あらすじ
女性と異なり礼儀を教わる機会が少ない男性。だが、自分の立場をわきまえたうえで堂々と振る舞うために、一度礼法の歴史を振り返りその「こころ」と「かたち」を身につけてみてはいかがだろう。そもそも礼法とは、武士が生き延びるために作られ受け継がれてきたものである。「こころ」「姿勢」「席」「食作法」「ことば遣い」「つき合い」「格好」。室町時代に確立した小笠原流礼法の秘伝の古文書を、本格的に紹介する初の試み。【光文社新書】
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Posted by ブクログ
この新書を読むきっかけとなったのは『日本はなぜ世界でいちばん人気がるのか』の北野武との対談で、北野武が小笠原流礼法の本を読んで「礼儀作法は目上の人へのおべっかではない。なぜこういう行動をとるのかが理路整然と書かれている」と言っていたから興味を持った。
この著者、小笠原敬承斎という方が女性というのは購入してから知った。
内容はとても面白かった。
気になったところ、参考になるところなどをチェックし、ページ端を折っていたら、またもや折り目だらけになった。そのくらい興味をもった。
礼儀というのは大雑把でもいけないし、丁寧すぎてもよくない。丁寧すぎてよくないのは、相手に対して厚かまし過ぎてはいけないということである。そのため、礼儀の基本は相手がされて、また自分も嬉しくなるようにしなければいけないということ。
「水は方円の器に随(したが)うこころなり」。水が器のかたちにかかわらず自然に存在することを例に、自己主張をせず、すべてに順応するようにするように振る舞いながら、自分の本質を失わないこころを持つ。
「「すみません」を頻繁に使っている人に疑問をもつ」と書かれている節がある。これはわたしも同じなのだが、私自身も多用してしまっている。「ありがとう」を使うべきだな。
作者の曽祖父の話で、いつも同じ縞の羽織を着ていることに疑問を持ち、こっそり羽織に印を付けたところ、実は常に異なる縞の羽織を着ていた、というエピソードに驚いた。アップル元CEOスティーブ・ジョブスと同じだったから。実際には縞の幅が多少異なっていたりの目立たないなかおしゃれがあったらしい。素敵だ。
また、
ほかに面白いと思ったのが「嫁入りは惣別(そうべつ)死にたる物のまねをするなり。輿(こし)も蔀(しとみ)よりよせ代物を着せて出すなり」というところで、嫁ぐさいは「死装束」の白物を着て、死者の出棺のように輿(神輿の輿)を出した。昔は、二度と帰らぬ覚悟で、まだ会ったこともない男性のもとへ嫁ぐもあり、その決死の思いが根底にある、と説明している。その嫁ぐ女性の心細い気持ちを少しでも和らげる為に、婿側ではその女性のために迎小袖(むかいこそで)を用意するこころ遣いがあったらしい。
その節のまとめでは、現代のように「嫁入り」という概念が減少し、男女平等という考えのもとに結婚するのならば、お互いが少しずつ歩み寄って新しい家庭を築いていく過程に、小袖のようなこころ遣いが互いに必要である、としている。
相手に不快感を与えなり、また丁寧すぎない、相手、その場合に合った礼儀をもう少し心がけるようにしたいと思う。