これがアイドルオタクの仁義ってやつなのでしょうか。
「盗聴された殺人」
推理の得意な探偵と耳が良い助手のバディ物。不可解な謎が、鮮やか推理によって一本に繋がるのはやはり快感。
耳が良い事を生かして全編音による手がかりをメイン据えているのは斬新じゃないでしょうか。
「第13号船室からの脱出」
誘拐事件からの脱出と脱出ゲームの二つをメインに据えた作品。
どちらも作者らしくかなり凝っていて、特に脱出ゲームの方はとある事実が導き出されることによって、全てが反転するのが秀逸。
結構エンタメ系の作品で楽しめました。
Posted by ブクログ
透明人間視点で描かれる苦悩などに共感できるはずもないが共感してしまう、不思議ミステリー。読後感も人が死んでいるのにコミカルな気がする。面白かった
Posted by ブクログ
それぞれ趣向の違う4作が楽しめる。
1作目では、透明人間がいる社会のディテールをしっかり設定しており、現実離れした世界観でも興味深く読むことができる。
4作目では、謎解きゲームと実際の事件が同時進行する展開が珍しく、面白い。さらに登場人物同士が頭脳戦を繰り広げており、真の黒幕は…?という点でも楽しめる。
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短編集
もう、完全に2編目の「六人の熱狂する日本人」にやられました。もう読んでない人はこれだけでも読んで欲しいです
裁判員制度の話、と書いたらすんごい硬そうで人選びそうですが終始声出して笑いました。こんなん笑うわ!特番ドラマとか無理ですか!?えっ?なめすぎ?死んじゃうアイドルとか、あのちゃんあたりでもうねfjdiwiskdjfjfgueow
Posted by ブクログ
久々の阿津川さん♪
4つの中編集。
どの話も面白かったです。
ミステリなのに、くすりとしてしまう話が盛り沢山かと思いきや、それだけじゃない話もあったりで
短編集にしてはややボリュームがあるので
中編集かなと。
どことなく、某芸人の脚本ドラマに似ているような
世にも奇妙な的な雰囲気を感じたのは気のせいかな。
読み応えもあってかつ、4つの物語が独立しているのでお得感満載な物語でした。
Posted by ブクログ
ずっと気になっていたミステリ界においての最注目短編集。四つのお話が入っていましたが、どれも”普通ではない”本格ミステリでした。
•「透明人間病」である彩子は、大学に忍び込み、教授室で新薬の開発目前である川路教授を殺してしまうが、夫を含めた数人がいきなりあらわれる。
入り口は塞がれ、逃げることはできないという絶望的な状態、どうする??…「透明人間は密室に潜む」
•あるアイドルオタク達が、ホテルで殺された。
裁判制度で選ばれた一般市民の裁判員6人が評議を行う中、選ばれた6人は今回の事件のアイドルのファンであったり、旧友であったり、娘のように慈しんだ目線で見ていたりと、皆アイドルに何かしらの思いを抱いていた。
そのせいで、アイドルを証言台に呼ぶため?に6人の会話は変な熱を帯びていき…「六人の熱狂する日本人」
•探偵事務所で働く、二人組。常人では聞こえない音を拾う事ができる美々香と、高い推理力を持つユーモアたっぷりな探偵所長と、ある不倫疑惑を調べていた。そんな中依頼者の妻が何者かに殺され、仕掛けた盗聴器に入った事件当時の”音”を頼りに推理を進めていく…「盗聴された殺人」
•実際に豪華客船上を舞台に行われるリアル脱出ゲームに参加している中、突然薬により眠らされて、一つの客室に部屋に閉じ込められてしまう。
閉じ込められた先には友達の弟もいて、主人公は様々な方法で脱出を試みる…「第13号線室からの脱出」
設定自体がとても凝っている中、本格ミステリをやっていて、線密なロジックをなぞりながら推理小説としてしっかり楽しめました。
Posted by ブクログ
館シリーズから作家さんのファンになりました!
透明人間が起こす殺人事件。普通の人間だったら絶対にやれないトリックだからこそ面白みがありました。しかも特殊設定だからこその動機も含まれることでちゃんと深みのある物語になっているのが短編なのに驚きです。
打って変わって裁判員裁判の話は笑えてしまいました。こんなポップな話も作れるなんて頭の切り替えが楽しすぎます!
全部で4作入っていますが、表題作が1番好きでした。
最後の話はそれぞれが相手の行動の裏の裏をかいていく頭脳戦にも見えてきて、頭のいい人達の思考回路がなんでそうなるのかと面白かったです。1番ミステリーっぽいのは最後かな?
それぞれがどこか特徴的な設定のある物語になっているので気分転換にこんなミステリーに触れるのもいいなと思いました。そして安定に面白さが担保されてる阿津川先生ならなおさらですね!
Posted by ブクログ
表題作が一番面白かったです。
非現実的設定でファンタジー感はありますが、完璧なアリバイを持っている透明人間が犯行に試行錯誤する様に引き込まれました。
4作目の「第13号船室からの脱出」は、作品の最後を飾るには印象が弱く、物足りなく感じてしまいました。
Posted by ブクログ
最近お気に入りの阿津川辰海、第1短編集。
「透明人間は密室に潜む」
「六人の熱狂する日本人」
「盗聴された殺人」
「第13号船室からの脱出」
仕掛けが凝ってておもしろかった
Posted by ブクログ
4編で構成されているが、「六人の熱狂する日本人」と「第13号船室からの脱出」がなかなか入り込めなくてスキップした.表題作は非常に綿密に作り込まれていると感じた.透明人間病に罹った彩子の行動に夫 内藤謙介が疑問と持ったことが発端だが、探偵の茶風義輝の推理があまりにも的確なことに何か妙な感じがしたが、最後の謎解きでそれが払拭される瞬間が楽しめた.「盗聴された殺人」では異常に耳の良い山口美々香が探偵事務所の大野所長と殺人事件の検証をしていく物語だが、彼女の聞いた不協和音の発生原因がキーポイントになってくる.身近な意外人物が犯人だと判明する過程が楽しめたが、複雑なストーリーなので何度も読み返した.それは表題作も一緒で著者の発想力の奥深さを表しているものと感じた.
Posted by ブクログ
面白かったです。
短編集なのでサクサク読めます。
元々「盗聴された誘拐」を読んでいて、同じ登場人物が出てくるというのを知ってこちらに辿り着きました。
同じ登場人物の出てくる話も面白かったですが個人的には「熱狂する…」のアイドルオタクの出てくる話が面白かったです。ネタバレになるので詳しくは書きませんが、後半は予想を裏切る展開になりそうきたか!という感じでした。
Posted by ブクログ
透明人間は密室に潜む
透明人間って便利に思えて確かに結構不便だなーと気づきを得られた。オチも好きな終わり方。
六人の熱狂する日本人
1番好き。登場人物の会話がとにかくシュールで面白い。
盗聴された殺人
耳がめっちゃ良い探偵が事件を解くという斬新な設定があって、謎解きもユニークで良かった。
第13号船室からの脱出
4作品の中では1番ど真ん中ミステリーって感じだったけど、複数のどんでん返し要素もあり面白い。
Posted by ブクログ
表題作の透明人間のエピソードは予想外の結末で裏をかかれました。個人的には″六人の熱狂する日本人″かなり好きです。きっとすごい葛藤があったろうなってw
Posted by ブクログ
短編集。
『透明人間は密室に潜む』は設定がぶっ飛んでる。終盤には驚かされた。参考文献にグッド。
『六人の熱狂する日本人』はカオス。以上。
『盗聴された殺人』『第13号船室からの脱出』ももちろん面白かった。
Posted by ブクログ
● 感想
特殊設定ミステリ、ユーモア群像劇、ガチガチの本格、知的ゲームモノという4種類の短編からなる短編集。どれもクオリティが高く、阿津川辰海の本格ミステリ作家としての実力がうかがわれる作品。
どれも外連味はそれほどないが、しっかりと地に足のついたロジックで描かれている。設定には派手さがあるが、ロジックは堅実。どこか山口雅也を思わせる作風でもある。
白眉は「六人の熱狂する日本人」。映画『キサラギ』を彷彿とさせる群像劇であり、シチュエーション・コメディ風でもある。コンサートライトホルダーに付いていた血と、御子柴さきに会いたいという動機から事件の真相として真犯人が御子柴さきだと見抜くという展開は圧巻。ただ、法廷モノ、裁判モノはあまり好きではない。個人的な嗜好だが、この点は割り引き
ほかの作品も秀作ぞろい。それなりの派手さもあり、堅実なロジックも面白い。★4の上の方
● 透明人間は密室に潜む
特殊設定ミステリ。透明人間病という、細胞の変異により全身が透明になる病気が存在する世界。ある女性が、透明人間病の治療を可能とする薬を開発した川路昌正の殺害を計画する。その女は、透明人間化抑制薬を飲むのをやめ、完全に透明人間になって川路昌正を殺害しに行く。
内藤という男は、妻が不貞をしているのではないかと疑い、茶風義輝探偵事務所に調査を依頼する。その調査結果は、川路昌正の殺害を計画しているというもの。探偵と内藤は妻を尾行し、殺害直後に部屋に踏み込む。
殺害直後、完全に透明人間になっている女を捜査することになる。川路昌正は、顔を切り刻まれ、裸にされて包丁を突きつけられていた。
殺害現場から透明人間が出られないようにして、透明人間を探す。見つからない。どこにいるのか。探偵は、殴り殺された川路がさらに包丁を刺されていることから、透明人間の居場所を推理。透明人間は、死体の上に寝転がっていたのだ。
さらに明かされる真相。内藤とその妻・彩子が住むのは901号室。その向かいの902号室に2つの死体。1つは渡部次郎という男。女は…内藤彩子だった。内藤彩子だと思われていたのは渡部佳子。メイクアップアーティストだった。渡部佳子は夫からDVを受けていた。内藤彩子をうらやましく思い、殺害。入れ替わっていた。
特殊世界系のミステリ。透明人間の隠れ場所がミステリとなっており、さらに人物入れ替わりというトリック。特殊世界モノでありながら、本格ミステリとなっている。よくできたミステリ
● 六人の熱狂する日本人
映画『キサラギ』っぽい雰囲気がある、裁判員裁判モノのミステリ。裁判モノは正直、あまり好きではない。とはいえ、この作品はコメディタッチで、裁判員6人はいずれもアイドルオタク。被害者と被告人もアイドルオタク。アイドルグループ「Cutie Girls」のファンが入り乱れる。
まず、裁判員6番が自分が「Cutie Girls」ファンのアイドルオタクであることをカミングアウト。被告人は、アイドルオタクの風上にも置けないので死刑だと言い出す。2番も同様にカミングアウト。1番もまた、「Cutie Girls」ファンであり、御子柴さきというアイドルの話をする中で、コンサートライトに違和感を持つ。3番も御子柴さきのファン。5番も軽度のアイドルファン。4番は元アイドルだった。
4番は御子柴さきと親交があり、被害者は御子柴さきのストーカーに似ている。被告人は御子柴さきをかばっている? 被告人のアリバイも立証され、御子柴さきが真犯人かのような推理が進む。本当に御子柴さきが犯人と思われる事実がいくつも出てくるが、結局、法廷には御子柴さきは来ない。御子柴さきの裁判があったとしても別の裁判員が選ばれるということを思い出し、裁判員たちは一転、被告人の意思を尊重し、有罪にしようとする。最後、裁判長もアイドルファンで、被告人を有罪にしようとする裁判員に力を貸すというオチ。
映画『キサラギ』は好きな映画であり、「ウリャオイ」の掛け声も含め、『キサラギ』を思わせる展開は純粋に面白い。ミステリとしては、シンプルさに欠ける点と、裁判モノという点が個人的には割り引き
● 盗聴された殺人
耳、音を聞き分ける能力が高い山口美々香が手がかりを集め、探偵役である大野糺が推理をする探偵事務所のコンビが登場
冒頭で、足音の違いから歩き方の差異を聞き分けて犯人を特定する様子が描かれる。
メインとなるのは、1年前に起こった山口美々香の失敗談「テディベア」の話
浮気調査のために盗聴器を仕掛けたところ、殺害現場の音が録音されていた。盗聴器を仕掛けていたせいで、殺人犯の容疑をかけられた大野は、その屈辱を晴らすために、山口の能力を使って真犯人を暴こうとする。
手がかりとなるのは「不協和音」。被害者・国崎の家での捜査。不協和音の下地の音は加湿器であることに気づく。
決め手となったのは「一定の大きさの足音」。山口からの報告を聞いた大野は外出。そこに探偵事務所のもう一人の事務員・深沢が戻る。山口は深沢に、盗聴器から聞こえた「一定の大きさの足音」のことを告げる。
そこで深沢が本性を現す。犯人は深沢。不協和音の原因はファックス。ファックスの音が小さかったことがわかり、テディベアがファックスのあるリビングではなく、被害者の部屋にあったことが明らかに。殺害現場は被害者の部屋だった。
本来であれば、盗聴器に近づく音か、遠ざかる音しか鳴らないはずなのに、一定の大きさの足音が聞こえた。それは、犯人がテディベアを持って動いたから。盗聴器の存在を知っていた。つまり、犯人は盗聴器を仕掛けた深沢
探偵事務所は3人。深沢が辞めた後、新しいメンバーを雇っている。これはちょっとした叙述トリック。冒頭に「3人の事務所」とあることで、深沢が今も働いていると誤認させている。
ちょっとしたエピローグ的な話があって終わる。
いわゆるガチガチの本格ミステリ。外連味はそれほどないが、「音」を手がかりに真犯人が暴かれる。
盗聴器に一定の足音が聞こえる→盗聴器を持って運んでいる→盗聴器の存在を知っている→仕掛けた人が犯人、というロジック
もちろん、現実的には「たまたま」盗聴器があるテディベアを運んでしまうおそれもあるが、それに伴う偽装がなされていると考えると、犯人は盗聴器を仕掛けた調査員に限定される。分かりやすくシンプルなロジック
質実剛健な本格ミステリ。探偵事務所の調査員が犯人というのは意外性もありそうなのだが、ミスディレクションになり得る人物がほかにいないので、さほど意外性はない。そういう意味では叙述トリックはあまり生きていない。
読んで、「よくできているな」と感じる、古典落語のような短編。短編ミステリのお手本のような作品。こういう作品を書けるところから、阿津川辰海の実力が分かる。
ただ、個人的には、外連味がある、どんでん返しのある短編の方が好き。
● 第13号船室からの脱出
脱出ゲームのテストプレイ中に誘拐事件が発生。それは、マサルが親から金を得るための狂言誘拐だった。マサルと誤解され、カイトが実行犯に誘拐される。マサルは狂言誘拐を成功させるために、カイトのふりをしてゲームに参加する。
この作品は、脱出ゲームの仕掛けと、狂言誘拐における誘拐犯からの脱出という2つのトリックがある。
脱出ゲームの方には、それぞれ2つの解があり、ゲームに参加している人が櫻木桂馬という探偵を演じていると見せかけ、犯人を演じているという仕掛けとなっている。
脱出ゲームの仕掛けは鏡。鏡があったことにより、時計による犯行時間、脱出の目撃者、トレーシングペーパーと原稿を利用した犯人の名を示すダイイングメッセージの解が変わる。真犯人は、櫻木に変装しているプレイヤー
狂言誘拐からの脱出は、マサルに1位を取らせること。こうすることで実行犯が確認に来て、閉じ込めているドアを開ける。
最後に明かされる真相。カイトと一緒に誘拐されていたスグルがすべてを見抜いていた。マサルの名前で回答したのはスグル。スグルはマサルの企みを見抜いて阻止した。スグルは家を出て、マサルに跡取りを押し付ける。それを「益田」という人物に話しているという設定
面白い。「鏡」を利用した脱出ゲームの仕掛けと、プレイヤーは櫻木桂馬ではなく櫻木桂馬に扮した真犯人だという仕掛けは、それだけで十分面白い。その上で、カイトの狂言誘拐からの脱出の仕方、マサルに1位を取らせること、水浸しにして感電させること、そして、実はスグルがすべてを見抜いていたというオチ。一つひとつはそれほどでもないが、短編でここまで仕掛けると圧巻
Posted by ブクログ
やはり表題作が素晴らしい出来ですね。透明人間ならもっといい完全犯罪方法がありそうなもんですが、具体的には思いつかない。私立探偵の種明かしについては読んでる途中でピーンときましたが、動機の方は思いも寄りませんでしたね。ラスト数行の余韻もなかなか…【参考文献4】の遊び心もイイネ!
『六人の熱狂する日本人』は悪ノリについていけなかった。アイドルオタクがアイドルを法廷で見るためだけに有罪にしようとするのが理解できない。オタクのノリも読んでてちょっとキツい。
『盗聴された殺人』に出てくる探偵役2人のキャラクターはかなり好き。メインとなるロジックには弱さを感じる。熊のぬいぐるみを○○○からといって、盗聴器の○○○○○○○○が犯人だという論理はやや牽強付会だと思う。
『第13号船室からの脱出』 体験型ミステリーゲーム!これ最近流行ってますよね。確かに作中のようなイベントがあったら参加してみたいと思いますねぇ。
まあ面白かったが、やや凝りすぎの感あり。作中の体験型ミステリー自体はよく出来ていると思います。
Posted by ブクログ
謎解き、探偵、密室などミステリ好きはついつい読んでしまうようなジャンルの中編が4編入っています。どれも一癖のある話で同じ作者でありながらジャンルの幅も広く面白かったです。一番最初の作品が好きでした。
Posted by ブクログ
透明人間が犯罪するときの苦労、
アイドルオタクが裁判員だったら…?
などなどかけ合わせが面白い中編集
とても密度が濃くて長編で読みたいくらいです
アイドルオタクの話が面白かったです
(茶の間やら地蔵やらいろんな強度のオタクが登場する解像度の高さ)
シリーズ化してほしいですわ
転売ヤー殺人事件とか、チケットがご用意されましたとか、可能性あると思うー
Posted by ブクログ
タイトル含む全四篇の短編集。透明人間なのが病気な設定なのは意外だった。四作それぞれ全然違う設定で、短編にしては展開がしっかりあって良かったと思う。
Posted by ブクログ
とても凝っていて、特に透明人間の話はネタとしては面白かったのですが、少し予想がついてしまい物足りなさも感じてしまいました。でも短編集としては十分満足できる内容でした。
Posted by ブクログ
どれもあともう一歩ほしい作品だったなという印象…。ミステリーをあまり読まないひとに向けてなのか説明がいちいち丁寧だったなという。
1作目の『透明人間〜』は透明人間の設定がしっかり作り込まれてるなあと思った。食べたものだとか血液とか。短編なのが勿体無い。
2作目はめっちゃ『キサラギ』に似てるなと思ってたら作者さん自身が『キサラギ』から着想得ていてどおりでだった。『キサラギ』は派手さはないのに今でも割と細部まで覚えてる作品。(最後ミキちゃん!ミキちゃん!てみんながダンスするとことか笑)
3作目はちょっとさっぱりしすぎ?ミミカの聴力に対する所長の持ち上げがわざとらしく感じたし探偵のくせに色々免疫ねえなと思った。
4作目は豪華客船での脱出ゲームという設定自体はすごく好みな感じだったのに内容があまり好みじゃなかった…スカした少年が見下してた同級生のさらに弟にすら及ばなかったよって話?
Posted by ブクログ
阿津川辰海さんのミステリー短編集
どれもバラエティに富んだ意欲作で良くも悪くも作者の趣向が濃厚で独創性に溢れた作品だった。
賛否は分かれると思うが、どれもエンタメ性に特化した内容だと思う。
収録作品4作の紹介と簡単なレビュー
『透明人間は密室に潜む』
細胞の変異により全身が透明になってしまう透明人間病。
透明人間が殺人事件を起こしたらどうなる?
そしてその犯行動機とは?
透明人間という突飛な設定ながら面白かった。
長編では読み飽きそうな内容だが、短編なので端々にある違和感も割り切って楽しめた。
『六人の熱狂する日本人』
アイドルオタクが裁判員裁判に参加し、裁判なのに事件を何故か解決?していくお話
その末に隠された真実とは?
作者のアイドル好きと拘りが感じられる作品。
コメディ感もあるが、先が読める内容だったのでもう一捻り欲しかった。
『盗聴された殺人』
推理が得意な頭脳派所長と、耳がとてもいい事務員がタッグを組んで事件解決に取り組むと・・・
真犯人は誰か?という謎解きが楽しめる作品。
後半の大きな違和感は、作中で解決されていたが設定にやや無理があったように思う。
第2の事件、起きちゃいますよ・・・
『第13号客室からの脱出』
謎解きミステリーイベント中のクルーズ船で誘拐事件が発生する。誘拐犯は人違いをしていた。犯人の目的とは?
頁数ではこちらが一番ボリュームのある作品。
時系列や目線を頻繁に変え、まさに謎解きミステリーを楽しむ作品だった。
阿津川さん、謎解き好きなんだろうなぁ。
Posted by ブクログ
短編集でした。
それぞれのお話は、しっかりとミステリィで楽しめました。短編集ながらもじっくりと読ませてもらいました。表題の一作がお気に入りです。