【感想・ネタバレ】リャマサーレス短篇集のレビュー

あらすじ

何カ月も、何年も過ぎていったが、明日という日はやってこなかった――。スペイン語圏文学の名作『黄色い雨』の著者による集大成となる自選短篇集。

都市で、田舎で、辺境で、刻一刻と奪われ、それでも生きて、滅びてゆく人々の詩情――
世界の片隅への愛と共感が魂を震わせる珠玉の21篇。

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Posted by ブクログ

自分もかなりの田舎に生まれて、地理的に人間が偏屈になったり、偏った情報が正義!みたいな気持ちはわかる。日本も同じように山川あるり、閉鎖的なベクトルの角度が日本と似ているような気がするんだよねー。そんなことをしみじみ思う程、この短編種は牧歌的というか、田舎くさいというか、思ってたのと違うというか。人と違うことをするのは勇気がいる。ホームで電車待ってる時に傘を差すとかさばるので持参タオルをかぶるとか。でも田舎って比べる対象の人間が少ないからその機会もないんだよなー。虚無感もある(別に田舎の本ではない)

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2023年02月28日

Posted by ブクログ

ネタバレ

待ちに待っていた本。
手に入れた瞬間、うわー装丁素敵だな、と。
ざっくり言うと、
・あるシチュエーションに落ち込んだ人物を描写するシニカルでブラックなユーモアに満ちたコント。
・いまや失われた人や時代への愛惜。
の2種類。
私が求めていたのはもちろん後者。
だがほどよく前者もありバラエティ豊かで、決して詩的小説だけではないという作家の多面性を感じることのできる、いい一冊。
あと、当事者以外の息子娘世代が、上の世代を思うという形式も、短編らしい一ひねりでいいスパイス。

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◇読者へ

◇Ⅰ『僻遠の地にて』1995の短篇集 7篇
■冷蔵庫の中の七面鳥の死体 ……シニカルの極致。
■自滅的なドライバー ……★前者、だがどこかフリオ・コルタサルっぽさもある。
■腐敗することのない小説 ……既読。「黄色い雨」文庫版では「不滅の小説」。
■夜間犯罪に対する刑の加重情状 ……世にも奇妙な物語っぽいか。
■遮断機のない踏切 ……「黄色い雨」文庫版で既読。
■父親 ……ちょっとジュヴナイルの書き出しっぽい。
■木の葉一枚動かんな ……★そうそうこれこれ。失われたものへの愛惜だか沈滞だかを、息子視点から。

◇Ⅱ『いくら熱い思いを込めても無駄骨だよ』2011の短篇集 13篇
■ジュキッチのペナルティー・キック ……シチュエーション・コント。
■マリオおじさんの数々の旅 ……★一見村上春樹にありそうな。しかしヴィットリオ・デ・シーカ監督、マルチェロ・マストロヤンニ主演「ひまわり」への言及が抜群にイメージを喚起する。
■世界を止めようとした男の物語 ……浮浪者に過去ありき。
■姿のない友人 ……浦沢直樹「マスターキートン」とか弘兼憲史「黄昏流星群」にありそうな!
■いなくなったドライバー ……★あっ。これ他人事じゃない。
■行方不明者 ……→「狼たちの月」へ。
■依頼された短篇 ……太宰治がやっつけで書きそうな話だな。
■尼僧たちのライラック ……★尼僧ではないが勝手に映画「汚れなき悪戯」を連想。あの映画の数十年後とか。
■ラ・クエルナの鐘 ……→「狼たちの月」へ。
■暗闇の中の音楽 ★→「無声映画のシーン」へ。また炭鉱事故という点で、→森崎和江「まっくら」へ。そして死を悼む音楽。
■夜の医者 ……→「狼たちの月」へ。
■プリモウト村には誰ひとり戻ってこない ……★→「黄色い雨」へ。
■明日という日(寓話) ……1ページの掌編。
◇Ⅲ『水の価値』2016の短篇集 より、1篇のみ
■水の価値 ……★これは自分の祖父の現状を思って切ない。そして小道具に視点が合う短篇として抜群。

◇訳者あとがき 木村榮一

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2022年06月20日

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