【感想・ネタバレ】雲を紡ぐのレビュー

あらすじ

壊れかけた家族は、もう一度、一つになれるのか?
第8回高校生直木賞(2021)受賞作!

羊毛を手仕事で染め、紡ぎ、織りあげた「時を越える布・ホームスパン」をめぐる親子三代の「心の糸」の物語。
いじめが原因で学校に行けなくなった高校2年生・美緒の唯一の心のよりどころは、祖父母がくれた赤いホームスパンのショール。
ところが、このショールをめぐって母と口論になり、美緒は岩手県盛岡市の祖父の元へ行ってしまう。
美緒は、祖父とともに働くことで、職人たちの思いの尊さを知る。
一方、美緒が不在となった東京では、父と母の間にも離婚話が持ち上がり……。

「時代の流れに古びていくのではなく、熟成し、育っていくホームスパン。
その様子が人の生き方や、家族が織りなす関係に重なり、『雲を紡ぐ』を書きました」と著者が語るように、読む人の心を優しく包んでくれる1冊。

文庫版特典として、スピンオフ短編「風切羽の色」(「いわてダ・ヴィンチ」掲載)を巻末に収録。

文庫解説・北上次郎

※この電子書籍は2020年1月に文藝春秋より刊行された単行本の文庫版を底本としています。

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Posted by ブクログ

ネタバレ

不登校になってしまった少女が、父方の祖父が営んでいる山崎工藝舎へ弟子入り。羊毛と触れ合い、試行錯誤していく中で自分の好きなものを見つけ、成長していく物語。

『羊毛は死んだ動物のものじゃない。生きている動物の毛を分けてもらうんだ。だから人の身体をやさしく包んで守ってくれる。』p121

『大事なもののための我慢は自分を磨く。ただ、つらいだけの我慢は命が削られていくだけだ。』p140

『心にもない言葉など、いくらでも言える。見た目を偽ることも、偽りを耳に流し込むことも。でも触感は偽れない。心と繋がっている脈の速さや肌の熱は隠せないんだ。ものだって同じ。触ってみなさい。』p255

『ただ、腹をくくるだけ。選んだ道でこの先何があろうとも、引き受ける覚悟を決めるだけ。』p318

『遠く、雲のように儚くても、それでも人は手を伸ばして、つかもうとする、夢や希望を。』p391

我慢しなくていい。
逃げてもいい。
人と同じようにできなくていい。
あなたはあなたのままでいい。

そう言ってくれる人が一人でもいてくれたなら。
子ども達はきっと自分の道を自分で見つけられる。
親として子どもの力を信じる。ただ信じて、待つ。

ほんとうに、良書でした。
ここに書ききれないくらいの心にしみる言葉をもらいました。1月にして、私の2025年ベスト本になりうる作品に出会えたと思います。

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2025年02月11日

Posted by ブクログ

ネタバレ

祖父の仕事を継ぎたくても継げなかったという広志の、言葉にはしないけど悔しい気持ちにグッと来るものがあった。
自身のことを選べなかった美緒が祖父の仕事を継ぐことを選び、その祖父を超えるって宣言出来るように成長していく姿に涙が出た。

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2025年01月28日

Posted by ブクログ

ネタバレ

高校でいじめにあって、向かった先は岩手県の祖父の工房。
純白の羊毛に触れる内に美緒も工房の作業に興味を持ち出す。
職場で問題を抱える父の広志と母の真記の関係も怪しい方向に。

祖父の鉱治郎の存在が美緒を再生していく姿が頼もしい。
「大事なもののための我慢は自分を磨く。ただ、辛いだけの我慢は命が削られていくだけだ」
「『大丈夫、まだ大丈夫。』そう生きながら生きるのは苦行だ。人は苦しむために生まれてくるんじゃない。遊びをせんやと生まれけん」

生きることは、しんどいことだなと思う。大人であっても、子供であってもそれは変わらないだろうし。
どこが自分の限界か、人は我慢大会のために生きているのではと思ってしまう。
少しゆっくりと考える時間も人には必要だなと思う。
幸せへの近道は、遠回りすることと得たり。

後半の祖父の死は、どんなに元気な人間にもサヨナラはやってくる。日々、向き合うことの大切さも感じました。

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2025年01月11日

Posted by ブクログ

ネタバレ

盛岡の景色がほんとに綺麗な言葉で繊細に再現されていて想像するとワクワクが止まらなかったです。
行ったことはないけど、川のせせらぎや橋から見た岩手山の壮大さ、桜並木や、たくさんのお店、そして山の麓にある工房、ショールーム。全てがキラキラしていて本当に素敵でした。
そして親子の在り方や、それぞれの人生の生き方。
祖父の言葉はどの言葉も強く、綺麗な、真っ直ぐとした、そしてたまに後悔もある言葉でした。
美緒の母は、母とは何か、娘のためにこうすべきである、と言う形から、子供の頃の自分はどうだったのか、本当の娘の気持ちは何かどうしてあげるべきなのか全てが手探りな状態でしたが、美緒が織った端が凸凹したショールを触りながら美緒にかけた言葉は1番お母さんとして言った言葉だった。
美緒の父は、故郷を離れたが美緒のお陰でまた父と向き合おうとした。行動をしたのが遅かったかもしれないけど....。それでも終盤で父といたいと言う気持ちを言葉にしていた。そして納屋で見つけた溢れるほどの電化製品。全部が同じロゴで自分が関わった物。子供のもは捨てられないという父の言葉。その後に、ごめん、と一言嘆く。これが親子なんだと思った。

もちろん、太一と美緒の最後がもどかしい気持ちがあります!!!!!!!!!!!!

最初はバラバラだった家族がみんな手探り状態で答えを見つけようとして衝突するを繰り返して、家族という形を造っていく姿に涙が止まりませんでした。
私はこの本が大好きです。

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2024年09月16日

Posted by ブクログ

ネタバレ

西の魔女が死んだに似たような流れで好きでした。

10年前に読んでいたら主人公の女の子の気持ちにだけ共感出来たかもしれないけど、
娘を持つ親になってみて色んな人の気持ちに共感しながら読めました。

子どもがどんな状態になろうとも「見事に育った」と言ってあげられるような親になれと自分に言い聞かせられました。

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2025年01月12日

Posted by ブクログ

ネタバレ

2024.09.29

美緒と父の視点から描かれる、ホームスパンを中心にした家族の物語。

羊毛から紡いで糸にして、それを織って布にする。
自分の殻に閉じこもっていた美緒も、糸を紡ぐように、言葉にできなかった想いを紡いでいって両親と打ち解けていく。

昔ながらのものづくりを大切にする職人さん側の描写もあり、とても引き込まれた。

祖父が機織りの仕事をしていたのですごく親近感も湧いた。

最後に心温まる作品は何度でも読みたいなと思える。

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2024年09月30日

Posted by ブクログ

ネタバレ

学校に行けなくなった高校生が祖父の家でホームスパンを作る話。ホームスパンってどんな手触かとても気になる。
進路について、親もヤキモキする気持ちは分かる。大事な我が子に辛い道を歩ませたくないって親ながらに思ってしまう。
「せがなくていい、自分を追い詰めなくていい、」って言って待てるように努めたい。
手のかかるうちは助けて、あとは見守る。」分かってはいるけど、実践するのは難しい。 

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2025年05月26日

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