あらすじ
「書く」ことは「編む」ことと似ている――。学校になじめなかった自分と父との関係、おもしろいことが大好きだった母、人生の道標となった叔父のこと、アルバイト先で出会った夫との恋。傷つきながらも一歩ずつ進み、ニットデザイナーとなった著者。その半生を追ううちに、読者それぞれの「あの頃」が蘇る極上のエッセイ集。
感情タグBEST3
Posted by ブクログ
私も編み物をするので、編めば編むほどわたしはわたしになっていった、というタイトルにとても共感します。
素敵な本、素敵な生き方。
憧れます。
妹さんもクリエイティブな仕事に就かれたのは、育った環境なのでしょうか。
のびのびと、受容されて育ったのかなあ。
その時々に自分で考え、歩む余裕があったんだなあ。
そんなふうに、正直、羨ましくもなりました。
Posted by ブクログ
ニット作家の三國万里子さんの随筆。専業作家ではないけれど、とても素敵な文章を書かれる。三國さんだけの世界がしっかりと存在していて、そこをこっそりと覗き見させてもらってるような気持ちになった。
息子さんにニンテンドーDSを買ってあげるお話が特に心に残った。息子さんはみんなが持ってるDSをいらないと言っていたそう。母が自分は自分という考え方をしているから影響を受けて、息子が人と同じ遊びをしないという縛りを自分で作ってしまっていたとしたら申し訳ないな、と思い三國さんは入院してしまった息子さんにニンテンドーDSとポケモンを買ってあげる。そんな考え方をできるのがとても素敵だと思う。自身の周りに迎合しないある種アーティスト気質な所を押し付けるでもなく、息子はゲームをやりたがらないからラッキー、でもなく、自分と一緒に暮らす事で少なからず影響を与えていないか省みるというのは、相手をこの上なく尊重していないとできないと思う。
小さな頃から自分の世界をしっかり守って、きっとそのせいで生きにくい事も多々あったと思うが、だからといって簡単に手放してしまわずにしっかりとその世界と一緒に生きていく覚悟を持っている方だと感じた。大人になってするお人形遊びや、アンティークジュエリーとの出会いなど、とても楽しそうに過ごしているのも魅力的。
Posted by ブクログ
なかしましほさんのお姉様
編み物と家族と好きなものと いろんな経験をして上手に引き算して 居場所を掴んですごくすごく素敵な世界に住んでいるひとだなぁって
一気に読んでしまった
Posted by ブクログ
ニットデザイナーのエッセイ。
現在の日常生活を書いた部分も面白くはあったのだが、そんな素敵な生活をしていない者としては、やっぱりデザイナーだから、美意識が高いんだなあと感心半分、羨ましさ半分。
しかし、ご自身の子どもの頃や若い頃のことを書いた部分はとても心に残った。その書き方も素晴らしいと思った。
中学生の時、学校に違和感を感じ、早退を繰り返すようになったときの、父とのやりとり。
父が周りの人とうまくやっていくことが大切だと語ったとき、自分とは価値観が違うと思い、「お父さんのことも尊敬していない」と言ってしまう。
「稚拙なわたしは「社会で働くお父さん」を丸ごと、なぎ倒すように否定してしまった。本当のことを言えば、父のことは「尊敬」も「軽蔑」もしていなかった。そんなこと、考えたこともなかった。昔から、ただ、大事な父だったのだ。」(P38)
先日読んだ『ニワトリと、卵と息子の思春期』でも感じた、思春期の、一人の別の人間だと認めてもらいたい子どもの狂おしさ、やるせなさをここでも感じた。
息子さんとのことなども、心に沁みた。
Posted by ブクログ
ニット作家の三國万里子氏のエッセイ。
読みやすく人柄の現れた素敵な文章で彼女の思いが綴られている。
幼少期の経験、若いころの体験、子供との話など、編み物についてはあまり書かれていなくて、どちらかと言うと彼女がどのように形成されてきたかということが書かれている。
田舎ののんびりとした環境が穏やかさを、繊細な感受性は人に対する温かさや誠実さを彼女にもたらしたのだと思う。
彼女の性格はあまりよく知らないが、このエッセイや彼女の作る編み物作品に表れていると思う。
素敵な作品は、素敵な彼女から生まれていることに改めて納得した。
Posted by ブクログ
ニットデザイナーの三國万里子さん。
ニットのデザインも素敵だけど文章も素敵でした。言葉選びが良いです。でももっともっと編み物の話も聞きたかったです。
Posted by ブクログ
なかしましほさんとの共著で知っていたけれど、ラジオ「飛ぶ教室」に出演されていて、ほっこりした雰囲気と高橋源一郎さんの感想から、興味を持って。
子どもの頃の記憶を、鮮やかに描いていて、著者はいろいろな時代にまだ住んでるかのようだった。
装丁のお人形さんは、ロシアの作家さん。この本にぴったりな装い!
Posted by ブクログ
1071年生まれ。3歳で祖母より編み物の手ほどきを受け、長じて多くの洋書から世界のニットの歴史とテクニックを学ぶ。「気仙沼ニッティング」および「Miknits」デザイナー。著書に「編みものワードローブ」「うれしいセーター」「ミクニッツ大物編、小物編」など多数。
本書が初のエッセイ集となる。
エッセイとの相性は、読む人ごとに違うだろう。
この本は新刊コーナーから選ぶ。
子供時代、人との付き合い方が苦手だった著者。
自分を出して話しすことが少なかったからこそ、内面に生み出したい言葉があったのであろう。
数少ないながらも親しい友人だけに向けた五年間のメールのやり取りから、友人らに勧められて初めてエッセイ集として世に出た。
身構えた文章ではなく、心の中にしまってあった、もしくは整理がつけられたお話の数々は、13歳年上の私にも何か懐かしく共感できる本だった。
少女時代も素敵なお話だが、働きはじめの不器用な時代も、心に残る。