あらすじ
仕事、家庭、恋愛の全てが欲しい女たちとその家族的つながりを描いた最新長編小説。二度の離婚を経て、中学生の娘である理子と二人で暮らすシングルマザーの小説家、志絵。最近付き合い始めた大学生の蒼葉と一緒に暮らしたいと娘に告げるが――。恋愛する母たちの孤独と不安と欲望が、周囲の人々を巻き込んでいく。
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Posted by ブクログ
モヤモヤがずっと続いていて、こういう時こそ金原ひとみさんの劇薬みたいな小説を摂取するべきだと思って購入。
とにかくメモが止まらなかった。
なんで私のこと知ってるんだろう、もしかして私の脳内から着想を得て書いた?と思うような文章が多過ぎた。
多分金原さんも経験者なんだろうな。じゃなきゃ書けるわけがない。
不倫が日常に組み込まれていて、忙しい日常の中の「こなすべき予定」になってしまってる感覚とか、
好きなのはあっちだけど決定的なのはこっちと内心冷静に男を比較していたり、
普通の不倫小説なら魅力的な既婚者についのめり込んでしまったみたいな作品が多いけど、金原さんの作品は自分だけじゃなく仲良い友達や仕事関係者にも不倫してる人がいる環境なのが非常にリアル。
金原ひとみさんの作品がどうしてこんなに好きなのかがやっと分かった。出てくる男たちを心底愛おしそうに文章に書くからだ。日常の些細な相手の言動に、つい笑顔が溢れてしまうような文章は、読み終わりたくない、この本にもう少し浸っていたいといつも思う。
そして完璧な男が出てこない。些細な分かり合えなさに落胆しつつ、そんな人間くささや、その人の欠点も含めて愛おしいと思ってるのが文章から滲み出ている。
愛おしい男をチャージすることでしか心の穴を埋められない。常に虚しい感じがして、突然幸せを自ら破壊する。
金原ひとみさんの作品はいつもそうだね。
文庫本が発売されてないし、ハードカバーも沢山の本屋を巡ってやっと買えたくらいだからそんなに売れなかった本なのかもしれないけど、私にとっては衝撃的に好きな本でした。
広辞苑くらい分厚いのに、読み終わりたくない。ずっとこの世界観に浸っていたい。と思いながら1ページ1ページ大切に読み進めていました。
そして物語の最後、あぁこれはこういう本なんだと思った。
主人公はバツ2だし、彼氏との別れ、娘との別居、色々な別れを経験する中で、この幸せがずっと続いてほしいと思いつつ、きっとこれもいつか終わるに違いないとも思っているアンバランスさが、愛おしい日々を、切なく大切なものにさせている。
物語が始まる前のページに
「であるから、私は繰り返し、繰り返しいうが、原子は少々斜に進路を逸れるに違いない。」
と書いてあって、原子?なにこれ?と思ったんですが、物語の中で2回原子の話題が出てくる。
抽象的・概念的・哲学的な話を好む吾郎と、矛盾のこととか考えると疲れるんだよと言い切るシンプル思考の蒼葉。
それぞれと同じ原子の会話をして、真逆の対応となった。
私はとにかく蒼葉がツボでした。単純思考のワンコみたいな男で全てが可愛かった。
ちょっと頼りないけど優しくていい人の直人も好きだったし、ミステリアスすぎて理解できなくてなぜかうまく距離を詰めることもできない行哉を好きになってしまう気持ちも分かりつつ、性的魅力の意味で一番微妙な吾郎に安定感と存在感を感じてしまう気持ちもなんだかすっごく分かってしまった。
一般的に女は恋を上書き保存するって言うけど、金原ひとみさんや私は多分「名前をつけて保存」タイプなんだろうな。
それぞれの人とそれぞれの関係性を築いていて、みんな大切で必要な存在というのが伝わってすごくシンパシーを感じながら読んでしまった。
なんとなくの予想だけど蒼葉とはいつかすれ違って別れて最終的に関係性が残るのは吾郎なんだろうな。直人も行哉も蒼葉も「通過点の男」という匂いがする。
Posted by ブクログ
面白かったんだよなあ、あんまり評価高くないけど私はとても面白かった。
あらすじを読む限り、まったく共感できない行動をする主人公だからなんで読む気になったか思い出せないけど、アタラクシアが面白かったからもしかしたらと思ったのかも。
字数が多くて厚くて重くて面白い内容だとほんと幸せ。まだまだ読んでいたかった。
コロナ禍をうまく表現していたと思う。最後のリモート飲みがなんで嫌かのあたりなんて思っていたことを言葉にしてもらって膝を打つ思いだった。
知らない漢字を2個覚えたし。
擲って(なげうって)と悍ましい(おぞましい)これ読めなかった。
危険厨と安全厨という言い方も聞いたことも見たこともなかった。
次はfishy読も。
Posted by ブクログ
きっと、これは将来の私の姿だ。
そう思うくらい志絵の思考が今の自分に近かった。
かつ、そんな人間が「子供」を持ったらどんな人生になるのか、志絵の目線を通してリアルに想像することができた。
これからも自分のための時間を減らしたくない。
その対象は人によって様々で、恋愛だったり、友人との食事だったり、読書だったり、推し活だったりするんだろう。
子供ができたからって一人の人間であることに変わりはない。自分の時間だってほしい。仕事は全力でやりきりたい。
だけど、子供に自分の100%を注がないことによって、子供が懐いてくれないのではないか。
そんな不安を持っている私の代わりに、志絵がいろいろ経験してくれているようだった。
理子が吾郎の家に住むとなった時、そうなるかなと想像はしていたものの、これが自分の将来ならしんどいなぁと思ってしまったが、最終的に志絵はなんとなく幸せそうな結末で終わった。でも、彼女はきっと今後もたくさん悩んでいくのではないかと思う。
そして、志絵のようなタイプの人間だけではない。
しんどくない人生なんてなくて、みんな人生のどこかのタイミングできっと何かしらに悩み、折り合いをつけながら生きているんだろう。
私はこの小説を通して、自分を客観視できた。
自分は志絵にすごく似ていると思うけど、仲良くなりたいとは思わない。
とても人間らしいとは思う。でも好きじゃない。もっとおおらかで、なんとかなるさと楽観的でいられる人になりたい。
でもそんな人たぶんいない。隣の芝生が青いだけ。
みんなどこかで疲弊しながら、自分を犠牲にしながら生きてるんだと思う。
人生は楽ではない。
個人的に発見だったのは、そんなに自分の時間ややりたいことを大切にしたいタイプの志絵でさえ、子供のことを心から愛し、子供の幸せを本当に考えているということだ。
子供が自分の時間を奪うことについて、ネガティブな感情を持たないのは、親なら共通なんだろうか。
いろんなことに悩み、その発端が子供だったとしても、子供をもったこと自体に後悔していなさそうなのである。
ここまで言われると、子供をもつことはネガティブなことばかりではないのかなとうっすら思えてくる。
子供を持つか、持たないかというテーマが個人的にホットなので、この小説の至るところにそういったことを考えるためのヒントが散りばめられているのが良かった。
小説として好きだったポイントがもう1つある。
それは、人が変化していくということをうまく表現しているところだ。
たとえば、「悲しみが酸化する」という表現。
これはシンプルに表現として美しくて好きだ。
たとえどんなに悲しいことがあっても、それがもし愛する人を突然亡くすような悲しいことであっても、その感情は絶対に変化していく。
それを見事に言い表した表現だった。
陳腐な表現になってしまうが、人はそうやって変化していく生き物だから色々なことを乗り越えていけるんだろうなと、改めて思った。
あとは、死刑制度に対する賛否が歳を経て変わってきたというくだりや、自分の老いについて年下の彼とは一生わかり合えないんだろうなという思いについての描写。
自分が30代に入って、少しずつこういった物の見方に共感できるようになって、小説の読む深さが変わった気がする。
これも私の変化なら、歳をとることはそんなに悪いことではない。
キラキラした未来を描いた小説ではないけれど、似たようなことで悩んでいる人はいて、苦しみながら変化しながら、それでもなんとか生きていけそうということが少しだけ見えた。
またしんどい時がきたら、この本に励まされたいなと思う。
Posted by ブクログ
主人公を含めて女性作家三人の飲み会が面白かった。作家はフリーである以上なんの保証もない、と不安を吐露している箇所があったが、それでもかなり飲食は贅沢してると思わずにはいられない。
主人公が娘に対しても恋人に対しても言葉で追い詰めて行くのがちょっと息詰まる感じ。
金原ひとみはなんとなく恋愛への関わり方が山田詠美に似てるなーとところところ思うところもあるのだけど、山田詠美は少なくとも「生きづらさ」みたいなのは出してない。そこが違うかなぁ。
ブルサンが入ったキッシュ食べてみたい。
あとは最後別れるとばかり思ってたら結婚するのか。ちょっと拍子抜け。