あらすじ
港町に暮らす34歳のミホが、九十九さん(なで肩で筋肉がなく七面鳥のように皮膚のたるんだ天然パーマのへなちょこ老人)と同棲するに至るまでの奇妙な顛末。就職の保証人を「いいですよう」とふたつ返事でひき受け、町内会長の葬式で見かけた別居中の妻と愛人から逃げ隠れる九十九さん。ゆったりと走る車からオレンジ色の海を見たり、はんぺんのように軟らかく湿った唇と唇を合わせたり…。「人間と人間関係を描ききった」と絶賛された芥川賞受賞の表題作ほか、二編収録。
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Posted by ブクログ
2003年の芥川賞受賞作。あたしと同世代の女性ならかなり共感するのではないか。ドラマチックではないんだけど、ひとりひとりにある人生劇場で、読んだあとなんとなくいい気分。
Posted by ブクログ
読書開始日:2021年11月27日
読書終了日:2021年11月27日
所感
【しょっぱいドライブ】
面白い作品だった。
どうしても「わたし」を好きになることはできない。
それは、自分が男で、さらに九十九さんと似たようなタイプだからだ。
全ての言動、行動に自信が無いが、自分の中だけで対処する術を身につけている。
全て背負い込む覚悟は持っている。
わたしは気の弱さに付け込んだ。
完全な優良物件のキープだ。
部屋探しをしているときと似ている。
表現がかなり上手い。
既視感がある。
それは自分の態度だったか、過去の女性の態度だったか。
目を背けたくなるほど体験したことがある作品だった。
【富士額】
ひきこもってしまった中学生の女の子の話し。
この女の子はつきつめればゆっくりしたかっただけだった。
お相撲さんのペースがこの子にはあっていた。別れの場面はお相撲さんがペースを乱し、女の子は正気にもどった。
お相撲さんから送られてきただるまのぬいぐるみで、お相撲さんの腕枕を思い出す。
一つの思い出
【タンポポと流星】
毬子のような人間は確かに存在する。
プライドが高いが精神的に弱いことを心のどこかでわかっているため、自分よりもさらに弱い人間を捕まえ威張る。
威張られた人間は、衰弱し、次第に判断が出来なくなる。
決死の覚悟で上京を1人で決めるも、委ね切っていた判断力は戻らず、会社でも男にもいいように使われてしまう。
結局最後までうだつの上がらない女だったが、毬子との適切な距離感を見つけた。
木崎のような男には反吐がでる
あれは告白のつもりだったのだろうか。私としては頼んでもいないのに聞かされ、重たかった
すれ違うたび、なにかひとつ、彼は楽しいことをしかけてきた。
花言葉はね、はかない喜び
このふたりはわたしをネタにして、引き合っているのだと思う。私抜きにしたいのに、まだ言い出せない仲だ。
【しょっぱいドライブ】
いいひとって結局ひとがいいってことでしかないんじゃないか
しゃべっていないと間が持たなかったからだ。でもしゃべることはお互いの名前しかなかった。
ああ役に立ったんだな
九十九さんはもくもくと一人の世界にいた。あまりにも自分ことだけすぎていた。
としよりにはとしよりの、秘密があるのだろう。全然おかしくないから、堂々としていたらいいじゃない
まずは博識ぶらない
遊さんはわたしの貞操なんてどうでもいい
返し切ったところで、この罪悪感は消えないだろう。もう、ありがとうございました、ではなく、ごめんなさい、許してください
夜のほう、からっきしだめで
釣り人=遊さん ふぐ=わたし
わたしがこのひとのそばにいたいのは、結局、先がみえているぶんやりやすいからなんだろう
一から、始める。ああなんて新鮮な響きだろう
九十九さんは、わたしの顔色ばかり見ている。だから車の中でわたしはまた!いいかげんなことをいって
血生臭さなんか、まるで縁のないままここまできたのだろう
こう言う暮らしには目が眩む
右半分ごっそりない
くるくる思考を変えて遊んでいる
【富士額】
どこにでもいるんだなとイヅミは思った。ずっと笑ってなきゃいけないって雰囲気を強制する人
【タンポポと流星】
あれは告白のつもりだったのだろうか。私としては頼んでもいないのに聞かされ、重たかった
すれ違うたび、なにかひとつ、彼は楽しいことをしかけてきた。
花言葉はね、はかない喜び
このふたりはわたしをネタにして、引き合っているのだと思う。私抜きにしたいのに、まだ言い出せない仲だ。
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「タンポポと流星」がなんか良かった。どの主人公たちもなんだか自分を大切にする事が憚られるかのような、適度にだらしない感じが少し苦手だったし、力抜けてていいようにも思えた。不思議な感覚。
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これは短編3作「しょっぱいドライブ」「富士額」「タンポポと流星」が収められている薄めの本です。人間と人間の関係をはっきり描ききったである。3作の主人公はどれも女性で10代、20代、30代と出てくるのですが、全員ちょっと普通の女性特有のキャピキャピ感はなくて、どこか達観してるって言うです、世間をちょっと上から見てるみたいな感じで、共感できるところもあるし、そんなに変に考えなくてと思えるところもありました。
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表題作含む三編
表題作は、九十九さんという妻子持ちで60代の冴えない男に
日々の不満からか、恋人とは言えないかもしれないが
つき合いだす主人公の30代の女性の話
あらすじでは何のことかわからないだろうが
題名の通りなかなか”しょっぱい”話
残り二作は、相撲取りとつき合う中学生の話と
幼なじみの女友達が嫌で逃げる女性の話
どの作品も共通して言えるのは、見えない何かから逃げることを
何かに具現化して逃げる女性を描いていると言うことか
星々の舟と比べるとあちらが何となくリアリティの無い話だったのに対して
本作はなんとなくリアルな話
でもこんな女性は嫌だな
正直、好きな本ではないが
本としての評価は4はあるだろう
Posted by ブクログ
何とも言えない。
読み終わった後、ネバネバする。
セックスは愛に必要なのか。
愛とは人を好きになることなのか。
嫌い、だけど愛するってのもあるのかもしれない。
拒絶の中の愛。
Posted by ブクログ
大道珠貴さんの芥川賞受賞作品を読みました。「しょっぱいドライブ」、2003.3刊行、2006.1文庫。「しょっぱいドライブ」「富士額」「タンポポと流星」の3話。「しょっぱいドライブ」は、九十九秀雄という妻も愛人もいる60代の男性と34歳の実穂との関係、「富士額」は26歳の相撲取りと中2、14歳のイヅミとの関係、「タンポポと流星」は、女性の友達関係を描いたもの。なるほど、純文学、芸術性とはこんな作品を指すのですね!
Posted by ブクログ
爽快なのかなんなのか、不思議な小説だと思いました。
しかし、演劇や鄙びた地方ドラマの語られるこの作品は結構私ごのみの要素が取り入れられており、読みやすいと思いました。
主人公がかなり確信犯的なのがイイのか悪いのか、なんとも判断がつきかねます。
でもこの小説を読んでなんとなく、今の自分このままでいいのかしら~っと、思わなくもない感じがいたしました。
Posted by ブクログ
芥川賞を受賞した表題作を含む3作を収めた短篇集。
いずれも20代前後の女性を主人公とした、ちょっとドロリな人間関係のお話。
人々が日常抱きがちな、でも隠して過ごしている負の感情を、
この登場人物たちは淡々とあけすけに見せてくれます。
正直読んでてあまり気分のいいものではなかったんですが、
身につまされるところがあったり、一方でそんな自分を
肯定してくれているような気もして最後は少し癒されました。
「タンポポと流星」が好き。
Posted by ブクログ
第128回(2002年下半期)芥川賞受賞作。他に2作品が収録されている。著者の大道珠貴さんは福岡出身で「タンポポと流星」は九州色を堪能できる。おすすめ。
<収録作>
・しょっぱいドライブ
・富士額
・タンポポと流星
Posted by ブクログ
60男×34歳女、力士×中2女子、歪んだ腐れ縁の友人…3つの短編は全てグロテスクな関係の話。人物描写がとにかくグロテスクでキツいが、だるくてどうしようもない空気感は著者ならでは。
Posted by ブクログ
表題作で芥川賞をとったみたいだが自分としては気分悪くなるだけの話。
小説読んでると自分の中で登場人物を大体の感覚で良い人悪い人に分類するけどこの人の作品の登場人物は大体しょうもない人。
なんだかなあって感じだけど『タンポポと流星』は割と好き。
Posted by ブクログ
「しょっぱいドライブ」、「富士額」、「タンポポと流星」の三篇が記載されていました。短編でシンプルだったのですぐ読めました。しょっぱいドライブは30代の女性が老人、九十九と同棲るるまでを描いた作品で、なんだかいろいろとしょっぱい人間模様を描いた作品でした。小さな人関係がよく描かれていました。正直なところう〜んとという感想です。三作目のタンポポと流星の方が面白かったです。